・・・・ 冬眠したい ・・・・
❤ 貴女だって冬眠したらいいのにと夢の草葉の鈴虫が言う 松井多絵子
寒くなってきた。さらに寒くなるだろう。夜更けの鈴虫のなき声は全く聞こえない。すでに冬眠しているのだろう。哺乳類や鳥類の一部は食糧の少ない冬は冬眠する。爬虫類や昆虫は極めて不活発な状態で「冬越」する。うとうとしているのだ。地下はやや暖かいから。
紅葉が燃え尽き散りはじめる頃から寒さが厳しくなる。私の歩く距離か短くなる。家で本を読んでいると居眠りしてしまう。冬は無気力になる。人間だって冬眠したらいいのに。昆虫のように冬越できる処があればいいのに。例えばケアーホームやカプセルホテル。ベッドだけあればいい。食べないのだから安上がりだ。室温22度は人間が最も心地よい温度らしい。その部屋で眠って越冬する。三月の下旬にモーニングコール。桜が咲きはじめている。菜の花がすでに野を黄色に染めている。
♠ A面とB面のわれが添いながら眠りの森を歩きはじめる
♠ いくつもの鍵に守られ眠る夜の耳に寄せては遠のく風波
♠ 濃くなりし深夜の闇に横たわり海底の魚になりゆくような
昨日の深夜から私は人魚になり海の底で眠っていたのに、現実に戻されて、、。
♠ まだ生きていたのか時計のアラームに目ざめて今日の朝(あした)がひらく
もし人間が冬眠したら、そのまま永遠の眠りになるかもしれませんね。
11月26日 松井多絵子
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◆ 俳句情報
七田谷まりうす句集 『通奏低音』 第4句集。角川学芸出版・本体2200円
✿ 折鶴の折り方忘れ雪の暮
奥田好子句集 『陽だまり』 第1句集 日本伝統俳句協会・税込2500円
✿ 勝敗の汗拭きながら泣きながら