夏目漱石の『三四郎』の読書メモ。今回は二章。
三四郎が東京でカルチャーショックを受けている。
「凡ての物が破壊されつつある様に見える。そうして凡ての物が又同時に建設されつつある様に見える。大変な動き方である。」
こんな激動が東京の現実なのだ。そこに孤独を覚える。
「この激烈な活動そのものが取りも直さず現実世界だとすると、自分が今日までの生活は現実世界に毫も接触していないことになる。(中略)自分の世界と現実の世界は一つ平面に並んでおりながら、どこも接触していない。そうして現実の世界は、かように動揺して、自分を置き去りにして行ってしまう。甚だ不安である。」
母親の手紙に知り合いの従妹が理科大学(今日で言う大学の理学部)にいるので頼りなさいとある。それが野々宮宗八である。野々宮は典型的な世間知らずの科学者である。現実世界とは縁がない生活をしている。三四郎は野々宮に会いに行き、その後、大学の敷地にある池で一休み。
岡の上に女性が二人。一人は看護婦。もう一人が鮮やかな着物を着た女性である。その女性に心がひかれる。その女性は白い花を持っている。三四郎の前を通り過ぎるときに白い花を落として行く。女が通り過ぎた後三四郎はその花を拾い池に投げ込む。花は池に浮かぶ。後でわかるのだがこの女性が美禰子である。三四郎はこの女に恋をするのだが、女性のほうがどう考えていたのだかは最後までよくわからない。この場面、ミスリードを誘っているようにも感じられる。
後で明確になるのだが美禰子は野々宮と恋愛していた。この場面も美禰子のそばに野々宮がいたという説もある。漱石は謎を散りばめながら話を進めて行く。