すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【J1リーグ】鹿島、壮絶な死闘を制す ~第14節 鹿島 5-3 横浜FM

2021-05-16 17:15:33 | Jリーグ
ハイライン・ハイプレス同士の血戦

 両チームともハイライン・ハイプレスである。中盤での攻防が凄まじい。ゲームが止まる瞬間がなく、まったく目が離せない。

 特に横浜F・マリノス、前田大然のプレッシングは後ろを向いたボールホルダーに激しくカラダを入れながらぶつかって行くような激しさだ。非常に危険な男である。

 そんな死闘は点の取り合いになった。先制したのは横浜FMだ。オナイウ阿道がヘッドで決めた。

 するとホームの鹿島アントラーズがすかさずなんと4点を連取し、大きく突き放す。

 このあと横浜FMの反撃は1点止まり。鹿島は止めだと言わんばかりに5点目を取り、試合を完全に終わらせた。

 土居聖真はこれでハットトリックの大活躍である。

鹿島のシステムは4-4-2だ

 鹿島のフォーメーションは4-4-2だ。スタメンはGKが沖悠哉。最終ラインは右から常本佳吾、犬飼智也、町田浩樹、永戸勝也だ。

 2列目は右から松村優太、三竿健斗、レオ・シルバ、白崎凌兵。2トップは荒木遼太郎と土居聖真である。

 一方、横浜FMのフォーメーションは4-2-1-3だ。スタメンはGKが高丘陽平。最終ラインは右から松原健、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトンだ。

 2CMFは喜田拓也と扇原貴宏。トップ下はマルコス・ジュニオール。3トップは右から エウベル、オナイウ阿道、前田大然である。

激しい中盤のプレスの掛け合い

 前半11分だった。鹿島、荒木のドリブルが潰されたあと、すぐ横浜FMのカウンターが発動される。SBの松原が、敵最終ラインと駆け引きしたオナイウに斜めのすばらしいパスを送る。

 オナイウは2タッチ目に右足でシュートしたが、DF犬飼に正面で弾かれる。攻守の切り替えがめまぐるしい。

 中盤のプレスの掛け合い、競り合いが次々に起き、息ができないほどだ。

 横浜FMのGK高丘は敵CKから捕球したあとのフィードが速く、常にカウンターを狙っている。トランジションをしっかり意識している。

先取点は横浜FMのオナイウがゲット

 先取点を挙げたのは横浜FMだった。まず中央にいた前田が右サイドのエウベルへ展開した。

 エウベルはペナルティエリアの右角でマルコス・ジュニオールとワンツーをかまし、マイナスの折り返し。

 低い弾道にオナイウがもんどりうちながらヘッドで叩き込んだ。

 オナイウはこれで9ゴール目だ。

 彼は下りてきていったんポストプレイでからみ、次にもう一度前へ出てフィニッシュに行く、という一連のスタイルがすっかり完成されている。

自軍ハイラインと一体化した鹿島GKの沖

 鹿島GKの沖は、守備範囲が広く前へ出てライン裏のケアをする。自軍のハイラインと完全に一体化している。

 一方、横浜FMのエウベルは右サイドで絶えず敵のラインと駆け引きし、ずるがしこく裏抜けを狙っている。

 また横浜FMのSB松原はハーフスペースをスルスルと上がり、ニアゾーンに侵入してシュートまで行く。

 片方がフィニッシュして弾かれたと思ったら、すぐもう片方がカウンターをかける。息もつかせぬ攻防だ。

土居の一撃で鹿島が同点に追いつく

 そして鹿島が1-1の同点に追いついたのは前半40分だった。右CKから鹿島の荒木がファーに高いボールを入れる。

 GK高丘はジャンプしてボールに触ったが後ろにそれ、ファーのさらにウラに入った白崎が折り返す。

 これをGK高丘がファンブル。

 すかさず三竿がシュートを打ちゴール前で混戦になったが、最後は土居が押し込んだ。

横浜FMの「ハイライン裏」問題が再燃した

 さて、このあと鹿島は3点を連取し、実質的に試合を終わらせた。

 特に後半1分と5分に取った鹿島の2点は、いずれも横浜FMの高いディフェンスラインの裏を狙って実現したものだった。

 また今季も横浜FMの「ハイライン裏」問題が再燃したわけだ。

 中盤で鹿島がボールを奪った瞬間、ライン上ではもう鹿島のアタッカーがマーカーと1対1になっている。その前にはだだっ広いスペース! ライン裏が「絶賛大解放中」になっている。

 今季、横浜FMは好調なままここまで来たが、またも同じ問題に悩まされそうだ。

 彼らはこれをどう解決するのだろうか?

 一方、この勝ちで6位に順位を上げた鹿島アントラーズは、7勝3分4敗の勝ち点24といいあんばいだ。

 おそらく相馬監督のすばらしい指揮により、彼らはシーズン後半の台風の目になるだろう。

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【J1戦術論】日本人は「川崎Fのサッカー」を見習うな

2021-05-14 06:55:47 | サッカー戦術論
省エネモードのヤワなサッカーだ

 J1リーグ第20節、2-2の引き分けに終わったおとといの川崎フロンターレ vs ベガルタ仙台の試合を観てずっこけた。川崎Fがまたあのヒョロヒョロとボールスピードが弱い、ショートパスばかりの軟弱なサッカーをやっていたからだ。彼らお得意の省エネモードである。

 日本のサッカー界は決してあのサッカーを見習い、あれを「日本の標準」などにしてはいけない(特に日本代表は)。なぜならあのサッカーでは、ヨーロッパの一流クラスに勝てないからだ。

 どうやら川崎Fの鬼木達監督もそれをわかっているらしく、試合後に「自分たちのサッカーにはほど遠いぐらいのミスがあった。自滅に近いと思っています」と語っている。

 川崎Fのサッカーには、どうやら2種類あるらしい。2種類とは、この日のような省エネモードのサッカーと、名古屋との首位決戦・第1戦で見せたインテンシティの高い強度のあるサッカーである。

 彼らが後者のサッカーをしてJリーグで優勝するなら大歓迎だ。大いに味習うべきである。だが前者のサッカーで省エネしながら勝つのでは、百害あって一利なしだ。なぜなら日本サッカー界への悪影響が甚だしいからだ。

弱いショートパスは世界で通用しない

 なぜこの日のような省エネモードのサッカーでは、世界に勝てないのか? それは過去に別記事『ガラパゴス化する日本人の「小さいサッカー」』でも解説した通りだ。まず第一にこの日のような弱いショートパスでは、現代サッカーの高度に密集した狭いゾーン(特に中盤)を通せない。

