先日、雲場池に朝の散歩に出かけた時、遊歩道脇の別荘のフェンスに、カブトムシが一匹止まっているのに気がついた。少し赤みがかった色をした、やや小型の♂である。立派な角をつまんで、少し離れたところにある樹に止まらせて写真を撮った。
雲場池の遊歩道脇で見かけたカブトムシ♂(2024.8.18 撮影)
軽井沢に移住して10年ほどになるが、これまで当地でカブトムシを見かけたことはなかったので、もしかしたら・・・と思ったのであった。
実は、今自宅でカブトムシを飼っている。昨年秋に、群馬県にある妻の友人の畑に収穫のお手伝いに行った際、畑の一角の堆肥場に100匹ほどもいたカブトムシの幼虫を少し分けていただいてきて、飼ってきたのである。
そのカブトムシの幼虫は、飼育ケースの中で無事軽井沢の冬を越して、8月上旬に成虫になった。飼育した目的は、成長過程の3D撮影であったが、うまく撮影条件を整えることができず、撮影は失敗に終わっていた。幼虫そのものは順調に成虫になり、昼間は底に敷いている腐葉土に潜っていることが多いが、与えた餌の「カブトムシゼリー」の減り具合から見ると、猛烈な勢いで食べて元気にしている。
好きなように飛び去ればいいと思い、飼育ケースの蓋を開け放したままにしていたが、1週間ほど経ってもまだ何匹も飼育ケース内にとどまっているのを見ていた。
散歩から帰り、腐葉土を掘り返して、カブトムシの数を数えてみると、3匹減っていた。雲場池で出会った♂のカブトムシは、やはり我が家から飛び立っていった「うちの子」に違いないと思えた。
翌日の散歩の折に、少し注意しながら歩いてみたが、もう前日のカブトムシを見つけることはできなかった。
もともと昆虫が好きで、子供のころから様々な昆虫を採集してきた。近所の同級生には昆虫好きはいなかったので、もっぱら一人で昆虫採集に出かけていた。カブトムシは自宅周辺で見ることができなかったが、小学校の5年生と6年生の時に出かけた吉野の林間学校では、朝の宿周辺の散歩の時に、数匹のカブトムシを見た記憶がある。
また、父の実家がある高野山の麓の村に墓参りに出かけた時には、墓地の周囲に植えられているクヌギの樹を蹴ってバラバラと落ちてくるカブトムシやクワガタムシを拾ったものであった。
チョウをはじめカブトムシなどの甲虫類、ハチやセミなどを採集して標本にしていたが、もう散逸してしまい今は何も残っていない。
定年後、縁あって山梨県・北杜市のオオムラサキセンターに時々通うようになり、その行き帰りに野生のオオムラサキを探して北杜市内の山間部をあちらこちら探したことがあった。
夕方近くになったある日、林道でカブトムシが止まっている樹を見つけた。しばらく様子を見ていると、どこからともなくカブトムシが飛来し、この樹に次々と止まることがわかった。またたく間に10匹近くのカブトムシを採集することができ、夢のような気持ちで持ち帰ってきたことがあった。
この時の樹は一体何だったのだろうかと後になって思った。普通カブトムシが樹液を求めて集まってくるのはクヌギやコナラであり、それなら判る。しかし、葉の様子は違っていたように思えた。
後で、ホームセンターの園芸コーナーで知ったことであるが、「カブトムシの集まる樹」というものが売られていた。樹の名前は「シマトネリコ」という。あの時の樹も、このシマトネリコだったのだろうかと思ったりしたが、調べてみると南方産で園芸種のシマトネリコが北杜市の山間部に自生しているとは考えにくいので、誰かが植えていたものかもしれないと思ったりしている。
ところで、自宅で飼育したカブトムシの幼虫だが、娘と妻が100円ショップでカブトムシの飼育・観察ケースを見つけて購入してくれたので、試みに1匹だけこの容器に移してみた。厚みが薄くできていて、カブトムシが蛹や成虫になるところを容器側面から見ることができるという仕組みである。
その他の幼虫は今回は観察することを諦めて、飼育ケースに厚く敷いたカブトムシ用マットと腐葉土とを混ぜた中で育てた。普段、姿は全く見えない。
しかし、時々糞の掃除をする必要があり、用土を全て「ふるい」にかけて糞を選り分けて捨てているので、その時に幼虫の成長具合は観察できる。
カブトムシの幼虫の様子(2024.5.7 撮影)
今年の7月初めごろだったと思うが、活発に動き回っていた飼育・観察ケース内の幼虫の動きが止まり、1か所でじっとしているようになったのが、わずかに容器壁を通して見られたので、いよいよ蛹になると判断し、それからは両方の飼育ケースの糞の掃除を中止して様子を見ていた。
8月上旬になり、容器壁から見える幼虫の色が褐色に変化してきたので、容器から出してみると、すでに脱皮した成虫の姿になっていた。ただ、この個体は立派な角の形が少し変形していた。
別の飼育ケースも腐葉土を掘り返してみたところ、すべての幼虫が脱皮を終え、成虫になっていたので、早速、成虫用の餌「かぶとむしゼリー」を買い与えた。
数日後、夜間激しい雨が降った翌朝、飼育ケースを見ると、中が水浸しになっていた。何匹かはケースの蓋につかまっていたが、残る数匹は水に浮かんでもがいていた。不注意にも屋根のない場所に置いていたからであったが、カブトムシは溺死しておらず、事なきを得た。
この後、妻の提案もあり、ケースの蓋を取り外して、去るも残るも自由にさせることにしていたのであった。結果、数匹が、飛び立っていったことになるが、残っている個体をよく見ると、飼育・観察ケースで成虫になった♂1匹を含め、翅や角に奇形のあるものが数匹みられた。全部ではないのだろうが、自由に飛ぶことができないために、飼育ケースに残ったものもいるようである。
外観は奇形ではあるが、これは蛹化・脱皮時に何らかの理由で起きたことで、DNAの問題ではないはずとの考えで、ケースにいるカブトムシは、このまま飼育を続けて、採卵し、次の世代を育ててみようと考え方を変え、再びケースに蓋をした。
もし、うまく採卵ができ、孵化させることができれば、今度はなんとかもう一工夫をして成長過程を撮影したいものと考えている。
以下の写真は、「ぐんま昆虫の森」に出かけた時のもので、「昆虫観察館」の入り口にはカブトムシのモチーフがあり、内部には飼育されているカブトムシの観察ケースと成長過程を示すパネルがあった。実はこのパネルを見ていたので、カブトムシの飼育と撮影を思い立ったのであった。
「ぐんま昆虫の森」の「昆虫観察館」の入り口にみられるカブトムシのモチーフ(2019.1.11 撮影)
「昆虫観察館」のカブトムシ飼育ケース(2019.1.11 撮影)
「昆虫観察館」のカブトムシの1年を示す展示パネル(2019.1.11 撮影)
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