今回はアオゲラ。雲場池周辺にはキツツキの仲間は3種いて、コゲラ、アカゲラはよく見かけるが、アオゲラの姿を見る機会は比較的少ない。散歩の途中、たまに見かける程度である。
ところがある朝、散歩の帰り道、別荘地の中を歩いていると、どこからかキツツキのドラミングが聞こえてきた。音のする方を探してみると、真新しい別荘の屋根の軒裏にアオゲラの♂が止まっていて、すでにいくつもの穴をあけているところであった。
この時、このアオゲラは夢中になって穴をあけていたので、しばらくの間撮影することができた。
私にとっては、出会うと嬉しい種であるが、別荘の住人には迷惑この上ない存在ということになる。
いつもの「原色日本鳥類図鑑」(小林桂助著 1973年保育社発行)に、アオゲラは次のように紹介されている。
「形態 前種(ヤマゲラのこと)に似るが♂の頭上は全体鮮紅色。嘴峰29~36mm、翼長138~148mm、尾長93~106mm、跗蹠24~26mm。背は前種より濃い緑色。眼先は黒く顎線は鮮紅色でその前後は黒。下面は灰緑色で腹以外には顕著な黒色横はんあり。♀は後頭だけ鮮紅色。
生態 我国特産種。主として低山帯の森林に生息するが、亜高山帯にも分布する。針葉樹の巨木林に生息することが多く、冬季には市街地の庭園にも漂行することがある。ピョー、ピョーと鋭い声でなきキャラ、キャラとなくこともある。好んでアリ類を食す。西日本ではキツツキ類中コゲラに次いで多い種類である。
分布 本州に周年生息繁殖。・・・」
名前の「アオ」だが、実際には青みはなく背の色は緑色である。では、何故この鳥をアオゲラと呼ぶのだろうかと思うが、色の青と緑については曖昧なまま用いられている例はいくつもある。
代表的なものは信号の色で、最近は青色発光ダイオードの採用で、きれいな青から青緑色の信号が普及してきたが、以前は緑~青緑色のものが多かったと思う。それでも信号の色を呼ぶときは青であった。
ほかにも、青果、青物、青野菜、青りんご、青唐辛子、青梅、青汁など野菜や果物では青と呼ぶが全て色は緑。
日本では古来、青から緑色にかけてはすべて青色と呼んでいたとされ、アオゲラの場合もその伝統を受け継いで命名されたようである。
アオゲラ以外にも先の図鑑を見ると、「アオ」のつく鳥はアオサギ、アオジ、アオシギ、アオバズク、アオバトと載っているが、図版を見るかぎり、羽色の青い鳥はいない。
一方、青く見える鳥は「ルリ」と呼ばれている。ルリカケス、ルリビタキ、オオルリ、コルリなどは確かに青い。
さて、撮影した写真を見てみる。

アオゲラ♀ (2023.3.1 撮影)

アオゲラ♀ (2024.1.6 撮影)

アオゲラ♀ (2025.2.28 撮影)
図鑑の説明にあるとおり、鮮紅色が頭上全体に広がっているのが♂で、♀は後頭部だけが鮮紅色になっているので、この赤色を確認できると雌雄の区別は容易である。上の写真で紹介したものは、いずれも♀ということになる。
次はアオゲラの♂が新築されたばかりの別荘でいたずらをしているところである。ドラミングが聞こえてきたので、音のする方を探してみると、まさかのシーンが見られた。
別荘の壁面に穴が開いているのを見かけることは時々あるが、この別荘はこの時新築されたばかりで、まだ入居前の様であった。この穴を発見した持ち主はさぞかし驚いたことだろうと思う。

別荘の軒裏に穴をあけるアオゲラ♂ (2023.9.20 撮影)

別荘の軒裏に穴をあけるアオゲラ♂ (2023.9.20 撮影)
キツツキの仲間が別荘の屋根や壁などに穴をあけるのは、ねぐらや巣を作るためとされる。ただ、キツツキだけならまだしも、この穴を利用して、屋根裏に他の小動物が入り込むことがあるので、住人から嫌われることになる。
軽井沢には別荘が多く、普段は人が住んでいないのでキツツキには絶好の場所になるのであろう。
義父が40年ほど前に南軽井沢に建てた山荘にもいくつか穴があけられ、金属板などで塞いであった。この辺りでは、「いたちごっこ」ではなく、「きつつきごっこ」ということばがあるそうである。
この山荘の近くに、元大関の貴乃花関一家の大きい別荘が建ち、挨拶に見えたことがあったとのこと。聞いたところでは内部には土俵も作られていたそうである。そういえば、東御にある雷電の生家とされる建物の中にも土俵が作られていたことを思い出す。
この別荘は、私が軽井沢に住むようになった時には、既に一家が利用することはなかったようで、若貴兄弟や関係者の姿を見ることもなくなっていたが、近くで見るとキツツキの格好のターゲットになっていて、壁面には十カ所近い穴があけられていた。
さて、先に紹介した新築の別荘の軒裏に開けられた穴だが、今回改めて現地に行って確認したところ、あけられた穴はそのままになっていた。当時は気付かなかったが、屋根の反対側の軒裏にも同様のキツツキのあけた穴が残されていた。
しかし、キツツキ除けの針状の櫛歯状防護用品が軒先全体に取り付けられていたので、アオゲラがあけた穴は表面の板部分に留まり、屋根裏に通じるような穴はそれ以上掘られていなかった。

屋根の軒裏にあけられたキツツキの穴と針状の防護用品(2025.3.20 撮影)

屋根の反対側の軒裏にあけられたキツツキの穴(2025.3.20 撮影)

屋根の周囲全体に取り付けられている、キツツキ対策の針状用品(2025.3.20 撮影)
周辺の別荘をざっとみたところ、この辺りではキツツキによるこうした被害は他にはなさそうなので、2年ほど前に、アオゲラがなぜこの新築されたばかりの別荘を狙って穴をあけたのかは不明である。