 第二に、川崎Fはこのサッカーをやるためボールホルダーに近よってやり、互いに短い距離を保ってパス交換するからだ。「距離感が大切だ」というわけである。だが、ということは彼らのボールの周辺には、常に3〜4人の選手が固まっていることになる。

 もしこのとき敵にボールを奪われ、大きくサイドチェンジされれば、それまでボールに群がっていた3〜4人の選手は完全にまとめて置き去りにされる。つまり川崎Fの「小さいサッカー」は極端にカウンターに弱いのだ。

世界で勝つには「強度」が必要だ

 また川崎Fの省エネモード・サッカーは、体を敵に激しくぶつけ肩や腰、足を入れて激しく競り合わない。そういうフィジカルコンタクトのない、ただ足先だけでやるお上品なサッカーである。

 しかもスペースでボールをもらうのでなく、足元、足元にボールを欲しがる。チマチマ足元だけでこねるサッカーである。サイドチェンジのような大きな展開のない、まるでフットサルのようなスタイルだ。これでは世界で勝てない。

 これはたとえて言えば、ボールを扱う技術レベルだけは高い(がフィジカルやオフ・ザ・ボールがダメな)久保建英が11人集まったチームのようなものだ。これなら技術レベルが圧倒的に高いので、確かに日本国内では勝てるだろう。

 だがサッカーは足先の技術だけで争うスポーツじゃない。少なくともヨーロッパの一流国では、激しいカラダの入れあいでボールを奪い合う強度の高い競技である。パスの強さにしろ、フィジカル・コンタクトの強度にしろ、すべての強度が日本とは格段に違う。

 そんな世界で、久保建英が11人集まったチームが勝てるわけがない。それは現に久保がヨーロッパで通用してない現状(2021年現在)によってすでに証明されている。つまり日本代表のサッカーが、川崎Fのスタイルみたいになっては困るのだ。それではワールドカップで勝てない。

川崎Fはインテンシティの高いサッカーをやるべきだ

 川崎FがJリーグで勝ちまくるのを観て、日本の子供たちは「あんなサッカーをやりたい」とマネするだろう。だが「あんなサッカー」ではダメだ。

 川崎Fのサッカーは日本だけに特化された、ガラパゴス化した「小さいサッカー」だ。くれぐれも子供たちはマネするべきじゃないし、日本代表がああなっては世界で勝てない。

 ただし彼らが首位決戦になった名古屋戦の第1戦で見せたような、インテンシティの高い頑強なサッカーをやるのであれば、この限りではない。もしそうなれば私は喜んで「川崎Fのサッカーを見習おう」と大宣伝するだろう。

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【J1】名古屋のフィッカデンティ監督がコロナ回復、練習に合流

2021-05-13 17:49:50 | Jリーグ
15日の清水戦ベンチ入りは手続き中

 コロナ陽性になっていた名古屋グランパスのフィッカデンティ監督が回復し、全体練習に合流したようだ。

 やれやれ、やっとこれでまともに試合ができるようになる。

 ちなみに15日の清水戦でのベンチ入りについては手続き中のようだ。

 なおフィッカデンティ監督は4月29日にのどの痛みを訴え、検査で判定保留になり翌日に陽性反応が判明していた。

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【J1リーグ】鹿島の完勝、彼らはすばらしかった ~第21節 名古屋 0-2 鹿島

2021-05-13 05:53:56 | Jリーグ
切れ味鋭い鹿島のプレス

 立ち上がりから鹿島アントラーズはボールに対する寄せが速く、プレスが鋭く強い。切り替えも速い。

 よくハードワークしている。

 それによって名古屋グランパスはボールタッチの感覚を少しづつ狂わされ、微妙にパスがブレる。ボールが足につかず、つながらない。

 あの首位決戦の川崎F戦に起きたのと同じ現象だ。

 まるで1部と2部のチームが試合をしているみたいだ。大きな差がある。

 それほど完全に鹿島がゲームを支配した。

4-2-3-1同士のミラーゲームに

 名古屋のフォーメーションは4-2-3-1。守備時4-4-2だ。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から成瀬竣平、中谷進之介、丸山祐市、吉田豊だ。

 2CMFは稲垣祥と米本拓司。2列目は右からマテウス、齋藤学、前田直輝。ワントップは山崎凌吾である。

 一方、鹿島のフォーメーションは4-2-3-1。守備時4-4-2だ。スタメンはGKが沖悠哉。最終ラインは右から常本佳吾、犬飼智也、町田浩樹、杉岡大暉である。

 2CMFは永木亮太とディエゴ・ピトゥカ。2列目は右から遠藤康、小泉慶、ファン・アラーノ。ワントップは土居聖真だ。

 鹿島の相馬直樹監督は同じシステムをぶつけてミラーゲームにし、守備をはっきりさせて根こそぎ叩き切る作戦である。

GKランゲラックのミスで鹿島が先制

 先制点はその鹿島だった。前半32分だ。

 鹿島の右CKからのボールを捕球しようとしたランゲラックがなんとファンブルし、ボールが弾んでゴールイン。

 まったく何でもない正面のボールだった。あのランゲラックがありえないミスだ。

 この日の名古屋の崩れたメンタルを象徴するような出来事である。

 それほど鹿島のアグレッシブなプレスは名古屋の面々を動揺させていた。

 逆に鹿島の選手たちの躍動する動きは、まるでそのまま優勝しそうな勢いだった。

名古屋の3枚代えも効果なし

 そんな悪い流れを変えようと、名古屋は前半42分に山崎を柿谷曜一朗に代える。

 それだけではなく後半11分には3枚代えに打って出る。

 齋藤と成瀬、マテウスを一気に引っ込め、ガブリエル・シャビエルと森下龍矢、相馬勇紀を投入した。

 だが試合の流れはまったく変わらない。

鹿島の2点目は美しかった

 そして鹿島の2点目は後半41分だった。

 永木がペナルティエリアの手前中央から名古屋ディフェンスラインの裏へパスを出す。

 そこへ走り込んだ途中出場の荒木が右足でヒールパス。飛び込んだ杉岡がインサイドキックできっちりゴールに突き刺した。

 鹿島の一方的な展開ながら彼らもなかなか2点目が取れず、「早くとどめを刺さないとわからなくなるぞ」と感じていたが、最後はきっちり試合を終わらせた。

 シュート数は鹿島の12本に対し、名古屋はたったの3本である。この数字がハッキリ物語る試合だった。

鹿島はシーズン後半が楽しみだ

 それにしてもこの名古屋の淡白さはいったい何だろう? まったく粘ることなく、いともカンタンにあっさり負けてしまう。

 インテンシティが低く、メンタルが弱い。

 今後に向けて根本的な修正が必要だろう。

 一方の相馬アントラーズは、シーズン後半が楽しみな展開になってきた。

 鹿島の相馬監督は見事にチームを立て直した。その手腕は「すばらしい」のひとことである。

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【J1リーグ】徳島が支配したゲームをモノにできず ~第13節 徳島 1-2 札幌

