北尾トロさんが推薦していた、小松左京さんの'64年作品「日本アパッチ族」を読みました。
失業罪で大阪城の東にある、高圧電流の通る鉄条網に囲まれた陸軍工廠の空襲跡に追放された私は、以前に追放された山田とともに野犬を食べ、水たまりの汚水を飲んで生き延び、新しい追放者のためにゲートが開いた時に脱出を試みますが、山田は殺されます。野犬の群れに襲われているところを、私はアパッチ族に助けられます。彼らはこの地が鉄条網で囲まれた時に取り残されたため、くず鉄を食べガソリンを飲み、体が鋼になった新人類でした。私たちの脱走未遂事件が原因で追放地が整地されることになり、軍隊と重機が侵入してきますが、アパッチ族は奇襲によって一個大隊を殲滅します。その夜一部の守備隊を除いて私たちは追放地を脱出し、知合いの記者に事実を暴露し、それが新聞に大々的に報じられます。そして私たちはテレビの人気番組を乗っ取って声明を発表し、各地の鉄食いたちと連帯すると、やがて市民の間で人気者となり、参考人として国会に招かれた大酋長は正式に居留地を要求します。私たちの排泄物である銑鉄から利益を得ようと考えた民間人が居留地を提供し、私たちはそこに集結しますが、やがて私たちから生産される鉄は鉄鋼業全体を圧迫し始め、それが原因でクーデターが起こり、居留地への軍による全面攻撃が開始されます。事前にそこを脱出していた私たちは、鉄塔を食い倒して停電を起こし、通信施設も食べ、ガス管も食べ、都市機能をマヒさせます。夜営地を襲って武器を奪い、軍との全面戦争が生じた結果、京都を始め大都市は灰燼と帰し、アパッチが望む総廃墟化が実現します。避難民に足を止められた軍はアパッチの餌食となり、政府の要人は国外への脱出に失敗して死亡。最後の軍との決戦では核が使用されますが、結局アパッチの全面勝利となります。廃墟となった大阪を前に郷愁から涙する私に向かって、大酋長はアパッチの建国への希望を語るのでした。
長編処女作とは思えない完成度の高さで、楽しく読めました。同じ戦争ものでも打海文三さんのものとは比較にならないほどの充実ぶりでした。やはり人間(アパッチ?)がしっかり描かれているからでしょう。ぐいぐい話に引き込んで行く力強さは並み大抵のものではありませんでした。ユーモアもあり、また終始無表情なアパッチが死ぬ時だけ声を上げて笑うという設定なども、琴線に触れるものがありました。小松さんの小説を読むのは初めてでしたが、今後は積極的に読んでいきたいと思います。文句無しにオススメです。
失業罪で大阪城の東にある、高圧電流の通る鉄条網に囲まれた陸軍工廠の空襲跡に追放された私は、以前に追放された山田とともに野犬を食べ、水たまりの汚水を飲んで生き延び、新しい追放者のためにゲートが開いた時に脱出を試みますが、山田は殺されます。野犬の群れに襲われているところを、私はアパッチ族に助けられます。彼らはこの地が鉄条網で囲まれた時に取り残されたため、くず鉄を食べガソリンを飲み、体が鋼になった新人類でした。私たちの脱走未遂事件が原因で追放地が整地されることになり、軍隊と重機が侵入してきますが、アパッチ族は奇襲によって一個大隊を殲滅します。その夜一部の守備隊を除いて私たちは追放地を脱出し、知合いの記者に事実を暴露し、それが新聞に大々的に報じられます。そして私たちはテレビの人気番組を乗っ取って声明を発表し、各地の鉄食いたちと連帯すると、やがて市民の間で人気者となり、参考人として国会に招かれた大酋長は正式に居留地を要求します。私たちの排泄物である銑鉄から利益を得ようと考えた民間人が居留地を提供し、私たちはそこに集結しますが、やがて私たちから生産される鉄は鉄鋼業全体を圧迫し始め、それが原因でクーデターが起こり、居留地への軍による全面攻撃が開始されます。事前にそこを脱出していた私たちは、鉄塔を食い倒して停電を起こし、通信施設も食べ、ガス管も食べ、都市機能をマヒさせます。夜営地を襲って武器を奪い、軍との全面戦争が生じた結果、京都を始め大都市は灰燼と帰し、アパッチが望む総廃墟化が実現します。避難民に足を止められた軍はアパッチの餌食となり、政府の要人は国外への脱出に失敗して死亡。最後の軍との決戦では核が使用されますが、結局アパッチの全面勝利となります。廃墟となった大阪を前に郷愁から涙する私に向かって、大酋長はアパッチの建国への希望を語るのでした。
長編処女作とは思えない完成度の高さで、楽しく読めました。同じ戦争ものでも打海文三さんのものとは比較にならないほどの充実ぶりでした。やはり人間(アパッチ?)がしっかり描かれているからでしょう。ぐいぐい話に引き込んで行く力強さは並み大抵のものではありませんでした。ユーモアもあり、また終始無表情なアパッチが死ぬ時だけ声を上げて笑うという設定なども、琴線に触れるものがありました。小松さんの小説を読むのは初めてでしたが、今後は積極的に読んでいきたいと思います。文句無しにオススメです。