軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

地震予測と対策(8)令和6年日向灘地震と一条堤

2024-09-27 00:00:00 | 地震
 遠くパリからオリンピックでのメダル獲得のニュースが流れる中、8月8日16時43分頃に日向灘沖で発生した強い地震により国内に緊張が走った。

 これまで、30年以内に70~80%の確率で発生すると予測されていた「南海トラフ巨大地震」の震源域内で発生した地震であったことと、地震の規模がマグニチュード(M)7.1とかなり大きかったことによる。

 皮肉なことに偶然気象庁では前日の7日、南海トラフ地震評価検討会の定例会合で、大規模地震発生の可能性について、「平常時と比べ、高まっていると考えられる特段の変化は観測されていない」と評価をまとめたばかりであった(読売新聞報道)。

 政府の地震会議では、来たるべき「南海トラフ巨大地震」への対応策を2019年に決めて発表していた。それによると、予想震源域内でM6.8以上の地震が発生した場合に取る行動基準が決められていた。次のようである。


気象庁発表の南海トラフ巨大地震への対応策

 今回この基準を満たすM6.8以上の地震が、基準制定後初めて発生したため、この対応策に従い、臨時情報「調査中」が発表され、引き続いて専門家による「評価検討会」が開かれた。TVの報道番組を見ていても、専門の解説委員の緊張感が伝わってくるものであった。

 まもなく気象庁と地震会議の平田 直議長による記者会見が始まった。発表内容はすぐにネットで公開されたが、「今回の地震は、プレート境界の一部が割れたと断定」、直ちに 『巨大地震注意』が発令された。上図の①の場合に相当する。あわせて、「普段より地震が起きる確率は数倍高くなった。元々いつ起きても不思議でないところだ。」と評価検討会会長の平田直・東大名誉教授は注意を呼び掛けた。 

 尚、気象庁の発表内容詳細は以下のようである。

 「気象庁発表:南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意) 
** 見出し **
  本日(8日)16時43分頃に日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し ました。この地震と南海トラフ地震との関連性について検討した結果、南海トラフ地震の想定震源域では、大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられます。今後の政府や自治体などからの呼びかけ等に応じた防災対応をとってください。
 ** 本文 **
 本日(8日)16時43分頃に日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し ました。その後の地震活動は活発な状態が続いています。また、ひずみ観測点では、この地 震に伴うステップ状の変化が観測されています。 気象庁では、南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会を臨時に開催し、この地震と南海 トラフ地震との関連性について検討しました。 この地震は、西北西・東南東方向に圧力軸をもつ逆断層型で、南海トラフ地震の想定震源 域内における陸のプレートとフィリピン海プレートの境界の一部がずれ動いたことにより 発生したモーメントマグニチュード7.0の地震と評価されました。 過去の世界の大規模地震の統計データでは、1904年から2014年に発生したモー メントマグニチュード7.0以上の地震1,437事例のうち、その後同じ領域でモーメン トマグニチュード8クラス以上の地震が発生した事例は、最初の地震の発生から7日以内 に6事例であり、その後の発生頻度は時間とともに減少します。このデータには、平成23 年(2011年)東北地方太平洋沖地震(モーメントマグニチュード9.0)が発生した2 日前に、モーメントマグニチュード7クラスの地震が発生していた事例が含まれます。世界 の事例ではモーメントマグニチュード7.0以上の地震発生後に同じ領域で、モーメントマ グニチュード8クラス以上の地震が7日以内に発生する頻度は数百回に1回程度となりま す。 これらのことから、南海トラフ地震の想定震源域では、大規模地震の発生可能性が平常時 に比べて相対的に高まっていると考えられます。 南海トラフ地震には多様性があり、大規模地震が発生した場合の震源域は、今回の地震の周辺だけにとどまる場合もあれば、南海トラフ全域に及ぶ場合も考えられます。 最大規模の地震が発生した場合、関東地方から九州地方にかけての広い範囲で強い揺れが、また、関東地方から沖縄地方にかけての太平洋沿岸で高い津波が想定されています。 今後の政府や自治体などからの呼びかけ等に応じた防災対応をとってください。 気象庁では、引き続き注意深く南海トラフ沿いの地殻活動の推移を監視します。 ※モーメントマグニチュードは、震源断層のずれの規模を精査して得られるマグニチュードです。気象庁が地震情報等で、お知らせしているマグニチュードとは異なる値になる場合があります。 ※評価検討会は、従来の東海地域を対象とした地震防災対策強化地域判定会と一体となっ て検討を行っています。 
** 次回発表予定 **
 今後は、「南海トラフ地震関連解説情報」で地殻活動の状況等を発表します。」