2021-05-12 06:07:15 | Jリーグ
いいサッカーをしながら勝てない徳島

 徳島ヴォルティスは監督がダニエル・ポヤトス氏にかわり、いいサッカーをしながら勝てない状態が続いている。この日のゲームも同様だった。

 徳島のポゼッション率は62%だ。前半から徳島がボールを保持して攻めに攻めた。ポゼッションする徳島に対し、コンサドーレ札幌がカウンターを繰り出す展開である。

 徳島はSBを高く上げ、2バックによるビルドアップから組み立てる。

 その徳島のビルドアップに対し、札幌が鋭いハイプレスを見舞う。虚々実々の駆け引きだ。

 徳島は前半終了間際、何度もシュートチャンスがあったが決められなかった。それがたたった。後半に入り徳島が1点先行したが、札幌がワンチャンスを生かして2点を取って逆転勝ちした。

徳島が先制し札幌が追いつく

 徳島のフォーメーションは4-2-3-1だ。GKは上福元直人。最終ラインは右から岸本武流、ドゥシャン、カカ、ジエゴだ。

 2CMFは鈴木徳真と岩尾憲。2列目は右から宮代大聖、クリスティアン・バトッキオ、西谷和希。ワントップは垣田裕暉である。

 ボールを握って攻める徳島は前半46分、先制点を奪う。右CKからファーで垣田が頭で折り返し、宮代が押し込んだ。

 後半に入っても徳島がゲームを支配し、セカンドボールもよく拾った。

 だが後半11分。札幌は福森が左サイドをドリブルで駆けあがり、クロスを入れる。それをファーでジェイが頭で折り返し、アンデルソン・ロペスが右足で決めた。同点だ。

 このゴールでアンデルソン・ロペスのゴール数は「10」となり、得点ランキング・トップのレアンドロ・ダミアンとぴったり並んだ。

アンデルソン・ロペスが得点ランクのトップに

 同点にされたあとも、徳島はよくボールを握りポゼッションした。

 彼らは後半30分に鈴木と代えて渡井理己を、西谷に代えて杉森考起を投入し、岩尾とパトッキオの2CMFとした。

 その3分後の後半33分だった。札幌がついに決勝点を上げる。

 徳島のゴールキックを札幌が大きく跳ね返したあとのボールに徳島DFのカカがさわり、そのこぼれ球がアンデルソン・ロペスに渡る。

 ロペスは必死に追いすがるGK上福元をかわし、左足で強烈なシュートを叩き込んだ。

 このシーン、徳島は非常に不用意だった。セーフティ・ファーストを心がけるべきだった。ゴール前でカカがボールを大きくクリアしていれば何でもなかったのだ。

 しかも最後はGK上福元とDFドゥシャンがお見合いをしてしまい、ボールをさらわれた。

 アンデルソン・ロペスはこれで11ゴール目をあげ、ついにレアンドロ・ダミアンを抑えて得点ランキングのトップに立った。

 札幌は2得点を取った後、5バックにして手堅く試合を締めた。なかなか抜け目ない。ゲームを握った徳島にとっては、非常に悔やまれる敗戦となった。この試合を緻密に分析し、ぜひ次に生かしてほしい。

 あなたたちはいいサッカーをやっている。あとはちょっとした修正だけだ。

 健闘を祈る。

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【J1リーグ】鹿島がポゼッション率62%と圧倒 ~第13節 鹿島 3-0 FC東京

2021-05-11 07:35:43 | Jリーグ
畳みかける得点力でゲームを決めた鹿島

 ボールが落ち着かない試合だったが、鹿島アントラーズがポゼッション率62%と圧倒したゲームだった。あの勝負強さはさすがである。

 鹿島の両SBはビルドアップ時、高く上がって幅を取る。ここを鹿島がうまく起点に使って攻めた。

 鹿島は前半22分と前半45分、後半42分に1点づつ計3点を取り、FC東京を突き放す。

 特に3点目はケガから予想外の早さで復帰した上田綺世のうれしい復帰1号ゴールとなった。

4-4-2同士のミラーゲームでスタート

 鹿島のフォーメーションは4-4-2だ。スタメンはGKが沖悠哉。最終ラインは右から常本佳吾、犬飼智也、町田浩樹、永戸勝也だ。

 2列目は右から松村優太、三竿健斗、レオ・シルバ、白崎凌兵。2トップは土居聖真と荒木遼太郎である。

 一方、FC東京のフォーメーションも4-4-2だ。ミラーゲームになった。スタメンはGKが波多野豪。最終ラインは右から蓮川壮大、森重真人、ジョアン・オマリ、小川諒也だ。

 2列目は右から三田啓貴、アルトゥール・シルバ、青木拓矢、東慶悟。2トップはディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑である。

FC東京は3枚替えで3バックに

 前半の鹿島アントラーズは完全にゲームを支配した。で、FC東京の長谷川健太監督はたまらずハーフタイムに3枚替えを敢行する。

 ジョアン・オマリと三田啓貴、東慶悟を引っ込め、DFのブルーノ・ウヴィニと中村拓海、MFの安部柊斗を投入したのだ。

 これにより4バックから3バックにフォーメーションを変えた。

 この形で3バックの真ん中を務めるブルーノ・ウヴィニがFW土居を見る形にし、マークをわかりやすくした。そしてウィングバックがサイドをケアした。

 これで守備が安定し流れが変わるかに見えたが、結局、鹿島のほうが一枚上手だった。いったん相手に渡った流れは引き戻せなかった。

先制点は前半22分だった

 鹿島の得点経過の流れを追うと、先制点はまず前半22分だった。

 左CKからキッカーの荒木が右足でクロスを放つと、飛び込んだ町田がヘディングシュートを放ち、ゴール右スミに決めた。

 続く前半45分の2点目は、まずボールを保持した永戸が松村にパス。

 松村はペナルティエリアの手前に持ち込むと、右足で痛烈なグラウンダーのシュートを放つ。

 ボールはゴール左のポストに当たりゴールに入った。

上田が得意のオフ・ザ・ボールの動きでゴール

 そして3点目は後半42分、途中出場の上田綺世の得点だ。まず常本が遠藤につなぎ、遠藤が右サイドからドンピシャのクロスを入れる。

 これに上田が得意のオフ・ザ・ボールの動きでマークを外し、右足でシュート。敵DFに当たってボールはゴールに吸い込まれた。

 この試合はなんといっても、ケガから復帰した上田綺世がさっそくゴールを決めたのがポイントだろう。

 彼は試合に入ってたった1分後にファーストタッチで鮮やかにゴール。そしてタイムアップ間際にも強烈なシュートを放った。「さすがは上田綺世」、「東京五輪にFWのOAなんていらない」のひとことだった。圧巻だ。

