音楽上の「音」というのは縦と横に関係性をもって存在している。同時に2つ以上の音が存在する和声も同じだ。そのルールが和声学だ。音のもとになっている音波は自然現象なので、その自然現象によって発生する上音列にその秩序を支配されてしまう。上音列は上の方へいくと音程が詰まってきてどんな音も発生してくる。これではルールが成り立たない。なので、音楽を組み立てるときには6番目までを基本的には使うという考え方が定着している。でもそれでは音の種類が足りなくて豊かな和声が得られない。そのときの考え方として上音列の上へ上へ行くのではなくて使うことが許されてしる上音の上音を使うのだ。3度の5度上、5度の5度上という具合だ。倍音(上音)の聞こえる量は楽器によって違う。もっと細かく言うと奏者によって違う。どちらが音楽として良いか?という問題ではない。だから和音の「豊かさ」や「濁り度」を決めつけることは現実的にはできないのだ。その意味では音楽のルールは緩い。でもこの「緩さ」が音楽の多様性を生んでいるのだから、「緩さ」の原因や症状を細かく理解してそれを利用しないとレベルの高い音楽には到達しない。優れた音楽には必ずそういう微妙な駆け引きの部分がある。和声の世界は近代音楽が作り出した奥の深い世界なのだ。