 この内容は翌日の新聞でも報じられ、購読紙では次のようであった。


8月9日読売新聞1面の記事

 これに伴い、今後1週間は更に大きい地震発生に備え警戒を強めるよう求められ、その対象となる地域は、全国の1都2府26県707市町村に及ぶ広大なものであって、各自治体ではそれぞれの実情に応じた対応を迫られることになった。

 この1週間という数値の根拠として、気象庁は先の発表で次のように説明している。

 「世界で1904~2014年に起きた国際的な単位『モーメントマグニチュード』換算で7以上の地震は1437回あり、その内、震源から50キロ以内で7日以内に起きた7.8以上の地震は6回ある。」


 この可能性が「数倍」高まったという内容は、少しわかりにくいと思うので、計算してみると次のようである。

 今回の地震が発生するまでの状況をみると、30年以内にM8クラス以上の地震が想定震源域内で発生する確率は70~80%(平均75%)とされている。これを単純に1週間以内に発生する確率に計算し直すと、
   0.75/30年x52週=0.00048
である。
 一方、M7クラスの地震発生後1週間以内に、M8クラスのより大きい地震が発生する確率は240回に1回とすると、
   1/240=0.0042
であるから、
   0.0042/0.00048=8.8
となり、今回の地震発生前に比べて、地震発生後1週間のM8クラスの地震発生確率が約9倍増加することになる。これを、数倍と表現しているのであろうと思える。

 岸田首相は、中央アジア・モンゴルの外遊を9日の出発直前で取りやめ、立憲民主党の泉代表も 11日からの米領グアム訪問を取りやめるなど、それぞれ危機管理を優先させた。また、対象となった各自治体では対応に追われた。
 
 30m以上の津波の想定される高知県の濱田知事は「注意の度合いを普段より上げながら冷静に対応してもらいたいと・・」と県民に呼びかけるとともに、高知市や土佐市、黒潮町など10市町村に避難所を開設し、あわせて39人が避難している。
 一方、高知市で開催される予定であったよさこい祭りは、協議の結果予定通り開催が決まった。

 最大震度7の揺れが想定されている愛知県岡崎市は、臨時情報発表時に避難所を開設することを防災対応指針であらかじめ定めており、8日夜に計20か所で開設した。避難者は8~9日に1人だったが、政府が防災対応を呼びかける1週間をめどに開設し続けるという。

 このほか、神奈川県、静岡県、三重県、徳島県、愛媛県、宮崎県などでは知事が県民に、注意喚起を呼びかけていて、観光地では宿泊予約のキャンセルが相次いでおり、旅行会社ではツアーの中止を決めたところも出た。海水浴場を閉鎖したところも出ている。

