まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
たまにライヴや本の感想、中小企業診断士活動もアップします。

灼熱 ZVIZDAN

2017-01-03 22:23:06 | その他の映画(あ~な行)

激しい内戦を経て各国が独立した旧ユーゴスラビア。アドリア海沿岸のクロアチアの小さな町を舞台に、紛争が勃発した1991年、紛争が終結したもののその傷跡がまだ生々しい2001年、そして平和な時代の2011年と、3つの時代が描かれる。

1991年、付き合っていたクロアチア人のイヴァンとセルビア人のイェレナ、対立を避けるように2人は町を出て都会へ引越ししようとしていた。道路に検問が作られたり装甲車が進軍したりとキナ臭さが強くなる中、イェレナの兄はセルビア軍に徴用される。引越しの朝、イェレナはトランクを持ってイヴァンの町へ行き、広場でマーチングバンドの一員としてトランペットを吹くイヴァンを見守る。この演奏が終わったら2人は出発する予定だった。しかし、イェレナの兄が乗り込んできてイェレナをセルビア側へ連れて帰る。追いかけたイヴァンは検問所の前でトランペットを吹き続けるが、セルビア軍の新兵が発砲してしまう。

2001年、かつて一家が暮らしていた山中の家に戻ってきたナタシャと母。ボロボロの家を修理するため、町の大工アンテに依頼する。ナタシャは兄を殺したクロアチア人を許していない。アンテと世間話をする母ですら許せないほどだったが、優しく黙々と働くアンテが徐々に気になっていく。昼食を準備したり作業を手伝ったりして、ある日の午後、アンテが修理した海沿いの店を見に行く。家の修理が終わる日、母が出掛けている間に2人は。。。

2011年、大学の休暇で地元に向かうルカと友人たち。ヒッチハイクしていた女性を車に乗せて友人が主催するパーティに向かう。パーティが始まるまでの時間、自宅へ顔を出すルカ。母親とは喧嘩中らしい。次に行ったのは昔の彼女マリヤの家。どうやら妊娠が分かった後に母親の反対でルカが別れさせられたらしい。両親や兄の援助を受けながらも子供と2人細々と暮らすマリヤにルカの心は痛み、パーティもどこか心から楽しめない。夜通しのパーティが終わった後、再びルカはマリヤの家に行く。。。

分断そのものの衝撃が大きい1991年の物語に比べて、2001年、2011年は分断がもたらした心のわだかまりがなかなか癒えないことを示唆しています。セルビア人とクロアチア人の対立は少し調べてみましたが、元々文化、歴史、宗教が違うとはいえ、第二次世界大戦で相互に争った影響が強く尾を引いているみたいです。1991年というと第二次世界大戦から50年くらい、激しい対立の渦中にいた人もいれば、親などから当時の話を聞かされた人もいたのでしょう。

2001年のナタシャの姿は、第二次世界大戦の負の歴史がユーゴ紛争で再生産されたもの、と言うこともできそうです。兄が殺されたという直接的な被害が容易に越えられるものではないと思いますが、一律にクロアチア人だからと捉えるよりも、母親のようにクロアチア人だけどこの人は関係ない、と区別できるのが経験豊かな大人なのかな、とも思います。

2011年になってもクロアチア人とセルビア人の結婚を忌避する層がいるのは、日韓の関係を見ても何となく分かるような気がします。徐々にわだかまりは無くなっていくのでしょうが、ヘイトスピーチのように何かあったら蒸し返す人たちがいる限り、どこかしらに対立の種は残ってしまうのかも。

3つの時代の主役の男女を同じ俳優がずっと演じていたのも面白い試みでした。女性の方は家族構成も兄がいたりと似ていたし、役の名前が違っても連続性が感じられました。

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