まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

年賀状への返信

2011-03-06 07:09:42 | 生老病死の倫理学
2月の終わり頃、年賀状への返信が届きました。
全文を引用させていただきます。

「かちかちに固まった庭の地面からスノードロップの球根の芽が出ているのに気づきました。
 厳寒というのに、春に向かっている植物のいのちを感じました。
 お賀状をありがとうございました。
 突然のお知らせとなってしまいましたが、古茂田宏は、昨年の12月16日に永眠いたしました。
 8月に肺がんとわかり5ヶ月間の闘病生活でした。
 これまでのご厚情に心から感謝いたします。
 四国松山に宏の実家があり、そこからすぐの所にあるお墓に眠ることとなります。
 もう少し暖かくなりましたら連れて行くつもりでございます。
 寒さが続きます。どうかくれぐれもご自愛くださいませ。
                                               2011年2月」

古茂田宏先生の奥様からのハガキでした。
古茂田先生とは1999年の日本倫理学会第50回大会で、
「20世紀―倫理学への問い」 という共通課題のもと、
「戦争と革命」 というミニシンポジウムの提題者としてご一緒させていただき、
それ以来、年賀状やお互いの業績をやりとりさせていただいていました。
年に1回、日本倫理学会の会場ですれちがうと挨拶を交わすというくらいのお付き合いでしたので、
がんを患っていらっしゃったことはもちろん、
12月にお亡くなりになったことも存じ上げないまま、
いつものように賀状をお送りしてしまっていたのです。

古茂田先生の年賀状にはいつも細かい字でびっしりと、
ご自分も含めご家族お一人お一人の1年間の様子が綴られていました。
それによって奥様がどんな方でいらっしゃるかというのもなんとなく伝わってきていましたので、
今回いただいた文面を読んだときも、素敵なご夫婦だったんだろうなあということと同時に、
突然の発病とご逝去にどれほど深く嘆き悲しまれたかということを、
静かに落ち着いた文章の向こう側に感じ取ることができました。

古茂田先生の数ある業績のなかでも、
『醒める夢冷めない夢 ―哲学への誘惑―』 という著書は、
とてもわかりやすく書かれた哲学入門書です。
哲学という懐疑の営みに誘って (いざなって) くれるとともに、
たんなる相対主義に陥ってしまうのではない希望の光も垣間見させてくれます。
古茂田先生のヒューマニスティックな熱いハートを感じることのできる好著だと思います。
哲学とは何かを手っ取り早く知りたいという方にはぜひお薦めしたいと思います。

まだ50代でこれからますますという時でいらっしゃったのに本当に残念でなりません。
古茂田宏先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。


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2 コメント

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願い叶わず… (ぢゅん)
2011-03-06 10:52:39
師匠が古茂田先生とつながっていたとは驚きです。
唯研のMLでその訃報は存じ上げていたのですが、まさか師匠との結びつきは思いつかず、お知らせすることもできませんでした。
古茂田先生は一橋大学でも「コモテツ」と呼ばれるほど人気の高い先生だったと周囲から聞いたことがあります。
『喫茶店のソクラテス』や『アーレントとマルクス』などのご著書も読ませていただいていましたし、何より僭越ながら『翼ある言葉』では共著者の名前の中にボクも一緒にを連ねさせていただきました。
一度お会いしていろいろなお話をお聞かせいただきたいなと密かに心の中で願っていたのですが・・・願い叶わずとてもとてもとても残念です。
会いたいと願う人にはすぐに会いに行かなければならないと、あらためて考えさせられます。
古茂田先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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ニアミス (まさおさま)
2011-03-07 23:40:18
それにしてもぢゅんちゃんが古茂田先生のことをご存知だったとは意外でした。
お互いそんな話を口にしたことはありませんでしたね。
私が古茂田先生と繋がっていたというと言い過ぎな気がします。
たぷん古茂田先生も私と繋がっていたとは思っていらっしゃらないでしょう。
ただまあ主観的な認識とは別に、客観的に年賀状で繋がっていたことは確かでしょう。
99年のミニシンポジウムでは、古茂田先生はアーレントの革命論に賛意を示しつつ、
社会問題に応じて革命を起こすことを否定するのは難しいのではないか、
と論じていらっしゃったことはなんとなく覚えております。
そこは私も賛同できましたし、アーレント批判の核心を突いている問題ではないかと思います。
アーレント問題を考え続け、論じ続けていくことが、
きっと古茂田先生に対する供養となるのだろうと思います。
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