 長野県内では県南部が想定震源域に含まれることから、JR東海では9日の始発から、飯田線の特急「伊那路」の上下線全4本を1週間程度運休すると発表した。

 その後、幸いにも巨大地震の発生はなく、1週間が過ぎた8月15日、政府は対応地域への防災対応の呼びかけを終了した。

8月16日読売新聞1面の記事

 ところで、改めて政府が発表している被害想定の中の県別の死者数推定値を見ると次のようである。高い津波に襲われる県の死者数が大半を占める内容である。


死者数推定値

 こうしたことからも、地震への備えで重要なものは人口の多い地域における津波対策ということになる。

 内閣府から発表されている各地の津波高さ予測データがある。震源域をどの場所に設定するかにより当然津波予測値も異なるが、全部で11パターンが示されている。

 その中の1つ(ケース①「駿河湾~紀伊半島沖」に「大すべり域+超大すべり」域を設定 )は次のようである。対象となる地域の全体を示す地図と、各地域ごとの数値が左端の佐世保市から右端の北茨城市までが示されている。





南海トラフ地震による津波高さ予測(総務省資料から)

 こうした情報をもとに各地域では長期的な視点での津波対策をとることになる。

 これに関して興味深い事例があるので見ておこうと思う。それは、遠州灘に面した海岸線を持つ浜松市の取り組みで、すでに17.5㎞にわたる防潮堤の建設が完了している。この防潮堤は民間企業からの寄附金を核として、多くの企業や個人の寄附金により建設されたもので、最大の寄附を行った企業「一条工務店」の名前を冠して「一条堤」と名前が付けられた。

 今回、大阪に行く予定ができたので、かねて関心を持っていたこの浜松市の防潮堤を、途中下車をして見学した。

 長い防潮堤であるが、今回は浜松駅からまっすぐ南に延びる道路の突き当りにある中田島砂丘に向かった。この砂丘の入り口の交差点脇には、「一条堤」の名前を刻んだ石碑と解説パネルが設けられている。

遠鉄、中田島砂丘バス停(2024.9.20 撮影)

バス停横の公園の入り口付近に設置されたパネル(2024.9.20 撮影)

交差点脇に設けられた「一条堤」の石碑と解説パネル・寄附者銘板(2024.9.20 撮影)

向かって左側の解説板(2024.9.20 撮影)

向かって右側の解説板(2024.9.20 撮影)

「一条堤」の名前を刻んだ石碑(2024.9.20 撮影)

交差点から中田島砂丘の入り口を望む(2024.9.20 撮影)

中田島砂丘の解説板(2024.9.20 撮影)

中田島砂丘の入り口に設置された石碑(2024.9.20 撮影)

入り口の階段を越えると砂丘が広がり、その先に15mの高さの防潮堤が見える(2024.9.20 撮影)

防潮堤の上から見た東側の風景(2024.9.20 撮影)

防潮堤の上から見た西側の風景(2024.9.20 撮影)

防潮堤の上から見た南(海)側の風景(2024.9.20 撮影)

防潮堤の上から見た北(浜松駅)側の風景(2024.9.20 撮影)


防潮堤の上から見た海側のパノラマ風景(2024.9.20 スマホで撮影)


防潮堤の上から見た陸側のパノラマ風景(2024.9.20 スマホで撮影)

 この防潮堤の全体像は次のようであり、東は天竜川河口から西は浜名湖までの17.5㎞にわたり設けられている。

浜松市の海岸に設けられた防潮堤(浜松市HPより)
 
 2020年3月に6年9か月をかけて完成したこの防潮堤に関して、地元新聞は次のように報じた。
 
 「南海トラフ地震を想定し、遠州灘の沿岸(天竜川河口から浜名湖まで)に整備が進められ、3月に完成した国内最大級の防潮堤の竣工セレモニーが11月15日行われました。
 遠州灘の沿岸に完成した防潮堤は、天竜川河口から浜名湖までの全長17.5km、高さは最大で15mの巨大な防潮堤です。
 総工費は約330億円で、浜松市創業の住宅メーカー「一条工務店」が東日本大震災直後にに300億円の寄附を申し出て、今日の日を迎えた。地元では「一条堤」と呼ばれている。
 防潮堤の完成により、浜松市内は津波の浸水面積が8割程度減るだけでなく、木造家屋が倒壊する目安となる深さ2m以上の浸水想定区域は98%減ると見込まれている。
 竣工式には、川勝平太静岡県知事、鈴木康友浜松市長、宮地剛一条工務店前社長が出席『浜松市民の大きな財産、また歴史に残る1ページが開かれた』と称し、一条工務店グループに感謝状を贈った。
 平常時にはにぎわいの場として活用していくということで、国内最大級の防潮堤が新たな観光名所となることに期待が高まる。(静岡新聞)」