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【J1リーグ】横浜FM、ついに首位戦線に躍り出る ~第13節 横浜FM 2-0 神戸

2021-05-10 05:55:44 | Jリーグ
ハイライン・ハイプレスの脅威

 横浜F・マリノスは高い最終ラインを保ち、前から激しくプレスをかけた。

 前半20分にアクシデントで攻撃の要マルコス・ジュニオールが天野純と交代したが、この天野が魅せた。彼はすばらしいサイドチェンジに要所を突いたラストパス、と八面六臂の活躍だった。

 横浜FMは前半41分に天野が右サイドから左に長いダイアゴナルなサイドチェンジ。これが最終的にはオウンゴールを呼んで1-0だ。

 続く後半35分には神戸GKのパスミスから押し込んだ横浜FMが、天野のシュートで2点目を取りシャットアウト勝ちだ。横浜FMはこれでリーグ戦4連勝。J1リーグ戦の11試合で負けなしとなった。

激しい横浜FMのプレッシング

 横浜FMのフォーメーションは4-2-3-1だ。スタメンはGKが高丘陽平。最終ラインは右から松原健、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトンである。

 2セントラルMFは喜田拓也と扇原貴宏。トップ下はマルコス・ジュニオール。3トップは右からエウベル、オナイウ阿道、前田大然だ。

 立ち上がりから横浜FMのプレッシングが激しい。彼らはボールを奪うと2タッチでスルスルとパスをつなぐ。ハイテンポで攻め、ハイテンポで守るサッカーだ。ラインも高い。

神戸・古橋が振り向きざまにシュート

 だが最初のチャンスは神戸に訪れた。前半15分にセルジ・サンペールのパスにFWの古橋亨梧が抜け出しゴール前で振り向きざまにシュート。GKの好セーブで得点にはならなかったが惜しいチャンスだった。

 バルセロナのカンテラ(下部組織)で育ったサンペールは「ここ」という要所を逃がさない。一撃必殺の好パッサーだ。

 一方、神戸のエース古橋はいつものように最終ライン際で駆け引きする。で、ライン裏に抜け出す得意の形で何度もチャンスを作った。

 また彼は守備に回ると敵のビルドアップに激しくプレスをかけた。非常にいい選手だ。将来、日本代表のエース格を狙う逸材だろう。

天野が1点目の起点になる

 横浜FMのビルドアップはSBを高く上げ、チアゴと畠中の2CBで組み上げる。今日はセントラルMFの扇原は2CB間に下りない。彼らは前半30分、前田がゴール前で敵DFにプレスをかけてボールを奪い、あわやシュートの場面を作る。

 続く前半36分にはティーラトン、天野、前田と渡ったボールが前田のヘディングシュートでこぼれ、ゴール前のティーラトンへ。彼のシュートは惜しくもGKの正面を突いた。

 また前半38分には天野が右サイドから見事なクロスを入れ、オナイウが合わせたが惜しくも入らず。天野は獅子奮迅の活躍だ。

 横浜FMの1点目の得点シーンはその天野から生まれた。前半41分である。まず天野が右から逆サイドにダイアゴナルなすばらしいサイドチェンジを入れる。

 それを受けたティーラトンが左サイドを駆け上がりクロス。これに前田がニアで潰れ、その間隙を縫って瞬間的に抜けてきたボールが神戸CBトーマス・フェルマーレンの足に当たりオウンゴールになる。1—0だ。

神戸もチャンスを作り善戦した

 前半から後半にかけては神戸も惜しいチャンスを作った。

 前半47分にはサンペールがライン裏に落とす絶妙なロングパスを出し、古橋を走らせる。彼はシュートに持ち込んだがDF松原に防がれる。これにはオフサイドの判定が下った。

 続く後半32分には途中出場した神戸のイニエスタが長いスルーパス。受けた古橋はシュートしたが惜しくもサイドネットに当たった。

横浜FMは4連勝し暫定3位に

 そして後半35分には横浜FMが2点目を奪う。神戸GK前川黛也がパスミスをし、途中出場した横浜FMの水沼にボールが渡った。

 その水沼からパスを受けたレオ・セアラがエウベルにボールを渡す。エウベルはシュートしたがGK前川が弾き、そのこぼれ球を天野が押し込んだ。

 神戸は痛いミスからの2失点だ。得点差ほどゲーム内容は悪くなかっただけに惜しまれる。

 一方の横浜FMは4連勝し、これで8勝3分1敗の暫定3位となった。彼らの勝ち点は「27」だ。首位・川崎Fの「41」とは見かけ上、離れているが、横浜FMは川崎Fより試合消化数が3試合も少ない。

 仮にその3試合を勝ったとすれば横浜FMは勝ち点「36」となり、首位とは現時点で勝ち点「5」差と射程圏内に入る。ダークホースの登場でJ1もおもしろくなってきた。

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【J1リーグ】「日本仕様」のサッカーで川崎Fが勝つ ~第13節 G大阪 0-2 川崎F

2021-05-09 11:58:16 | Jリーグ
ポゼッション率63%と川崎Fが圧倒した

 川崎フロンターレは、首位決戦となった名古屋グランパスに2連勝しての今節だ。彼らは名古屋戦とはまったく別の顔を見せていた。

 川崎Fは名古屋戦では息詰まるような高いインテンシティを見せた。だがこの試合では、なんともひょうひょうと軽いタッチでショートパスをつなぐ。

 まったく同じチームとは思えない。

 これが彼らの省エネ・モードなのだろうか?

