ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

After You’ve Gone Ⅱ

2013-10-07 13:28:54 | Weblog
優位二声部の動きをみてみよう。コードとしてはサブドミナントからサブドミマイナーつまり基音から6度音に当たる内声が半音下行しているわけだけど、トップノート、つまりメロディーラインはルートの長7度音から長6度音に下がるというシンプルなものだ。そしてその形を全体に4度下げる。つまりトニックのコードでそれを繰り返す。当然トニックの次にⅥ7をつかってはいるが・・・。そして今度はまたメロディーは4度上がって頭と同じ高さに行く。そこではⅡ7、Ⅴ7を和声として使っている。そしてまた4度下がってコードはトニック、サブドミナントに戻るためのⅠ7、これで前半は終わり。つまり、この曲はかなりアカデミックな構造がもとになっていることがわかる。もちろん最初の二声部に長7度を使うのが20世紀のフィーリングではあるが・・・。やはりインプロヴィゼーションの素材になる、ジャズスタンダードになり得る曲はこのぐらいの筋が通ってないと生き残らない。即興演奏はそういう宿命なのだ。ゆっくり考えてる時間がない。すぐ反応するためにはミュージシャンは素材となる楽曲にそういう頼れるものを望んでいるということだ。じっくり考えるということは人間にとって絶対必要なことで、長い長い時間、考えぬいて人間はいろんなものを作ってきた。でもその基になる閃きは一瞬のもので、インプロヴィゼーションはその閃きを凝縮したものかもしれない。