 民間の篤志家の寄附をきっかけとして完成したこの防潮堤は現在17.5㎞の海岸線を守っている。

 国土交通省の資料によると、南海トラフ地震津波対策特別強化地域(津波到達の早い地域)の総延長は約2,100㎞とされており、設計津波の水位に対する充足率は約4割で、設計津波の水位に対して堤防の高さが2m以上不足する海岸の割合は、約6割とされる(2020年資料)。


津波に対する全国の海岸堤防等の整備状況(2020年 国土交通省)

 仮にこれらの高さが不足している約1,200kmのすべてに「一条堤」と同程度の防潮堤を作るとすると、その工費は330億円の約70倍に達し、約2.3兆円の工費がかかる計算である。

 死者数が最大約32万3000人、被害総額が214兆円という東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)をはるかに上回る南海トラフ巨大地震による災害対策として、この防潮堤にかかる2.3兆円が高いか安いか、今日にも決まる自民党新総裁に聞いてみたいところである。


地震本部発表資料(2024年1月)から

 政府は今年度、約10年前にまとめた南海トラフ地震対策の被害想定や基本計画の見直しを進めており、今回の臨時情報や1月の能登半島地震の課題も検証し、反映させる方針だという。
 
 東日本大震災の教訓を活かし、対策してきた結果として、上記表の想定死者数や想定被害額をどこまで減らすことができているか、期待して発表を待ちたい。





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ブッドレアとクサギ

2024-09-20 00:00:00 | 
 もともと蝶好きのわれわれ夫婦であるが、軽井沢に移住してから自宅庭にもチョウを呼び寄せたいと考え、ブッドレアの苗を購入して植えた。

 2年ほどして、花が咲くようになるとすぐにいろいろなチョウが吸蜜にやってくるようになった。代表格はタテハチョウとヒョウモンチョウの仲間である。

 これらのチョウについては、順次「庭に来たチョウ」として当ブログで紹介してきたが、これまでに30種類ほどに達した。

 ところで、日本のチョウの中でも特に美しさで際立っている種のひとつがミヤマカラスアゲハだと思うが、軽井沢には比較的多く生息していて、初夏と盛夏の頃に2回発生する。

 我が家のブッドレアにもまれにやってくるが、夏型は8月になると、ちょうどこの頃、山野に咲くクサギの花によく集まってくるのを見かける。ミヤマカラスアゲハのほかに、カラスアゲハやオナガアゲハ、クロアゲハなどもこのクサギの花の常連である。

 以前から、南軽井沢の別荘地近くの林地にこのクサギの樹があることに気がついていて、花の咲く季節になると仕事に出かける前の早朝、アゲハ類の撮影に出かけていた。しかし、私有地の中にあったため、ある年行ってみると切り倒されてしまっていた。

 ほかにクサギの樹はないかと随分探してみたが、周辺地には見つけることができなかったので、それでは自宅庭に植えようということになった。クサギは名前通り臭いを嫌う人もいるようで、庭木として見かけることは少ない。しかし、その集蝶力から、信濃追分にあるTさんのバタフライガーデンにも、小諸のMさんのバタフライガーデンにも植えられている。

 我が家では、ミヤマカラスアゲハが来てくれることを優先したので、臭いのことは気にしないで、3年前に苗を3本買って植えた。成長は早く、植えて2年目の昨年は2mほどに成長して、少しながら花を咲かせた。その花を目指して早速ミヤマカラスアゲハとカラスアゲハが吸蜜に来るようになった。

