軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

フキノトウ

2018-03-16 00:00:00 | 山菜
 新しく始める仕事の関係で、このところ軽井沢警察署の生活安全課にときどき出かけている。先日、先方から電話があり、お願いしてあった品物を受け取りに出かけた時、警察署の建物に沿った狭い地面にフキノトウが生えているのに気づいた(下の写真は後日改めて行き、撮影したもの)。

 軽井沢はまだ冬枯れの中にあり、自宅庭にもまだ去年の落ち葉が積もったままになっているが、2月上旬には溶け残っていた雪の中から名前通りスノードロップが芽を出して、小さな花を付け、それが寒さのせいか今もまだ咲き続けているし、陽だまりにはオオイヌノフグリが咲き始めている。3月に入ると、群馬県にある妻の友人の畑脇から移植したフクジュソウも咲き始めた。

 そろそろ、軽井沢にも春の兆しが見えてきたという感じでやはりうきうきとしてくる。


軽井沢警察署の建物の脇に芽を出したフキノトウ(2018.3.12 撮影)


同上(2018.3.12 撮影)


2月上旬に咲き始めた自宅庭のスノードロップ(2018.3.14 撮影)


自宅庭のフクジュソウ(2018.3.14 撮影)

 昨年は妻の友人のMさんからのお誘いでフキノトウを摘みに、群馬県の畑に出かけてきた。畑の脇に大きな栗の木が4本並んでいるが、その樹下一面に春になるとフキノトウが芽を出す。これを摘ませてもらう。摘んできたこのフキノトウをフキミソや天ぷらなどにしていただいたのであった。

 「軽井沢でフキノトウが出始めたのだから、群馬の畑ではもう盛りを過ぎてしまったかな」。
 「友人のMさんも、我々が今年は新たに仕事を始めるのを知っていて、忙しいだろうからと気遣ってフキノトウ摘みの連絡をしてこなかったのかな」などと妻と話し合っていたところ、その友人のMさんから電話がかかり、「フキノトウを収穫したから送った」とのことであった。

 「我々の会話、Mさんに聞こえていたようだね!?」ということになった。

 翌日届いたフキノトウには2種類あった。一つは昨年我々も摘んだMさんの畑脇のもので、もう一つはこの畑のすぐ隣に住むMさんのいとこが販売用に栽培しているものであった。仮にこれらを天然品、栽培品と名前を付けて区別することにする。一見してその違いが判るもので、栽培品は一回り以上大きい。


Mさんから届いたフキノトウ・天然品(2018.3.11 撮影)


Mさんから届いたフキノトウ・栽培品(2018.3.11 撮影)

 ことしもフキミソを作ることにして、さっそく準備にかかった。昨年作った時のレシピを探し出して確認したが、大きく分けて二通りの方法がある。根部分を切り落とし、汚れた葉を取り除いて、水洗いするところまでは共通であるが、その後すぐに細かく切り刻んで使うものと、2分間ほど茹でてから刻んで使う方法とがある。

 下茹でしないと、刻んでいる間にも変色していくので、これを嫌う場合や、茹でると苦みがすくなくなるようなので、苦みの苦手な場合は茹でてからということになる。昨年は下茹でしないで作業を進めたので、今年は軽く茹でてから刻む方法を選び、2種類のフキノトウの食べ比べをするために、天然品と栽培品とを別々に作ることにした。


フキノトウを刻んだところ・天然品(2018.3.11 撮影)


フキノトウを刻んだところ・栽培品(2018.3.11 撮影) 

 味噌やみりんなどの量はレシピごとに結構異なるようだが、昨年は次の表のAで作ったので、今年はBを採用して作ることにした。


3種のフキミソレシピ 

 少量のごま油で、フキノトウを炒めてこれに、あらかじめ味噌・みりん・砂糖・(日本酒を追加した)を合わせておいたものを加えて更に過熱して、水分が飛んで少し硬めになったところで火を止めると出来上がり・・と簡単である。


