えくぼ

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話しかけること

2018-04-19 14:03:56 | 歌う
私は親しくない人に話しかけるのは苦手である。着慣れない服を着る心地がする。そんな私が私の作歌信条は「話しかけること」などと書いている。4年前の「東京歌人ジャ一ナル」3月30日発行。4年も前の私の拙文だが、

初夏のある夜、ベランダから火星を見ていたら火星も私を見ている。予報では翌日から雨が続くとのこと。しばらく火星に会えないだろう。「火星には雨が降らないそうですね」と話しか
けると「地球には不幸が降るそうですね」と火星も話しかけてくる。作歌信条などと言うほどの自信はないが、自然や人へ話しかけることが歌を詠むきっかけになる。

熱っぽく話しかけると時には素敵な返事を聞くこともできる。容易に会えない人、もう会えないあの世の人に話しかけるのは風や雨の夜がよい。風雨の音は短歌のリズムになりやすい。夜は耳が詠い昼は目が詠う。雨は直線、曲線、斜線、点線に。風は木々や花々を踊らせる。自然はその感情をストレ一トに表現するので分かりやすい。

ときには私が私に話しかけるが直に私がうるさくなり散策する。歩いていると何かが私に話しかけてくる。「久しぶりだねぇ」という声にふりむくと
沙羅の小枝が揺れている。「ここへ来いよ」と手招きしている。痩身痩躯の青年のような沙羅の木にやさしく話しかけたくなる。しかし甘い言葉は控える。話しすぎないように言葉を押さえる。思いきり言葉の捨てる。そして作品の誕生を気長に待つことにしている。

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