 クサギのすぐそばに、キハダも植えていて、昨年はこのキハダにカラスアゲハが産卵するところを妻が偶然目撃したので、その卵を2個採集して蛹になるまで育てたが、その記録は当ブログで紹介している。

 クサギは今年さらに成長し、樹高3m以上になり、花芽もおどろくほどたくさんついた。そして、花が咲き始めた8月上旬、はじめてミヤマカラスアゲハが吸蜜に来ているところを見ることができた。


クサギの花に吸蜜に訪れたミヤマカラスアゲハ♂(2024.8.10 スマホで撮影)


夢中になってクサギで吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂(2024.8.10 スマホで撮影)

 この数日前から、旧軽井沢銀座にあるショップの前の道路を悠々と飛ぶカラスアゲハかミヤマカラスアゲハの姿を目撃していたし、この日の朝の雲場池散歩でも同じように目撃していたので、そろそろ我が家のクサギにもやってくるのではと思っていた矢先、期待に違わず、朝仕事に出かけようと庭に出たところに、ちょうど飛来した。

 しばらく様子を伺うように、私の頭すれすれに飛んでみたり、手にも止まりそうなところまで近づいてきたりしたが、やがて咲き始めたクサギの花穂に止まり蜜を吸い始めた。こうなると、もう私が手持ちのスマホを近づけて撮影しても驚いて飛び去ることもなくなる。数枚の写真を撮影してから、やや後ろ髪をひかれる思いでショップに出かけた。

 クサギの花はゆっくりと開花していて、咲きはじめから満開になるまで、かなりの日数を要するようである。以前山地で見ていた時には、ミヤマカラスアゲハを見るのはお盆の頃がピークであったが、我が家のクサギに集まるミヤマカラスアゲハはそれよりも遅く、8月10日に見て以来なかなか姿を見せず、その間にカラスアゲハ、オナガアゲハ、クロアゲハを見るようになった。


ブッドレアで吸蜜するオナガアゲハ♀ 1/2(2024.8.10 撮影)


ブッドレアで吸蜜するオナガアゲハ♀ 2/2(2024.9.3 撮影)

クサギの花に吸蜜に訪れたオナガアゲハ♀ 1/4(2024.8.23 撮影)

クサギの花に吸蜜に訪れたオナガアゲハ♀ 2/4(2024.8.23 撮影)

クサギの花に吸蜜に訪れたオナガアゲハ♀ 3/4(2024.8.23 撮影)

クサギの花に吸蜜に訪れたオナガアゲハ♀ 4/4(2024.8.23 撮影)


クサギの花に吸蜜に訪れたオナガアゲハ♂(2024.9.3 撮影)

ブッドレアで吸蜜するクロアゲハ♀(2024.9.1 撮影)

クサギの花で吸蜜するクロアゲハ♀ 1/2(2024.9.1 撮影)

クサギの花で吸蜜するクロアゲハ♀ 2/2(2024.9.1 撮影)

ブッドレアに来た翅がかなり傷んだミヤマカラスアゲハ♀ 1/2(2024.9.1 撮影)

ブッドレアに来た翅がかなり傷んだミヤマカラスアゲハ♀ 2/2(2024.9.1 撮影)

ブッドレアで吸蜜するカラスアゲハ♂ 1/2(2024.9.4 撮影)

ブッドレアで吸蜜するカラスアゲハ♂ 2/2(2024.9.4 撮影)

吸蜜の合間にモミの樹で休息するカラスアゲハ♂ (2024.9.4 撮影)