できあがったフキミソ天然品(左)、栽培品(右)(2018.3.11 撮影)

 フキミソになったものを比較すると、天然品の方が色が濃く、試食してみるとコクのある感じがした。

 送られてきたフキノトウはかなりの量があったので、一部は妻が天ぷらにしてこれを夕食時にいただいた。こちらは栽培品の方が香りがよく、食感もふわりとした感じがしてよりおいしく感じた。

 それでもまだ、二人では食べきれないということで、ご近所のIさんにお裾分けをしてあったのだが、翌日Iさんから、ナス、ウドといっしょに天ぷらになって帰ってきた。

 天ぷらになったフキノトウは、どちらもさっさと食べてしまったので、写真が残っていないことに気が付き、まだ残っていたフキノトウはさらに翌日もう一度天ぷらになったが、こちらは冷静に写真を撮ることができた。結局、フキノトウのてんぷらは三日連続して我が家の食卓に上ることになった。フキノトウのてんぷらは日を追うごとに苦みが増している・・これは妻の感想である。


葉を開いて花が見えるようにして揚げたフキノトウの天ぷら(2018.3.13 撮影)

 軽井沢に住んだことのある作家水上勉さんの「土を喰う日々」(新潮文庫)には、「二月の章」に「こんにゃくの木の芽田楽」、「小かぶらの山椒味噌かけ」と共に「蕗の薹のあみ焼き」が次のように紹介されている。

 「・・・たとえば、ぼくが、こんどやってみた、蕗の薹のあみ焼きはおもしろいではないか。形のいいのをえらんで、串に二つ三つさし、サラダオイルにつけてから、唐辛子を焼くみたいにあみ焼きするのである。色が変わってきて、狐いろになるころ皿へ盛り、わきに甘い味噌を手もりしておくのである。酒客でよろこばぬ人はめったにいない。・・・」


水上勉さんの「土を喰う日々」に紹介されている「蕗の薹のあみ焼き」の写真

 まだ、フキノトウは残っているので、試してみようと思っている。




 
 
 

 

 

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タラノメとコシアブラ

2017-05-26 00:00:01 | 山菜
 以前住んでいた上越市に用があり、妻と一緒に車で出かけた。途中、数か所の「道の駅」に立ち寄り、季節の山菜などを買い求めながらの移動であった。今年、4月20日のことである。

 最初に立ち寄ったのは浅間サンライン沿いにある「雷電クルミの里」。ここは江戸時代の名力士「雷電為右エ門(1767-1825)」の生家が近くにあるので、それにちなんだ名前がつけられている。

 ここでは、ギョウジャニンニクが店頭に並んでいたので迷わずこれを買った。我が家ではギョウザやハルマキの具材として重要なものだ。見つけると買うようにしていて、冷凍保存をしていつでも食べられるようにしている。自宅の庭にも少しだけ植えているが、まだ収穫をしたことは無く、これは山野草の仲間としての扱いである。


自宅庭に植えているギョウジャニンニク(2017.5.6 撮影)

 上信越高速道路のSAでもある「新井・道の駅」ではタラノメ、コシアブラ、コゴミ、フキノトウなどが豊富に販売されていた。タラノメとコシアブラはまだ幼芽の状態で葉が開いていないものや、すでに葉が伸び始めて15cm以上になっている若葉など、やま採りの物にはいろいろな状態のものが混じっている。我々は、6-7cm程度の長さの、まだ葉が伸びていない幼芽のタラノメと10cm程度に伸びたコシアブラとを選んで買った。

 最近は軽井沢でもこうした山菜がスーパーの店頭に早々と並んでいて、結構な値段が付いているのだが、これらは栽培品であり野菜と変わらないように思えてあまり買う気がしない。しかし、自然の中で育ったものをこうして見つけると、やはりその季節を味わいたく、買ってみたくなるものだ。実際、「道の駅」などで売られているものの人気は高い。

