えくぼ

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馬鹿力のエゴ

2014-11-18 09:13:38 | 歌う

            ♦ 馬鹿力のエゴ ♦

❤ 慎太郎という名の牛が荷車のわれらを運び由布島をめぐる   松井多絵子

 3年前に慎太郎に会った。人間の石原慎太郎ではなく牛の慎太郎、この牛が旅人4人を乗せた荷車を曳いて島を巡ってくれたのだ。由布島に着いたとき現地のガイドさんが 「これから乗る荷車を曳く牛は皆さんの好きな牛を選んでください」と云って5頭の牛を紹介してくれた。どの牛も同じように見えた。結局 「慎太郎」という名の牛を4人が選んだ。その牛の姓は聞かなかったが4人の女達は石原慎太郎の曳く荷車に乗り島を巡りたかったのだ。全員が反・慎太郎。「嫌い」「大きらい」「夫より嫌い」などと慎太郎の悪口を言い交わしながら、島の景色を荷車から見る。嫌いな男を自分の下僕にする快感を私も愉しんだ1時間半   

 『エゴの力』 著者・石原慎太郎の本の広告。相変わらず目立ちたい男だなあ。と私は吐息。20何歳かで書いた小説『太陽の季節』で芥川賞を受賞し半世紀以上も日本を支配している。小説家として頑張って欲しかったのにいつの間にか政治家。芥川賞をとことん利用しているような気がする。しかし彼のような「俺について来い」的な男は娘の頃はとても魅力があった。慎太郎的な男と結婚した女達が夫のエゴに悩まされてきた。頼れる男の筈の夫が地位も財力もないただの老人になり、でも昔と変わりなく「俺サマ」。そんな夫と暮らしている妻は控えめで優しい男に惹かれるようになる。馬鹿力のエゴは周囲を困らせる。

 「強靭のエゴこそ成功への最大の原動力」の広告文に添う慎太郎の強情な顔、エゴのかたまりのような顔、定価は780円だから売れるかもしけない。でも私は彼に100年のちも評価されるような小説を書いて欲しい。すでに82歳、残された時間を石原慎太郎の名作のために大切に使っていただきたい。 慎太郎の母親みたいですね。私。  松井多絵子    

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♦ 短歌情報 11月18日

◆ 谷岡亜紀歌集 『風のファド』
    ハングライダーで空を飛び、身を風に委ねる作者。(短歌研究社・2800円)

◆ 間ルリ歌集 『それから それから』
    母子などを歌った第1歌集。跋文は斉藤斉藤。(ながらみ書房・2500円)