 9月に入り、ふたたびミヤマカラスアゲハが来るようになり、♀の姿も見かけるようになった。昨年は、♀チョウがキハダの枝先に産卵しているところを妻が目撃したので、容易に卵を採集できたが、今年はまだそうした機会もなかった。しかし、ミヤマカラスアゲハの♀が近くまで来ているので、どこかに卵を産んでいるのではないかとの期待もあり、キハダの枝先を丹念にみていくと4個卵を見つけることができた。

 昨年、卵を採集して室内で育てたものは蛹になり、さらに今年の春、無事羽化させることができたが、キハダの葉で幼虫(多分2齢)になっているところを見つけ、採集して育てたものは、すでに寄生バチに卵を産み付けられていたらしく、蛹にはなったものの、今年春には羽化することなく、蛹の殻に丸い穴をあけてハチが出てきた。

 こうした経験があったので、できるだけ卵を見つけるとすぐに採集し、室内で育てるようにしている。それでも見落としがあり、幼虫になっているものを見つけることもあるが、見つけ次第飼育ケースに移している。


採集した卵から孵化する様子(上から 2024.9.5, 9:03, 9:06, 9:09, 9:12 撮影動画からのキャプチャー画像 )


卵を採集し孵化させた幼虫(孵化直後 2024.9.14 撮影)


卵を採集し孵化させた幼虫(孵化後10日目 2024.9.14 撮影)

キハダの葉上にいた幼虫 A(2024.9.11 撮影)

キハダの葉上にいた幼虫 B(2024.9.11 撮影)

キハダの葉上にいた幼虫 C(2024.9.11 撮影)

キハダの葉上にいた幼虫 A(右)とC(2024.9.11 撮影)

 今年はまだ、♀チョウが産卵しているところを見ているわけではないので、得た卵や幼虫がミヤマカラスアゲハのものか、カラスアゲハのものかは判らない。昨年カラスアゲハを育てているので、今年はぜひミヤマカラスアゲハを飼育したいものと思っているが、卵はもちろんのこと、幼虫をみても2種のどちらか区別がつかないでいる。今、早いものは4齢になっているが、終齢になってみないと私には判定がつかない。その後も次々と卵や幼虫が見つかっていているが、ぜひこの中にミヤマカラスアゲハがいて欲しいものと思いながら飼育を続けているところである。
 
 

 




 





 
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庭に来たチョウ(30)メスアカミドリシジミ

2024-09-13 00:00:00 | 
 久々にゼフィルスが我が家の庭にやってきた。夕方、帰宅時にブッドレアの花の上を活発に飛び回っている1個体を目撃し、目で後を追っていると、傍らのカツラの枝先に止まり動かなくなった。カメラを取りに2階に行って戻ってきてもまだそのままじっと止まっていたので、撮影することができた。
 高い場所に止まっていて、翅裏しか写すことができなかったが、図鑑で調べてみて、メスアカミドリシジミだろうと判定した。

 いつもの「原色日本蝶類図鑑」(1964年 保育社発行)には次のように紹介されている。

 「日本全土に産するがいずれの地にも多産せず、近縁種の雌は多く翅裏の黒褐色なO型のものが多いが、本種の雌は他種のB型に類する翅端の橙色紋が大型で色もあざやかで、その雌の翅紋に因る名が、和名として、定められている。しかしこの美しい翅紋も近畿以西のものは暖地に向かって次第に小さくなり、中にはほとんど消失して名に反するものもあるが、それとは逆に中部以北は次第に橙色紋が大きく、北海道に産するもののごときは前翅のなかばにも拡大しすばらしい。
 本種の特徴は前翅雌雄とも裏面中室に現れる『短帯は明らかな白線でくまどられる』ことである。・・・
 従来コナラ・カシワと推定されていた食樹はエゾザクラ・オオヤマザクラなどであることが知られ、発芽の早いサクラによって本種が他のゼフィルスにさきがけ6月末から7月中旬に現れることもうなずける。・・・
 北海道では平地・山地、いずれも広く産し、関東・中部では山地各所に、近畿では滋賀・京都の山地にまれながら産するが、大阪府下には未だ発見されたことを聞かない。・・・」
 