 次の写真は後日、下仁田の「道の駅」で撮影したものである。この時は店頭に出ている商品が少ないこともあって、写真を撮ってしばらくしてもう一度見に行くとすでに売り切れていた。


下仁田の「道の駅」で店頭に並ぶタラノメ(2017.5.6 撮影)

 タラノメとコシアブラは山菜の王、女王などと呼ばれるようになっているが、私がタラノメのことを知ったのは、最初の勤務地であった横浜市郊外の研究所でのことであった。同僚のOさんはタラノメ採りの名人で、春になると昼休みに周辺の雑木林に出かけては、たくさんのタラノメを持ち帰ってきて分けてくれた。1974-5年のことで、今とは違ってこのころはまだ都会ではタラノメを知る人はほとんどいなかったように思う。

 このOさんはタラノメだけではなく、自然薯(じねんじょ)堀りの名人でもあり、夏に自然薯のツルを見つけるとその根元に麦の種を播いておき、秋になって自然薯や周囲の草などの地上部が枯れたころに行くと、青々とした麦の芽が出ていて目印になるので見つけやすいのだと教えてくれた。

 Oさんと、ある時一緒にタラノメ採りに出かけたことがあった。タラノキには鋭いとげがあるので、素手では高いところにある芽をもぎ取ることができない。そこで竿の先に鉤を取り付けたものを用意し、タラノキを見つけるとこの鉤を枝先にひっかけてたぐり寄せ、先端部の芽をもぎ取るのである。木を折ったりしてしまっては翌年から採ることができなくなってしまうため、これを避けるためのマナーだ。

 私も自分で採りに行ってみようと思い、当時自宅があった相模原周辺の雑木林に出かけてとげのある木を探し、まだ葉が伸びていないその新芽を採って持ち帰り天ぷらにして食べたことがあった。だが、後で葉の茂ったその木を見ると葉の形が楓のような手のひら型をしていた。どうもタラノキとは違う別の木の芽を食べてしまったようであった。私も家族も中毒を起こすようなことがなかったのは幸いであった。

 タラノキはウコギ科の植物で、典型的な陽樹で、道路沿いや川岸、森林の伐採跡地などの開けた場所に群生するとされる。ふつう我々がこうした場所で見かけるのは高さがせいぜい2-3m程度の棒状のものだが、大きいものでは約6mになる。平地から1500m以上の高所にも生え、軽井沢の別荘地や周辺の山地でもときどき見かけることがある。ただ、別荘地の道路沿いに生えているものはたいてい芽を何度も摘まれているようで、立ち枯れているものも多い。

 私が間違って食べてしまった、あの木は、今になってみれば、タラノキと同じくウコギ科のハリギリであったのだろうと思う。一応、若葉は食用になるとされている。

 コシアブラの方は、タラノメよりもずっと後になって知った。広島県三次市の工場に赴任していた1994-5年ころのことで、外注工場の一つが毎年春にバーベキューパーティーを開き、取引先の我々一同を招待してくれていた。その時にイノシシ肉のバーベキューなどと共に出された山菜天ぷらの主役がコシアブラであった。従業員が朝早く出かけて採ってきたものだと教えてもらったのだが、高い木の枝先にあるのだと言うだけで、どのくらいの高さのどんな木なのか詳細についてはこの時は判らなかった。

 最近も、春にてんぷら店でフキノトウと共にタラノメやコシアブラを食べさせてもらうこともあるが、いつもほんの少しだけという状態である。

 一昨年春、妻の友人Mさんの畑に出かけた時、Mさんの弟で群馬県庁に勤めているYさんが、趣味で山菜採りをしているということが判り、タラノメとコシアブラの話になった。この時、「おなか一杯コシアブラを食べてみたい!」と言う妻に、Yさんは「来年はその夢はかないますよ」と約束してくれた。