 それでも試合は川崎Fがポゼッション率63%、シュート数17本とガンバ大阪を圧倒した。

 前半41分にはこぼれ球を拾ったレアンドロ・ダミアンが、後半31分には途中出場の三笘薫がドリブルでペナルティエリア内に持ち込み鮮やかにゴール。

 川崎Fが2点を挙げ、開幕から15試合の無敗試合(13勝2分)を達成した。

川崎Fのフォーメーションはいつもの4-1-2-3だ

 川崎Fのフォーメーションは4-1-2-3だ。スタメンはGKがチョン・ソンリョン。最終ラインは右から山根視来、ジェジエウ、車屋紳太郎、旗手怜央である。

 アンカーはジョアン・シミッチ、右インサイドハーフは田中碧、左インサイドハーフは脇坂泰斗。

 3トップは右から家長昭博、レアンドロ・ダミアン、長谷川竜也である。

 彼らは試合の序盤からG大阪を自陣に押し込め、ひたすらボールをつないだ。

 前半3分。長谷川がドリブルでペナルティエリア左へ持ち込み、左足からクロスを放つ。

 これはヘディングでクリアされたが、こぼれ球を拾った家長が左足でシュート。しかしゴール右へ外れた。これがこの日のゴールショーの幕開きだった。

L・ダミアンが早くも今季10点目のゴール

 前半13分。家長がペナルティエリア真ん中へ左足で縦パスを出す。これを田中が受けて右足でシュートを放ったが、近距離で弾かれる。

 続く前半30分には、脇坂が右サイドへ右足で浮き球のパスを送った。そこへ山根が走り込みグラウンダーのクロスを入れたが、クリアされる。

 そして前半41分。カウンターから脇坂がペナルティエリア左へ、右足アウトサイドでスルーパスを送る。これを長谷川がもらい仕掛けたがガンバの右SB佐藤が防ぎボールロストに。

 そのこぼれ球を拾ったレアンドロ・ダミアンが左足でシュートを放ち、川崎Fは先制点を挙げる。

 L・ダミアンは早くも今季10点目だ。15試合目にして、もう2ケタ得点を達成した。

三笘のドリブルが風を切る

 続く2点目は後半31分だった。

 まず途中出場の登里が自陣から左足で浮き球のスルーパスを出す。そこに走り込んだ途中出場からわずか6分の三笘がボールを受け、まるで風を切るように敵DFを抜き去る。

 ペナルティエリア左へ持ち込んだ彼は、右足でグラウンダーのシュートを放ちゴール右へ叩き込んだ。

 これで2点を挙げた川崎Fはガンバの追撃を許さず、2-0でシャットアウト勝ちを演じた。

世界で勝つには高いインテンシティが必要だ

 勝ちまくる川崎F。だがこの日の軽いパスサッカーはあくまで「国内仕様」である。

 手抜きしたとは言わないが、ヨーロッパでこんな風に弱いショートパスばかり繋ごうとするとたちまちフィジカルと組織守備で寸断されてしまう。

 日本のサッカーが海外で勝つためには、あくまで彼らが名古屋戦の初戦で見せたようなインテンシティの高いサッカーでなければならない。

 あのサッカーでなければヨーロッパの第一線では通用しない。

 彼らはそれをくれぐれも自覚しておくことが大切だ。

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【J1リーグ】名古屋がいつものウノゼロで締める 〜第13節 名古屋 1-0 C大阪

2021-05-09 05:03:46 | Jリーグ
連敗のショックはまるでなし

 名古屋グランパスは前節と前々節、川崎フロンターレとの首位決戦になった2試合に連敗したショックが心配された。

 だがこのセレッソ大阪戦、立ち上がりから彼らはまったくそんな気配すら感じさせなかった。

 前節のスタメンからは成瀬と長澤、前田が外れ、森下と柿谷、相馬が入るベストメンバーで臨んだ。

 彼らは持ち前の「大きいサッカー」をした。ピッチを斜めに横切る長いサイドチェンジを交えながら組み立てて行く。

 名古屋のポゼッション率は48%とC大阪を下回ったが、「やられている」わけではない。相手にボールを持たせてカウンターを狙ういつもの定食コースだ。

 前半は両チーム一進一退で無得点のまま終え、そして後半21分。この試合でJ1通算300試合出場を達成した左SBの吉田がうれしいゴールを挙げる。そして名古屋がいつものウノゼロ(1-0)で完勝した。

 今季11回目のクリーンシート(無失点試合)である。いつもの名古屋が帰ってきた。

マテウスがブレ球のミドルシュートを放つ

 名古屋のフォーメーションは4-2-3-1だ。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から森下龍矢、中谷進之介、丸山祐市、吉田豊である。

 セントラルMFは稲垣祥と米本拓司。2列目は右からマテウス、柿谷曜一朗、相馬勇紀。ワントップは山崎凌吾だ。

 前半8分。名古屋は縦パスに抜け出した柿谷が、ペナルティエリア左からクロスを入れる。これにペナルティエリア真ん中へ走り込んだ米本がジャンプしヘディングシュートを放つが、敵GKキム・ジンヒョンに処理されてしまう。

 立ち上がりに攻めたのはC大阪だったが、こうして時間が経つにつれ名古屋がボールを支配し自分のゲームにして行った。

 前半25分、名古屋はカウンターを放つ。マテウスがスピードに乗ったドリブルで中央突破を狙うが、敵陣の真ん中で敵CBチアゴにボールを奪われる。

 続く前半31分。またもマテウスがペナルティエリア手前右から、左足で強烈なブレ球のミドルシュートを打つ。

 これを敵GKキム・ジンヒョンが弾いたが、そのこぼれ球を稲垣が拾った。彼はペナルティエリアの右から真ん中へ折り返したが、味方に合わずチャンスはフイになった。

名古屋は吉田のうれしいゴールで大団円に

 そして大団円は後半21分に訪れた。名古屋の左SB吉田が途中出場の齋藤学にパスを出し、ペナルティエリア内に走りこんだ。

 そこに齋藤が縦パスを出し、柿谷が触ったボールを敵CBチアゴが左足で掻き出すとこれが左斜め前へ流れる。そしてなんとうまい具合いに、吉田の足元へ届く。

 おそらく神がくれた300試合出場達成記念なのだろう。吉田はこれをゴール左隅に狙いすまして決め、決勝点を挙げた。

 これで名古屋は昨シーズンから先制すれば勝つジンクスを達成。先制時の連勝記録を20連勝とした。

 名古屋は先行逃げ切り型のチームなのである。

 彼らは川崎F戦での連敗から立ち直り、価値ある1勝を挙げた。

 まだまだシーズンは長い。何が起こるかわからない。こうして1勝づつ丁寧に積み重ねた先には、きっと美味しいご褒美が待っているに違いない。

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【J1リーグ】鳥栖の猛攻もゴールならず ~第13節 鳥栖 0-0 広島