 種の同定にはこの解説に示されている裏面中室に見られる短帯の形状とそのくまどりを参考にしたが、これはアイノミドリシジミとよく似ているので、翅裏だけでは迷うところである。



自宅庭に来たメスアカミドリシジミ 1/2(2024.8.10 撮影)


自宅庭に来たメスアカミドリシジミ 2/2(2024.8.10 撮影)

 今年は、もう1度このメスアカミドリシジミを見ている。小諸のMさんのバタフライガーデンを訪ねた時で、ガーデンから少し離れた場所にある、やはりMさんの畑地に案内されたときである。ここにはチョウの食樹となる数種類の木が植えられているが、この日はスミナガシの幼虫がいるというアワブキの木を見に行った。

 この時、近くの大きな木の枝先にチョウがいると妻に教えられて、超望遠レンズ越しに眺めてみると、ゼフィルスらしい姿が認められた。撮影した画像を帰宅後確認して、メスアカミドリシジミではないかと判定したのであった。
 
小諸のMさんの畑で見たメスアカミドリシジミ1 /2(2024.6.19 撮影)

小諸のMさんの畑で見たメスアカミドリシジミ2 /2(2024.6.19 撮影)

 メスアカミドリシジミを初めて見たのは弘前にアカシジミの大発生を見に行った時で、この時は渓流に架かる橋の上から見下ろす形で枝先に止まって、テリトリーを張る数種類のゼフィルスを見ることができた。

 翅表を撮影することができたので、その内の1頭が、その太い後翅の外縁黒帯からメスアカミドリシジミと判定できた。

弘前の山間地の渓流で撮影したメスアカミドリシジミ♂(2013.7.6 撮影)

 義父のコレクションにもメスアカミドリシジミが含まれている。よく似たアイノミドリシジミ、ミドリシジミと比べてみると次のようである。

標本写真(上から ミドリシジミ、アイノミドリシジミ、メスアカミドリシジミの♂)


同上裏(上から ミドリシジミ、アイノミドリシジミ、メスアカミドリシジミの♂)





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スカイツリーと花火

2024-09-06 00:00:00 | 日記
 2010年に、上越市から東京に転勤することになった時、会社が住まいを準備してくれることになり、事前に上京し、紹介された不動産業者と会った。

 勤務先は浅草橋駅近くにあり、できれば徒歩圏内に住まいを探してもらおうと思っていたが、ふと思いついてさらに2つ条件をつけ加えてみた。一つは建設中のスカイツリーが見えること、もう一つは隅田川の花火が見えることであった。

 こうした条件が満たされる物件が見つかるものかどうか判らなかったが、不動産業者からは条件に合った物件だということで3件紹介していただけた。2件は私の方が気に入らなかったので断ったが、残る1件は鉄筋のアパートの3-4階だったかと思うが、周りに建っているビルの隙間から何とか遠くが見通せて、スカイツリーも完成する頃には見えるだろうし、隅田川の花火も見えそうな場所だと思えたので、この部屋を契約することにした。

 しかし、しばらくして不動産業者から、大家さんの了解が得られなかったとの理由で断りの連絡がきた。何でも高齢の単身者には貸したくないのだという。ここにきていまさらと思ったが、文句を言っても仕方がない、この物件は断念し、別の住まいを改めて探してもらうこととなった。

 次に紹介されたのは高層マンションで、広い通りに面していて眺めも良く、上層階の部屋であったので、建設中のスカイツリーがよく見えた。花火が見えるかどうかは判らなかったが、不動産業者の話では、ここからなら間違いなく隅田川の花火を見ることができるというので、それを信じてここに決めた。

 住んでみると、窓から日々進んでいくスカイツリーの建設の様子が遠望できるので、定点撮影を思いついて、入居後すぐに窓際に三脚を据えて毎朝・毎夕写真を撮り始めた(2010.8.3~2011.2.8)。


