まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

ポリティカル・コメディ 「チョイス!」

2011-02-04 16:10:39 | 教育のエチカ
「チョイス!」 という映画をあまり期待せずに借りて見たんですが、とても面白かったです。
政治を題材にしたコメディっていろいろありますが、
なかなかよくできたほうだと言っていいんじゃないでしょうか。
映画の冒頭から、civic responsibility (市民の責任) だとか、
social contract (社会契約) といった単語がバンバン出てきます。
選挙制度や民主主義についての授業作りをするときにひょっとすると使えるかもしれません。
極限的状況を設定してみて1票の重みを考えさせようという映画です。
若干説教臭いところがあるのはポリティカル・コメディとして仕方のないところでしょう。
でもそれがそんなに鼻につかず、むしろヒューマンな笑いと涙で見終わることができます。

主人公は、ケヴィン・コスナーが演じる、アメフトと釣りとバドワイザーをこよなく愛する、
典型的かつぐうたらで政治にまったく無関心なアメリカのダメオヤジです。
舞台は大統領選挙当日という設定なんですが、
彼は陪審員に選出されるのがイヤで有権者登録をしていないほどです。
「投票なんかに意味はない、何かが変わるなんて幻想だ」 というのが彼の主張で、
大統領選に誰が出馬しているかすら知りません。

その娘をマデリン・キャロルという子役が演じているのですが、彼女がサイコーです。
この子を見るためだけでもこの映画を借りる価値はあるでしょう。
家出してしまった場末の歌手の母親と、幼なじみにも解雇されてしまうほどダメな父親とのあいだに、
なんでこんなリッパな子が生まれ育ったんだろうと思うくらい、娘のモリーは優等生です。
親と一緒に大統領選挙に行きレポートを書くことという宿題を果たすため、
父親に代わって父親の有権者登録をすませておくほどです。
小学校の授業では 「投票はなぜ大事なのか?」 というスピーチをみんながするのですが、
彼女のスピーチはむちゃくちゃカッコいいです。

「文明がたどる道は常に同じ。
 屈従から自由へ、そして豊かさへ。
 充足の後には無関心が生まれ、再び屈従へと。
 この悪循環を断ち切るのです。
 過去に学ばぬかぎり歴史は変わりません。」

物語は、大統領選がものすごいデッドヒートで、共和党の現職大統領と民主党の候補が完全に互角、
けっきょく、投票機のトラブルやらなにやらで無効扱いになってしまい、
後日再投票をしなくてはならなくなった主人公の1票ですべてが決まるという展開になっていきます。
この映画、邦題は 「チョイス!」 ですが、原題は 「Swing Vote」 です。
swing には、「回転させる」 → 「向きを変える」 → 「決定的な影響力をもつ」 という意味があるようで、
「Swing Vote」 は 「勝敗を決する1票」 という意味になるようです。
その1票を獲得するために両候補が、自らの信念も党の基本方針も捨て去って、
彼ひとりのためのキャンペーンを張っていくというドタバタが描かれていきます。
しかし何よりも、父と娘の愛憎入り交じった関係の描写が秀逸で、
ダメで無責任な父親に辟易し心底嫌っていながらも、
父親を弁護するために涙ながらにスピーチする場面で見せるマデリン・キャロルの複雑な表情は、
必見だと言えるでしょう。
社会科、公民科の教員を目指している皆さんにはぜひお薦めいたします。


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