まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

面白きこともなき世を面白く

2009-09-01 19:18:21 | 幸せの倫理学
 面白きこともなき世を面白く

   棲みなすものは心なりけり

                 東行


この和歌は若い頃から気に入っていて、
高校の書道の授業で、自分の好きな歌を書けという課題を出されたとき、
迷うことなくこの歌を選びました。
東行というのは西行をもじってつけたペンネームだそうですが、
たぶんこれだけで誰のことかわかる人は少ないでしょう。
この歌を詠んだのは、幕末の志士、高杉晋作です。

私の高杉晋作に関する知識なんて司馬遼太郎の 『世に棲む日日』 とか、
武田鉄矢の 『おーい!竜馬』 くらいですので、
高杉の生涯に関してそんなに詳しいわけではありません。
吉田松陰に学び、農民たちを集めて奇兵隊をつくり、
天才的な采配によって幕府軍を破ったけれど、
肺結核のため27歳という若さで亡くなった、というくらいのことしか覚えていません。
その高杉の辞世の句がこれです。

『世に棲む日日』 には、高杉が詠んだのは上の句だけで、
下の句は看病していた尼さんがつけたのであり、
下の句はあまりいい出来ではないと書いてあったように思います。
しかし、私は下の句も含めて、
幸せになる秘訣が記されたいい歌だなあと気に入っていました。
客観的に言ったらこの世に面白いことなんて何にもないかもしれない。
しかし、心の側がそれを面白いものとして受け止めることができれば、
面白おかしくこの世を生きていくことができる。
そういう意味の歌として私は解釈していました。

高杉が上の句だけ詠んだときには、
受け止め方うんぬんみたいなことではなくて、
自分の力でこの世を面白く変えてやる!といった、
もっと積極的、主体的な意味を込めていたのかもしれません。
それはそれで同感できますし、私もそんなふうに生きたいと思います。
下の句も含めて、幸福というのは主観的なものであって、
自分の側の受け止め方、自分が満足するかどうかの問題である、
ということを詠った歌と解釈しても、
それはそれでいい歌ではないですか。
「若いのに君は達観していたんだねぇ、高杉君」 と言ってあげたくなります。

今とは時代がちがうけど、27の若さで散っていく彼が、
ここまでの境地に達することができたのです。
よっぽど恵まれた状況にいる私たちがそこに至れないはずはありません。
「面白きこともなき世を面白く」 生きてやろうではありませんか

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