窓越しに撮影したスカイツリー建設の様子(2010.8.3~2011.2.8 撮影)

 隅田川の花火の方は、スカイツリーとほぼ同じ方向に見えるはずであるというものの、実際のところは花火打ち上げの当日になってみなければ分からなかったが、重なり合うビルの上に、確かに打ち上げ花火を見ることができた。

 距離は3キロほど離れていたので、かなり遠く、残念ながら東京に来るまで住んでいた上越・高田の自宅から見た花火とは全く違っていた。それでも住まいの窓から、居ながらにして隅田川の花火を見ることができることに満足して、ビールを飲みながらの花火見物になった。動画撮影もしたが、紹介できるようなものは撮れなかった。

 その上越・高田ではどうだったかというと、花火を打ち上げる関川の河原から自宅までは800mほどの距離で、まさに目の前で打ち上げられる大輪の花火を見ることができた。ここに住んだのは5年ほどであったが、この間に2回花火を楽しむ機会があった。花火の打ち上げ場所が1年ごとに高田と直江津で交代するのであった。そのうちの1回は丁度訪ねてきていた父とビールを飲みながらの見物であった。

 考えてみると、私は結構花火好きで、子供の頃住んでいた大阪市南部の自宅から、16㎞ほども離れた富田林のPL教団が打ち上げる花火を見るのが楽しみであった。高所恐怖症気味の今では考えられないが、父と私は平屋の家の屋根に上って花火見物をした。

 就職してから移り住んだ本厚木では、相模川の河原で行われた花火見物に出かけたし、広島・三次時代には馬洗川・西城川・江の川の合流地点で行われる花火見物に出かけるのも欠かさなかった。鎌倉では由比ヶ浜の水中花火も大混雑の中を見に行った。

 定年後移住先に決めた当地軽井沢でも数カ所で花火大会が行われている。プリンス・ショッピングプラザでは夏だけではなくセールに合わせて打ち上げられている。この花火は自宅2階の窓から見ることができるが、一番大きくきれいに見えるのは駅前の矢ケ崎公園広場で打ち上げられる花火である。

 これはお盆の期間に新軽夏祭りの一環として行われるもので、同時に盆踊りや縁日・夜店なども催される。今年も第47回の夏祭りに花火大会が行われた。

 今年、2か月前にホタルの撮影に初めて挑戦し、何とか見られる写真が得られたので、いつもは眺めるだけの花火であるが、今回は撮影を思い立った。撮影条件はホタル撮影の時に調べてあったので、同じような設定にして、三脚を構えて撮影した。とりあえず撮影してみたという感じだが、次のようである。

 最近の花火は多彩な色と形で楽しませてくれるなと感じていたが、実際、撮影した写真を整理してみて改めてその思いを強くした。


赤い花火(2024.8.17 撮影)


黄色い花火(2024.8.17 撮影)


紫色の花火(2024.8.17 撮影)


青色の花火(2024.8.17 撮影)


橙色の花火(2024.8.17 撮影)


桃色の花火(2024.8.17 撮影)

緑色の花火(2024.8.17 撮影)

 花火の色は中高生の頃に習った金属種の炎色反応で決まるはずであり、記憶法が今も浮かんでくる。「リアカー無きK村、どうせ借るとするもくれない馬力」。これの意味するところは次のようである。

    *リチウム・・・・・・赤
    *ナトリウム・・・・・黄
    *カリウム・・・・・・紫
    *銅・・・・・・・・・青
    *カルシウム・・・・・橙
    *ストロンチウム・・・桃紅
    *バリウム・・・・・・緑

 今回見た花火には、ほぼこれら各種の色を見ることができた。そのほかにも同時に複数の色の混じっているものもあり多彩である。これらを一覧にすると次のようである。


多彩な花火の色と形(2024.8.17 撮影)

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