2021-05-08 19:50:48 | Jリーグ
鳥栖・林大地のシュートが正面を突く

 サンフレッチェ広島はサガン鳥栖のビルドアップに対し、よくプレッシングし圧力をかけた。

 そのため鳥栖は苦しい展開になる。パスミスが目立った。フィニッシュもなかなか決まらない。

 鳥栖のFW林大地は2度の決定的なシュートチャンスが2度とも正面を突き、得点ならず。じりじりする展開が続いた。

 結局、ゲームはそのまま両者、無得点のままタイムアップとなった。

アンカーの松岡が2CBの間に下りる

 鳥栖のフォーメーションは3-1-4-2だ。スタメンはGKが朴一圭。最終ラインは右からファン・ソッコ、エドゥアルド、中野伸哉。

 アンカーは松岡大起、2列目は右から飯野七聖、樋口雄太、仙頭啓矢、小屋松知哉。2トップは林大地と山下敬大だ。

 鳥栖のビルドアップは今日も左CBの中野伸哉が高い位置に上がって幅を取り、2バックで行った。

 だが広島の強いフォアプレスを受けたため、途中からアンカーの松岡が2CBの間に下りて3バックで組み上げた。

鳥栖は攻め続けたがタイムアップに

 前半9分、鳥栖は右サイドで山下が林にスルーパスを送る。すると林は右方の角度のないところから右足でシュートを打ったが入らず。

 一方、中盤では仙頭が例によって1列下り、アンカーの松岡と2CMFのような形になる。

 だが広島の圧力を受けて鳥栖は不安定な立ち上がりだ。

 試合はその後、両者無得点のまま一進一退で進んだ。最後は鳥栖がひたすら敵陣で攻め続け、最終ラインがぐいとハーフウェイライン付近まで上がる。

 彼らは火がついたように攻め立てた。

 対する広島は、今にも崩れそうだった。だが、なんとか鳥栖を0点に抑え、引き分けで試合を締めくくった。

 攻めに攻めた鳥栖は、負けに等しい勝ち点「1」だ。逆に広島としては勝ち点「1」を拾ったといえるだろう。

 同じ勝ち点「1」でも、こうも意味がちがうものか?

 サッカーはこれだから面白いのだ。

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【サッカー戦術論】オン・ザ・ボールか? オフ・ザ・ボールか?

2021-05-06 07:22:07 | サッカー戦術論
サッカー選手の分類法

 サッカー選手のタイプを分類する方法はいろいろある。

 例えばその選手はオン・ザ・ボールか? オフ・ザ・ボールか? という分け方をすると話がけっこうわかりやすくなる。

 ただし厳密にはオン・ザ・ボールが「得意な選手」か、オン・ザ・ボールしか「できない選手か」という違いはあるが。

 それでいけば、先日、記事にした久保建英(ヘタフェ)なんかは、オン・ザ・ボールしか「できない選手」の典型だ。彼はボールのないところでの威力がガクンと落ちる。非常に惜しい。

 彼はきっとボールを触るのが大好きで、子供のころからずっとそういう練習ばかりしてきたのだろう。だがしかし……サッカーはボールのない所でどう機能するか? も大きい。

 その意味では、彼はオフ・ザ・ボールの動きを身につければ大きく伸びるだろう。

オフ・ザ・ボール型の典型は南野拓実だ

 一方、その久保と対照的なのが、プレミアリーグ・サウサンプトンFCの南野拓実だ。彼は久保と正反対でボール扱いのレベルはあまり高くないが、典型的なオフ・ザ・ボールで生きる選手である。

 南野によるボールのないところでのプレッシングは非常に利いている。カウンタープレスの申し子のような選手といえる。アグレッシブでハートが熱いのも大きな特徴だ。

 そのほかボールコントロールでなく、スピードで生きる浅野拓磨(パルチザン・ベオグラードとの契約を解除したばかり)のようなタイプもオフ・ザ・ボール型の選手と言える。

 また伊東純也(KRCヘンク)なんかもそうだったが……ただし彼はすでにオフ・ザ・ボール型から脱皮し、堂々、もはやマルチ・プレーヤー化したといえるかもしれない。

 これらの中間で、オン・ザ・ボールもオフ・ザ・ボールも両方いける選手といえば、最近売り出し中の古橋亨梧(ヴィッセル神戸)なんかはそう。

 彼の裏のスペースへの飛び出しは素晴らしいし、ボールに追いついてからのコントロールも完璧。ワンタッチですべてを決めてしまう。いい選手だ。

原口元気は両刀使いだ

 このほかにはボールコントロールもうまいが、アグレッシブでインテンシティの高さや献身的な守備がウリの選手もいる。原口元気(ハノーファー96)なんかはこのタイプだ。

 彼はワールドカップでもゴールを決めているし、オフ・ザ・ボールではなんといってもサイドを蒸気機関車のように爆走し上下動する壮絶な守備がすごい。

 ああいう選手がチームにひとりいれば監督は助かる。

 最近、守備に開眼しつつあるアイントラハト・フランクフルトの鎌田大地などもそんな両刀使いと言えそうだ。

 あと原口元気みたいなインテンシティの高いプレイができ、アグレッシブな守備もいい両刀使いの選手といえば、サガン鳥栖のFW林大地がすばらしい。

上田綺世も両方いける

 こう考えてくると、日本人フォワードでオン・ザ・ボールもオフ・ザ・ボールも両方いける選手というのは案外、少ない。

 その意味では鹿島アントラーズの上田綺世はオフ・ザ・ボールの動きがいいし、オン・ザ・ボールのボールコントロールも穴がない。

 となれば古橋と上田は、日本人フォワードとしてかなりのおすすめ株といえるだろう。

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【J1天王山・戦術的まとめ】トランジションとカウンタープレス ~名古屋に戦術リフォームのススメ

2021-05-05 05:39:35 | サッカー戦術論
名古屋の戦術は古色蒼然としている

 戦術的トレンドでいえば、攻撃時、アタッキングサードでボールを失ったときにどんな挙動を取るのか? は、そのチームのコンセプトを如実に語る要素である。

 例えばヨーロッパサッカーの最前線ではそんなとき、リトリートせず失ったその場でカウンタープレス(集団でボールに襲いかかる)をかけるスタイルが花盛りだ。

 ボールを失った。するとすぐさま攻撃から守備へとトランジション(切り替え)を働かせ、ゲーゲンプレッシング(=カウンタープレス)する。
 
 なぜならアタッキングサードでボールを即時奪回できれば、相手のゴールが近いためすぐさま効果的な速いショートカウンターが利くからだ。

 これは相手チームにとっていちばん失点しやすいシチュエーションである。

 だからカウンタープレスは花盛りなのだ。

ディフェンディングサードまでリトリートするのは古い

 これに対し、旧来からの守備のしかたが、リトリートからブロックを作っての組織的守備である。

 このときアタッキングサードでボールを失い、ミドルサードまでリトリートするなら、まだ相手ゴールまではそう遠くない。ボールを奪ってからのカウンターが利く。

 だがディフェンディングサードまでリトリートしてしまっては、相手ゴールは遥か彼方だ。せっかくボールを奪っても、実効性の低いロングカウンターになってしまう。

 ゆえにこのテのチームはたいてい古式ゆかしい戦術を取るチームであり、リーグ下位に位置する守備一辺倒のチームだと相場は決まっている。

名古屋が引く位置は低すぎる

 一方、J1リーグの首位決戦といわれた川崎フロンターレと名古屋グランパスとの2連戦で、名古屋はボールを失うとたいていディフェンディングサードまでリトリートしていた。

