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本の構造を明らかにしていく。
論拠・主張

論証=事例、引用。

経済危機。有事のリーダーシップを考える。 : reProfesional#156

2009-02-19 21:58:19 | reProfesional
八甲田山死の彷徨 (新潮文庫)
新田 次郎
新潮社

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ひとことでいうと、明治時代に日露戦争を前にして、本番での寒地装備・教育のために、八甲田山という山で日本軍の好敵手の2部隊が雪山で訓練を行うという話。

ひとつの舞台が徳島大尉率いる部隊。もうひとつが、神田大尉が率いる部隊。
それぞれの特徴を一言で言うと、徳島大尉が正当な身分の元、軍の中でいる若大将。豪快な性格で、戦うとき、勝負のときは徹底的に、仲間に規律を持たせ、一つのビジョンで集団を統率するタイプ。
上層部の意見にも、ロジカルというとどうかわからないが、断固として、自らの意志を通し、正しく、自らのビジョンを他のスペシャリストを信じ、ともに、目的を追行するようにもっていけるタイプ。
ある程度の強引さもある人物だが、統率力もあるという人物。

もう一人の神田大尉は、いわば現代でいうノンキャリアで、自身の努力で、軍の中での地位を築いてきた人物。感覚・精神論を嫌い、物象の軽視を嫌うというところまでは、徳島大尉とまったく共通するところまでは共通するが、どこかで、自らが、ノンキャリアであるということから、自らの意志を通すということに、遠慮があり、雪山訓練でも、現在の組織で言うと、彼が、このプロジェクトのプロジェクト長だとすると、彼の属する対の部長ともいうべき人物は、彼に絶大の信頼を託してはいるが、そこもうひとつしたの彼にとっての課長のような存在である、現代長に言うと、だめな中間管理職のミスジャッジにより、雪山訓練でも、課長が同行し、結果として大失敗になるという末路をたどることに。

神田大尉の課長が彼を信頼し切れなかった理由。それを著者は、徳島大尉の言葉として、けかとしては、神田大尉の劣等感が悲劇の原因であったとする。
劣等感を持った彼は、有事以外では、抜群の政治力と、組織内営業で、立身出世を成し遂げた。
しかし、有事に際しては、遅い意思決定、二頭支配体制を招き、彼を含めた百数名の組織を死の道へと追いやった。

一概に、徳島大尉のような、一頭支配、いわばワンマン的体制がよいとは、いいきれないであろうが、各個人が、断固たる方向性を持ち、それを事実に基づいて、組織内で判断し、軌道修正を行う。
リーダーシップ的要素を持とうと努力し、正確な判断を行う。
まさに、おそらく、神田大尉的そしき、政治が横行してしまうと、恐ろしい結果になってしまう。
今の時代にも非常に示唆に満ちた小説である。

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