軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

チョウの楽園とバタフライガーデン

2021-11-12 00:00:00 | 
 私が小学生時代、夏休みの宿題と言えば、女子の植物採集や男子の昆虫採集が多かったように記憶している。その後、高学年になっていくにつれて、たいていの友達はもっとほかのことに興味の対象が移り、昆虫採集を続ける人は少なくなっていった。

 中学時代になると、私の周りにはもう昆虫採集を趣味にする友人はいなくなり、夏休みに捕虫網を持ってうろうろするのは私一人になっていた。この頃になると、昆虫の中でもチョウに特に興味を持つようになり、自宅周辺では飽き足らず、遠くに足をのばすようになって、南の方では二上山、葛城山、金剛山、北の方では箕面から勝尾寺の方にも一人で出かけるようになった。

 高校に入ると、生物クラブがあり、中にはチョウの研究をする人もいて、単に採集し、標本を作って楽しむといったレベルから一歩進む人も見られたが、私はそうはならなかった。むしろ次第に興味を失っていき、チョウ採集も標本つくりもやめてしまった。

 そのチョウに再び関心を持つようになったのは定年後のことであったが、これを後押ししたのは義父のチョウとガのコレクションに出会ったからである。

 埼玉県で眼科の開業医をしていた義父はチョウとガを採集し、それらを標本にして残している。標本箱の数にして60個ほどあって、半数にチョウ、残りの半数にガが収められている。チョウの数で言えばおよそ1200頭ほどになる。展翅された標本には義母が作ったというラベルがそれぞれ添えられている。

 義父が亡くなってからもしばらくは妻の実家に保管されていたが、私たち夫婦が軽井沢に移住することを決めた時に、すべての標本を引き取ることにして、今は専用の棚ごと我が家にある。

 標本箱のチョウはたまに眺める程度であるが、当地に来てすぐ庭にブッドレアの苗を植え、チョウを呼ぶ準備を始めた。採集するつもりはなく、もっぱら撮影を目的とし、植えて2年目からチョウがやってくるようになったので、撮影も順調に進んだ。ただしかし、今年は少し様子が違っていて、思うようにチョウが集まってくれなかった。

 さらに今年はショップや其の他の仕事で多忙になり、思うように遠出もできなかったが、9月になりようやく仕事にも余裕が出てきたので南軽井沢の撮影スポットに出かけてみた。

 しかし、今年はどういう訳かここにもほとんど蝶の姿がなく、ガッカリしながら帰路についたところ、いつも通っている道路わきの畑にフジバカマがたくさん植えられている一角があることに気が付いた。

 車を道路わきに停めて畑に近づき、フジバカマの傍らで老女が畑の手入れをしてたので聞いてみると、チョウを呼ぶために5年ほど前から植えているのだという。よく通る道路沿いにある場所であるが、いままで全く気が付かなかった。

 間際に寄って見ると、フジバカマには合計十頭ほどのアサギマダラがとまって熱心に吸蜜しており、その傍にはヒメアカタテハやキタテハの姿もあった。

 老女に許可をもらって畑周辺に立ち入らせていただき、しばらく撮影をしたが、聞くと多い日にはアサギマダラが群がって飛ぶ光景が見られるのだという。この畑には、この日の後にも訪れて撮影をした。

 このアサギマダラは数千キロメートルもの渡りをすることが知られるようになり、各地でマーキングが行われるようになっているが、この老女はただただアサギマダラを自分の畑に呼ぶことが目的のようであった。


南軽井沢のフジバカマの畑(2021.9.21 撮影)

フジバカマの畑に集まり吸蜜するアサギマダラ♂(2021.9.15 撮影)

フジバカマの畑に集まり吸蜜するアサギマダラ♂(2021.9.15 撮影)

フジバカマの畑に集まり吸蜜するアサギマダラ♂(2021.9.15 撮影)

フジバカマの畑に集まり吸蜜するアサギマダラ♂(2021.9.15 撮影)

フジバカマの畑に集まり吸蜜するアサギマダラ♂(2021.9.21 撮影)

フジバカマの畑に集まり吸蜜するアサギマダラ♂(2021.9.21 撮影)

 軽井沢には、ここのほかにもう1カ所、アサギマダラを呼ぶためにフジバカマを植えているところがあることを前から知っていた。信濃追分駅の南側にある「チョウの楽園」である。この日のことがきっかけとなり、この「チョウの楽園」にも行ってみようと思い立ち、数日後に出かけてみた。