 カウンタープレスや、相手のビルドアップに対しハイプレスをかけることはまったくなかった。つまりボールを失ったら、自陣に引くしかテがないのだ。

 これは「守備的であることが悪い」という意味ではないのだが、使っている戦術がなんとも古色蒼然として見えるのだ。

攻めへの切り替えも遅い

 かたや名古屋はポジティブ・トランジション(守→攻への切り替え)に関しても、遅いケースが目立った。

 そこで切り替えれば速いショートカウンターが利くのに、という場面で、バックパスして攻撃をいったんスローダウンさせ、また攻めをイチからやり直すケースが多かった。

 切り替えに関しては、川崎Fのほうがはるかに速かったくらいだ。

 これではトランジション・フットボール全盛の時代にあまりに時代遅れに見えてしまう。

 もちろん伝統的な手法で守り、伝統的な手法で攻めるチームがあってもいいのだが、それではチームとしての成長が止まってしまうと思うのだ。

 そこで名古屋グランパスには、これら最新の戦術を部分的にでも取り入れモードチェンジしてはどうか? というススメである。

 何も新しいものの方が「優れている」とは限らないが、明らかに優れている「新しいもの」なら取り入れたほうがいいと思うのだ。どうだろうか?



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【J1首位決戦・第2戦結果】最新戦術と強いメンタルで川崎Fが圧倒する ~川崎F 3-2 名古屋

2021-05-04 17:58:34 | Jリーグ
点差以上の力の開きがあった

 リーグ首位決戦の天王山。

 その第2戦目を迎えた川崎フロンターレは、第1戦とまったく同じメンバーとシステムで臨んだ。一方、名古屋は陣容を大きく変えてきた。

 この時点で「勝負あったな」と感じた。

 川崎Fはもう「これ以上は変えようがないぞ」ということ。俺たちはこれだ、どこからでもかかってこい、と。キモの座り方がちがう。

 逆に名古屋は小手先から変えてきた。ジタバタしている。

 それは名古屋の3失点目になったオウンゴールにすべて表れていた。

 われわれ外野は「矛盾対決」などと無用に煽り、名古屋に過分なものを背負わせてしまったのではないか?

 振り返って考えてみる必要があるように思う。

 さて3点先取された名古屋は追い上げたものの、2点止まりで3-2にて試合終了。首位の川崎Fと2位・名古屋の勝ち点差はついに「9」となった。

 全チームが気合いを入れて川崎F戦を戦わなければJ1の火が消えてしまう。

 深刻な事態である。

川崎F、名古屋ともに4-1-2-3

 川崎Fのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがチョン・ソンリョン。最終ラインは右から山根、ジェジエウ、谷口、登里である。

 アンカーにはジョアン・シミッチが入り、右インサイドMFは田中碧。左インサイドMFは旗手が務める。

 3トップは右から家長、レアンドロ・ダミアン、三笘である。

 一方、名古屋はフォーメーションを4-1-2-3といつもとは変え、ミラーゲームにしてきた。中盤3センターで守備を厚くする狙いだろうか。

 スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、木本、丸山、吉田だ。

 アンカーは米本、右インサイドMFは稲垣、左インサイドMFは長澤。3トップは右からマテウス、山崎、前田である。

 名古屋は、ふだんリードして守り切り、勝ち逃げするときのフォーメーションだ。そういう形で、今日は試合の頭から臨んだ。さて、これがどう出るか? だ。

名古屋はどうもメンタルが弱い

 名古屋は立ち上がりからミスが多い。なんだか大舞台に弱く、浮足立って見える。

 第1戦と同じで、首位決戦を迎え彼らはメンタルが弱くバタバタし、過去の落ち着いた試合とはまったくちがう腰の浮いた展開になっている。

 反対に川崎Fはインテンシティが高く、プレッシングも彼らの方に強さがある。

 その川崎Fの1点目は前半31分だ。

 川崎Fの左CKから田中碧がクロスを上げる。これをファーでジェジエウが叩くようにヘッドで決めた。1—0である。

名古屋はディフェンディングサードまでリトリートする

 今日も名古屋は川崎Fがポゼッションすると、ディフェンディングサードまでリトリートする。守備位置が深すぎる。

 逆に名古屋がボールを奪い「すわ、カウンターのチャンスか?」というときには、川崎Fの田中碧がきっちりチャンスの芽を潰していた。

 名古屋は速いカウンターをかけたい局面でも、ボールを後ろに下げてやり直してしまう。速いトランジション(攻守の切り替え)を理解していない。 

 彼らの辞書には「速いショートカウンター」という文字がないのだ。

 相手ボールのときプレスをかける位置も低く、ハイプレスやカウンタープレスという文字も辞書にない。

 相手ボールになれば、ただひたすらリトリートし自陣にブロックを組む。

 彼らは一度、戦術を見直してみる必要があるのではないか? どうも戦術が古色蒼然としている感じだ。

「詰み」が決まったあと、ただ「指してみた」だけ

 川崎Fは1点リードしたあと、後半に入って立て続けに2点を連取する。

 特に2点目は左からの三笘の折り返しに、右SBの山根がゴール前まで侵入してゴールを決めた。彼はハーフスペースをインナーラップしてきたのである。

 このあたり、両者の戦術の鮮度のちがいが際立って見えた。

 名古屋のオウンゴールで川崎Fが3-0と決定的にリードしたあと、名古屋は2点を取って追い上げたが時すでに遅し。

 将棋でいえば、すでに「詰み」が決まっているのに「まだ指してみた」という感じがした。

 川崎Fは三笘のドリブルも速さが光ったし、3対2という競った点差以上の開きのある勝負だった。

 これで名古屋は首位・川崎Fとの勝ち点差が「9」に開いた。

 力の差を実感した試合だった。

【関連記事】

【J1首位決戦・2連戦分析】どこからプレスをかけるのか? ~川崎F vs 名古屋

【J1天王山・第2戦プレビュー】ラインの高さとトランジションをめぐる戦いに ~川崎F vs 名古屋

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【J1天王山・第2戦プレビュー】ラインの高さとトランジションをめぐる戦いに ~川崎F vs 名古屋

