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松村由利子の短歌時評

2016-09-20 09:14:58 | 歌う

             松村由利子の短歌時評

 昨日の朝日歌壇・短歌時評は「歌集をどう読むか」、松村由利子の寸評である。私たち歌人は短歌を詠むことと、読むことに追われている。小説やエッセイを読む時間がないことを嘆くのは私だけではない。先ず歌集を効率よく読みたい。「歌集はどう読めばいいの?」から松村由利子は書き始めている。ウェブサイト「橄欖追放」は2008年から始まり、月に2回、短歌作品を中心に批評、鑑賞が書かれている。著者の東郷雄二はフランス語学、言語学を専門とする研究者で、自身では歌を詠まない」。

 小説ならストーリーに沿って徐々に世界が展開するが、歌集は、「どこからどう読めばよいのかわからない。並んでいる短歌同士の関係もわからない」と東郷雄二。手探り状態でたくさんの歌集を読むうちに、彼は「秀歌と地歌」の関係に気づく。地歌が背景となって秀歌を際立たせている構造を明らかにしてみせる。どんな高名な歌人でも秀歌だけで一冊の歌集を編むことは不可能に近い。何でもない歌でほっとさせた後に、きりきりと張りつめた一首で効果的に読者の心をつかもうとすることもある。

 私は図々しく歌集を2冊も刊行したが「地歌」ばかりで 「きりきりと張りつめた一首」 はなかったのではないか。しかし読者は私の「地歌」に寛いだかもしれない、などと思えば気が楽になる。

 松村由利子は最後の段落で 「一首ごとの鑑賞の仕方を懇切に解説した本は多いのに、歌集の読み方を指南したものはほとんどない。それは短歌の世界には 作者=読者 であることが多いために抜け落ちていた視点だと気づかされた」、と。

 2010年春から石垣島に住んでいる松村由利子は科学の分野を詠った短歌を紹介したエッセイ集 「31文字のなかの科学」で第10回科学ジャーナリスト賞、ワーキングマザーとしての「与謝野晶子」で第5回平塚らいちょう賞を受賞している。3年前の冬に私は石垣島を訪れたとき向日葵が咲いていた。日本ではないような南国、この冬も訪れたい。

      見上げればスカイツリーになりてゆくココヤシの木よ長寿なれかし

                     9月20日  松井多絵子    


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