まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
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ヤンヤン 陽陽

2009-10-28 23:18:30 | 台湾映画(は~わ行)
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初めて東京国際映画祭に行ってみました。

陳伯霖(チェン・ボーリン)主演の『台北に降る雪』はすでにチケットが売切れだったので、同じ台湾のこの作品を鑑賞しました。『台北に降る雪』は、来年2月の日本公開が決まっているようなので、それまで待ちます。

監督は鄭有傑(チェン・ヨウチェ)で『一年之初』が最初は新宿バルト9、次いでシネマート新宿にて公開中。この作品、今年の台湾金馬奨では6部門にノミネートされたそうな。そして『九月に降る風』の監督林書宇(トム・リン)が、この作品では助監督をしています。

陽陽(張榕容:チャン・ロンロン/サンドリーナ・ピンナ)はフランス人の父親と台湾人の母親のハーフだが、父親とは会ったこともなければ顔も知らないし、フランス語なんてまったく話せない。陸上の400mの選手である彼女は、母親が大学の陸上コーチと再婚してチームメイトの小如(何思慧)と同じ家に住むことになる。冒頭の結婚式のシーンはこの再婚の場面なのね。

きっと母親が再婚したことで陽陽も義父がコーチしている大学に編入したんじゃないかな。小如は、大学の陸上部の先輩でキャプテンの紹恩(張睿家:ブライアン・チャン)と付き合っているけれど、紹恩は新しく来た陽陽が何やら気になる様子。大学のグランドで練習していると、怪しげな人がカメラを持っている。紹恩が注意しにいったら、実は陸上部の先輩、鳴人(黄健[王韋]:ホアン・ジェンウェイ)で、芸能マネージャーだと明かして陽陽に連絡先を渡す。

ある日、陽陽が脚を捻挫して、紹恩がバイクで病院まで連れて行くことに。病院の廊下に陽陽の走っている写真がなぜか飾られていた。紹恩はこの二人きりの場面で自分の気持ちを打ち明けるが、陽陽は拒否する。しかしその後も何度か二人きりで会う陽陽と紹恩は、ついに3時間だけ、この3時間はすべてを忘れるという約束で関係を持つ。この場面は、上映後のQ&Aでも質問が出ていたけれど、自分的には陽陽が生みの父を見たことがなく、母親の再婚相手は陸上部のコーチで父親とは感じられず、父親のいない寂寥感、またハーフの顔立ちなのにフランス語がまったく喋れない、という自分自身への苛立ちや無力感、そういったものを無理やりにでも埋めようとしたのかな、と勝手に解釈しています。

女性は勘が鋭いもので、関係を持った後の紹恩の態度もバレバレなんだけど、小如もすぐさま二人が怪しいと気づくが、決定的な証拠はない。陽陽と小如が大会前に一緒に映画を観にいったところで携帯電話のチェックが入り、あっけなく紹恩の浮気がばれることに。でもその仕返しがすごいよね。きっとレース前に渡したペットボトルに禁止薬物を入れてたんだろうな。試合で1位となった陽陽だったが、ドーピング検査にひっかかり、弁明もせずにドーピングを認めてしまう。心の中で小如に申し訳ない、何をされても文句を言えない、という気持ちがあったんだろうな、と想像してしまう。

家を出た陽陽は、芸能プロの鳴人に連絡をして芸能界に入り、モデルや女優として徐々に活動範囲も広がっていく。でも陽陽の心はなぜか晴れない。顔立ちがハーフだから、まわってくる役柄はフランス語の台詞が多いけれど、全然喋れない陽陽にはプレッシャー。前日に必死に覚えてきた台詞が現場でさらっと変えられちゃって、演出自体が変更になったり。

それなのにフランス語の授業はサボりがちで、出席しても「風邪をひいた」とマスクしてまともに授業は受けない。陸上で、どこかの体育大学の編入テストを受けたりもする。このあたり、陽陽が見えない何かから抜け出そうともがいている感じ。ダンスレッスンでは、鳴人と顔と顔が触れるんじゃないかってほど近い距離感で踊るが、陽陽が誘っても鳴人はマネージャーとして一線を引く。このダンスレッスンで脚の動きを執拗に追うカメラワークが結構好き。

フランス人監督のオーディションに行って監督に気に入られるが、父親を探すという自分の現実とだぶるストーリーが気にいらない陽陽に、優しく「お前の好きなようにしろ」という鳴人は、陽陽がエージェントと一緒にタクシーに乗った後もしっかりと後をつけて、温かく陽陽を見守っている。

ここらで久しぶりに紹恩登場。小如とはまだ付き合っているんだけど、やはり陽陽が忘れられない。兵役前のバイトにきていた陸上部の先輩の店で、鳴人と陽陽の連絡先を教えろ教えないで一悶着あるのだけど、ここは大人の鳴人が余裕勝ち。ただね、この余裕で立ち去るこのシーンは後ろから紹恩にグサッとやられるんじゃないかと冷や冷やしながら観てました。

フランス人監督の映画に出演することを決めた陽陽は、役柄で父親の遺品を見る大事なシーンを感じるままに演技して、と指導されるが、どんな感情かわからない、と不安気な様子。実際に演技をしてみると、その遺品の写真は陽陽が大学で陸上の練習をしていたころから、ドーピングで失格した大会まで、鳴人が撮っていたものだった。はっとして、ありのままの自分を見てくれていた人がいた、という安心感に包まれる陽陽に監督のOKの声。陽陽は感極まって。。
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張榕容は綺麗な顔立ちだけど、陽陽の心が定まらず揺れ動くさまを見事に表現してましたね。鳴人役の黄健[王韋]は、最初は絶対あやしい関係のマネージャーだとばっかり思ってました。風貌もそうだし、紹恩のDVDの件もあったし、大学のコーチにまともな職業につけ、と言われていましたから。ところがこの映画の中で一番いい人?って感じで、そのギャップに唸らされます。上映後のQ&Aでも、自分は結構悪い人の役をするけど、これは珍しくいい人だと言っていました。

本編上映後に、鄭有傑監督と黄健[王韋]が登壇してQ&Aが30分ほどありました。監督は東京国際映画祭は3回目で終始リラックスした感じ。日本語もぺらぺらで、小学校の6年生くらいまで神戸に住んでいたそうです。家の中では父とは日本語、母とは中国語で喋って、家庭内通訳みたいな感じだったらしく、今でも是枝監督など日本の映画関係者が台湾に行くと通訳をしているそうです。

Q&Aでは画面のサイズだとかカメラの光量だとか、アップが多いだとか、かなり専門的な質問が飛び出す。やっぱりそういう人が映画祭を見に来るんだな、とちょっと自分が場違いな気分。そんな中でどーもくんの質問がでたり、どうして監督はそんなに日本語がぺらぺらなんですか?という質問がでたりして、普通の人も観に来てるんだ、と安心したりして。

印象的だったQ&Aは、最後の陽陽がずっと走り続けるシーンが監督の頭の中に最初からあって、そこから遡ってストーリーを考えていったというところと、アップの多用や光の具合などの撮影はカメラマンにすべて任せていた、というところ。

鄭有傑監督の『一年之初』は今週末もシネマート新宿で公開されているので、観にいこう。

Q&A詳細はこちら

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10/24 東京国際映画祭 TOHOシネマズ六本木ヒルズ
『海角七号、ついに日本公開!』

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