 そして、翌年約束通り大量のコシアブラとタラノメを採って持ってきてくださった。連日の山菜攻めになり、妻の夢がかなったことは言うまでもない。

 軽井沢に移住してからも、コシアブラの木がどのような姿をしているのかまだ判らなかった。ある時、小諸の植木市でコシアブラの苗木を売っているところに出会い、早速一株買い求めて庭の一角に植えた。1mほどの高さの株立ちのもので、数本の幹が根元から枝先まで7mm程度のほぼ一定の太さで棒状に立ち上がっている。木肌は白っぽいものである。知っている人に聞くと、山中でもこの木肌の白さを頼りにコシアブラを見つけるそうである。

 このコシアブラも、タラノキと同様ウコギ科・ウコギ属の植物であり、ウコギ属のなかでは別格で、高さ15m、直径50cmに達するという。買い求めたこのひょろっとした木が、いつか十数mとはいかないまでも、大きく成長してたくさんの幼芽をつけてくれるのかと思うと楽しみであるが、今のところ何とも頼りない姿をしているし、今年出てきた新芽も弱々しいものだ。同様に、植木市で買い求めたタラノキはすでに大きく葉を茂らせているのに比べると心配になる。


庭に植えているタラノキの芽吹き(2017.5.6 撮影)


大きく葉を広げた最近のタラノキ(2017.5.25 撮影)


新芽が出始めた、庭のコシアブラの枝先(2017.5.6 撮影)


特徴のある5枚の葉を広げたコシアブラ(2017.5.25 撮影)

 コシアブラを庭に植えてからは、5枚ある葉や枝の出方にも独特のものがあることが判り、木肌の様子と合わせて、山中でも見分けられるようになった。そんなわけで、最近は別荘地やその周辺の山に行っても妻はコシアブラをすぐに見つけることができるようになっている。2mほどの高さに成長した木も時々見かけるが、タラノキ同様、手の届きやすいところの芽は大抵もぎ取られていて、木の一部が枯れているものもある。

 まだ大木に成長したコシアブラに出会ったことはないが、慣れた人はどうやら木にはしごをかけて高いところの芽を採っているようだ。

 4月20日に上越に出かけたときに、懐かしさもあってスキー発祥の地として知られる金谷山に立ち寄ったのだが、尾根筋を歩いている時、すでにコシアブラには目ざとくなっている妻は次々とコシアブラの木を見つけた。4-5m程度の高さの木がほとんどであった。




上越市で見かけたコシアブラの木(2017.4.20 撮影)

 よく出かけていた場所であり、こんなに身近なところに、たくさんのコシアブラの木があったとは意外であったが、私が上越に住んでいたころにはまだ今のようには関心を持っていなかったのでやむを得ない。

 タラノメ採り名人のOさんからはコシアブラのことを聞いた記憶はないが、彼ならきっとすぐにコシアブラも見つけて採ってくれることだろうと思う。今度はこちらからOさんを誘ってコシアブラ採りに行ってみたいところであるが、このOさんはすでに数年前に亡くなってしまっている。


道の駅で買ったタラノメ、コシアブラなどのてんぷら(2017.4.20 撮影)

(2019.5.10 追記)
 最近、上田市郊外の「道の駅」に、タラノメやコシアブラなどの山菜を求めて出かけた時に、思いがけないものが売られているのに気がついた。かつて私がタラノメと間違って採ったことのある「ハリギリ」であった。これまで各地の道の駅で山菜を買ってきているが、ハリギリに出会ったのは今回が初めてであった。もう40年ほど前のことなので、私が採って食べた時の味はすっかり忘れているので、懐かしくなり一パック買って帰り、その日の夕食時にタラノメとコシアブラと共にてんぷらにしていただいた。味は、コシアブラより更にアクの強いものであった。

 その時の写真が次のものである。


山菜の王・タラノメ、女王・コシアブラと王子・ハリギリのてんぷら(2019.5.8 撮影)

(完)
 


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