2021-05-04 10:08:39 | Jリーグ
現在の勝ち点差は「6」だ

 いよいよすべてを決める本当の天王山がやってきた。変則日程のせいで実現した、J1リーグの首位攻防2連戦の第2戦だ。

 2チームとも13試合を終え、川崎フロンターレは第1戦に勝って11勝2分0敗の1位。

 一方の名古屋グランパスは第1戦に負け、9勝2分2敗の2位である。

 そして現在の勝ち点差は「6」だ。もし名古屋が負けたら「9」になる。どこかのテレビ局ではないが、名古屋にとっては「絶対に負けられない戦い」になるだろう。

先制点がすべてを決める

 名古屋としては最終ラインがズルズル下がって負けた第1戦の教訓を生かし、ラインを高く保って戦いたい。こうして前からプレスをかけるのだ。

 逆に川崎Fとしてはそのライン裏を狙い、速い攻撃を仕掛けて先取点を取りたい。

 この試合、先制点の意味は大きい。

 川崎Fが先制すれば、名古屋は「ああ、またか」と第1戦の記憶がよみがえる。そこからまたメンタルが崩壊し、ズルズル行くかもしれない。

 こうなれば川崎Fとすればしめたものである。

 逆に名古屋が先制点を取れば、「よし、行けるぞ!」とメンタルが冴え渡り、勢いがつく。すべては先取点が決めるといっても過言ではない。

最終ラインをめぐる戦いになる

 もし名古屋が高いラインで戦ってくれば、川崎Fはそのラインの裏を狙いたい。選手が裏に走り込み、よーいドン、でスルーパスを出すのだ。

 川崎Fにとって、こういう戦い方は慣れているだろう。

 逆に名古屋側から見れば、裏を狙えないようにしなければならない。それには中盤からプレスをかけ、ボールをクローズ(ボールにプレスがかかった状態)にさせる必要がある。

 この状態にすれば川崎Fはスルーパスを出せない。

 逆に守備が得意な名古屋にとっても、プレッシングしながらのこういう戦いは慣れたものだ。

 つまりこの第2戦は、名古屋の最終ラインをめぐる戦いになると見る。

トランジションが決める速いカウンター

 川崎Fはチームのコンセプトから考えて、ボールを保持し、ポゼッションしてくるはずだ。とすればポゼッション率は6:4で川崎Fが上回るだろう。

 ならば名古屋とすれば中盤でプレッシングし、川崎Fを自由にさせない。ラストパスを出させない。

 それだけでなく中盤の攻防で、できればボールを奪ってしまいたい。

 ポゼッション率で上回る川崎Fは、前にかかって攻めてくるはずだ。

 ならば中盤でボールを奪えれば、相手は守備の態勢が崩れている。で、前がかりになった川崎Fのライン裏を狙い、速いカウンターを仕掛けたい。

 機敏なトランジションにより、名古屋はボールを奪ったら守備から攻めに素早く切り替える。

 そして人とボールを速く動かし、速いショートカウンターを打って川崎Fの高いライン裏を狙いたい。

点の取り合いになれば川崎Fが有利だ

 こんなふうに試合は最終ラインの高さとトランジションをめぐる攻防になる。

 もし点の取り合いになれば川崎Fが圧倒的に有利になるだろう。

 逆に0-0で1点をめぐる息詰まる攻防になれば、名古屋に勝算が生まれる。

 このゲーム、果たして終わった時には勝ち点差が「3」になるのか? それとも「9」になるのか?

 文字通り、J1リーグの今季を占う戦いになりそうだ。

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【J1首位決戦・第2戦プレビュー】自分との戦いに勝て ~第12節 川崎vs名古屋

2021-05-03 04:58:30 | Jリーグ
ふつうに力を出せれば勝てる

 5月4日に首位決戦の第2戦がやってくる。第1戦の名古屋は監督がいないことがメンタル面に作用し、普段通りのサッカーができずに敗れた。

 とすれば名古屋は第2戦をどう戦うべきだろうか?

 スタメンに関しては第1戦を最強の布陣で戦い敗れているだけに、次の一手がむずかしい。

 ただ第1戦の敗戦はメンタルの問題だっただけに、また同じ布陣で心を入れ替えて「やってこい!」ということはありうる(第1候補)。

【第1候補】

FW 山崎凌吾
MF 相馬勇紀 柿谷曜一朗 マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 木本恭生 宮原和也
GK ランゲラック

 いずれにしろ名古屋の場合、メンバーをどう変えるにしても後ろ半分はほぼ不動なのだ。唯一、CBが中谷から木本恭生に変わる、右SBが宮原から成瀬竣平に変わるパターンくらいである。

 ただ目先を変えるなら、いくつか候補は考えられる。第1戦で動きがよかった前田直輝をスタメン起用するバージョンだ(第2候補)。

【第2候補】

FW 山崎凌吾
MF マテウス 柿谷曜一朗 前田直輝
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 成瀬竣平
GK ランゲラック

 この場合はマテウスを左サイドへ移し、前田を右に入れることになる。

 このほかセンターラインに手を入れるパターンもありえる。トップ下をガブリエル・シャビエルとし、柿谷をワントップで使うような場合だ(第3候補)。

【第3候補】

FW 山崎凌吾(柿谷曜一朗)
MF 相馬勇紀 G・シャビエル マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 宮原和也
GK ランゲラック

 センターラインを変える手としてはこのほか、前田直輝をトップ下、齋藤学を左サイドに使う手(第4候補)や、阿部浩之(第5候補)をトップ下で使う方法もある。

【第4候補】

FW 山崎凌吾(柿谷曜一朗)
MF 齋藤学 前田直輝 マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 成瀬竣平
GK ランゲラック

【第5候補】

FW 山崎凌吾(柿谷曜一朗)
MF 相馬勇紀 阿部浩之 マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 成瀬竣平
GK ランゲラック

戦術的にはどう戦うか?

 さて一方、戦術的な戦い方だが、第1戦はメンタルの問題で最終ラインがズルズル下がってやられた。ここをまず修正したい。勇気をもって高い位置に留まることだ。

 そのほか戦術的にどう戦うか? については、第1戦のプレビューをした2本の記事と、1戦目の試合結果を分析した記事1本にほとんど書いた通りだ。第1戦では浮足立ってぜんぜん実現しなかったが、第2戦ではプレビューに書いたような戦い方をしたい。

 文末に【関連記事】としてあげておくので、参考にしてほしい。

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