 現地にはすでに数人のチョウ好きが集まってきていて、事務所で談笑したり、思い思いに撮影を楽しんだりしていた。ここは無料で開放されているが、訪問者は事務所前の台に備えられたノートに、住所と名前を記入するようになっている。また、会費を払って会員になるとここでアサギマダラを採集し、マーキングをして放蝶することができるというので、私たち夫婦は後日再訪して会員登録をし、その後しばらくの間撮影をさせていただいた。


信濃追分「チョウの楽園」事務所(2021.9.29 撮影)

信濃追分「チョウの楽園」のフジバカマ畑(2021.9.29 撮影)

信濃追分の「チョウの楽園」から浅間山を望む(2021.9.29 撮影)

信濃追分「チョウの楽園」のフジバカマで吸蜜中のアサギマダラ(2021.9.29 撮影)

 事務所の机の上には、会長のTさんが撮影したこの「チョウの楽園」に集まって来るアサギマダラをはじめとしたチョウを撮影したDVDと、会員の1人のTさんが出版した「フクロウ」、「日本リス」の2種の写真集も販売されていた。

 見本として置かれている写真集を見ると、素晴らしい写真の数々で、早速購入することにして、ちょうど居合わせた小諸在住の著者Tさんに写真集にサインをしていただいた。


軽井沢花咲山・蝶の楽園「蝶々編」DVDのケース写真


写真集「フクロウ」の表紙


写真集「日本リス」の表紙
 
 これまで動物を被写体として撮影してきたTさんであるが、最近はチョウにも興味をもち撮影をしているという。来月には上田のサントミューゼで5人の仲間で昆虫をテーマにした写真展をするということで、その案内をいただき訪問を約束した。

 しばらく撮影をした後、この日は御代田に別な用件があったのでそちらに向かった。

 この信濃追分の「チョウの楽園」も南軽井沢の老女の畑も、フジバカマを主体とするもので、主としてアサギマダラを呼ぶために計画されたものであるが、もう1か所、小諸にある「バタフライガーデン」をショップの顧客のNさんに教えていただき、別な日に案内していただいた。

 浅間サンラインから途中で分かれてしばらく北上したた場所、高峰高原の南側山麓に位置する糠地郷に着くと、Mさんが迎えてくださり、早速1500坪ほどあるというガーデンを案内していただいた。

 足元ではヤマトシジミが飛び回っていて、まだ秋の草花が咲いているガーデンにはモンキチョウ、キタテハ、ヒメアカタテハ、アカタテハとヒョウモン類の姿が見られた。

 ガーデン内には、アサギマダラを呼ぶためのフジバカマの畑ももちろん用意されていたが、その他にもオオムラサキを育てるため、エノキの木を取り込んでこれを覆うようにして作られた5坪ほどのケージ、ミヤマシジミを飼育するために食草のコマツナギを植えた温室のような小型の保育箱と、野外には同じくコマツナギ、ヤマキチョウの食草クロツバラ、アサマシジミの食草ナンテンハギなどが植えられており、住宅の周囲にはアゲハチョウ類の食樹であるカラタチ、キハダなども見られた。

 オーナーのMさんからいただいた名刺には、「糠地郷・蝶の里山会、ミヤマシジミ(絶滅危惧種ⅠB類)を守る会、標本展示室、バタフライガーデン1500坪」と記されていて、特にミヤマシジミの保護活動に力を入れている様子がうかがわれた。

 住宅の一角を改造して作った標本展示室も見せていただいた。ここには小諸周辺だけではなく、県内各地や国内の各地で採集したチョウの美しい標本が多数展示されていた。

 中には珍しい左右の翅に雌雄の文様が現れているモザイク雌雄型のゼフィルスの仲間も見られた。また、私たち夫婦がまだ直接見る機会がもてないでいるクモマツマキチョウ♂の標本も多数展示されていたが、聞いてみると、これらはMさんが3年にわたって累代飼育して得たものという。

 軽井沢の「フジバカマの畑」、「チョウの楽園」そしてこの小諸の「バタフライガーデン」は少年少女のころの気持ちを持ち続けたか、あるいは取り戻した大人たちが熱心に取り組むことで維持されているもので、その努力には敬意を表したいと思う。

小諸・糠地郷のバタフライガーデンに咲く秋の花(2021.10.20 妻撮影)

小諸・糠地郷のバタフライガーデンに咲く秋の花(2021.10.20 妻撮影)

 標高860mにあるこの糠地郷のバタフライガーデンからは、遠く秩父山地と八ヶ岳の間の低地部をとおして富士山が望めた。

標高860mのバタフライガーデンから望む富士山(2021.10.20 妻撮影)

 今季はチョウに出会う機会が少なく、やや寂しい思いをした私にとっては、チョウの撮影ポイントが増え、来年これを取り戻せそうな何より嬉しいできごとであった。

 


 

 


 

 



 

 



 


 
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