がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

「本当の原発発電原価」を公表しない経産省・電力業界の「詐術」

2011年07月19日 | Weblog
Foresight掲載記事( URL http://www.fsight.jp/article/10620?ar=1&page=0,0&ar=1  )


著者


塩谷喜雄 Shioya Yoshio
科学ジャーナリスト
1946年生れ。東北大学理学部卒業後、71年日本経済新聞社入社。科学技術部次長などを経て、97年より論説委員。コラム「春秋」「中外時評」などを担当した。


※赤字強調は当ブログ管理人による。




「この国では、「安定した復興」とは元の黙阿弥のことを指すらしい。政治家たちの錯乱ぶりに隠れて、原発と電力の地域独占は何の検証も経ずに、今まで通りそっくり継続される気配が濃厚である。福島の事故が打ち砕いた原発安全神話に代わって、経済産業省と電力会社が流布するのはもっぱら原発“安価”神話だ。火力や水力に比べ原発の発電原価が断然安いという、架空の、妄想に近い数字が幅を利かせている。評価も監視も放棄した新聞・テレビは、今度も懲りずに虚構の安価神話をただ丸呑みして、確かな事実であるかのように伝え、社会を欺き続けている。日本経済が沈没するとすれば、その原因は原発停止による電力不足や料金高騰などではなく、行政と業界が一体となった利権と強欲体質の温存が主因であろう。


国民への「2重の恫喝」


 6月13日、経産省所管の日本エネルギー経済研究所が、停止中の国内原発がこのまま再稼働せず、稼働中の19基も順次停止した場合、その分を火力で賄うと、2012年度は1家庭当たりの電力料金が毎月1049円増えるという試算を発表した。電力需要がピークを迎える夏を前に、停止中の原発の再稼働が議論になり始めたタイミングで、あまりにもあからさまな再稼働応援歌であった。
 政策選択において、自分たちに都合のいい試算や見通しを、傘下の研究機関に出させるのは、経産省のいつもの手口である。今回は、単なる世論誘導にとどまらず、原発を止めたら電気料金は上がり、一方で停電の危機も増大するという、2重の恫喝を含んでいた。
 この発表を普通に受け止めれば、発電原価が安い原発が止まって、原価が高い火力で代替すれば、発電コストが上がって料金も上がるのは仕方ないと、納得してしまう。
 しかし、電力会社もそれを監督する経産省も、発電所ごとの発電原価を一切公表していない。何度も情報開示を要求されているが、「企業秘密」だとして、かたくなに公開を拒んでいる。どこの原発がどれくらいのコストで発電しているかが分からないのに、それを火力で代替するといくら原価が上がるのかをはじき出せる道理がない。
 だから、試算をいくら読んでも、なぜ標準家庭1世帯当たり月1049円上がるのか、論理的根拠が見つからない。書いてあるのは、原発の分を火力で賄うと、燃料費が新たに3.5兆円かかるので、その分を料金に上乗せすると、1kWh当たり3.7円、1世帯で月1049円増になるという計算である。
 火力の燃料費増加分をそっくり料金に上乗せするというのは、全く論理性を欠いている。もしそれが正当なコストの反映なのだとしたら、原発というのはいくら動かしても一銭もかからない存在で、コストはゼロだということになってしまう。コストゼロというのは大抵の場合は「大ウソ」である。



「モデル試算」という空想の発電コスト



 本来は、原発稼働時の発電原価と、それを火力で代替した場合の発電原価を比較しなければならないはずなのに、原発の発電原価を隠してごまかすために、追加燃料費の全額上乗せなどという目くらましの虚構を組み立てねばならなかったのだろう。
 こんなご都合主義の数字をご大層に押し戴いて、原発が再稼働しなければ日本は沈むなどと、国民や地元に誤った判断を迫った新聞・テレビの罪は重い。もしまっとうな批判能力があるなら、この試算が実は「原発は止められる」ということを、原子力利権ムラ自身が証明したものであることに、気づいたはずだ。燃料費だけを追加すれば、日本の全原発の発電量を、火力で十分に代替できることを、経産省が認めたのである。
 経産省と電力業界は、「本当の発電原価」は公開していないが、原発安価神話の源になった、ご都合主義の数字ならちゃんと出している。半可通のエコノミストなどがよく例に引く「モデル試算による各電源の発電コスト比較」というのが、2003年に電気事業連合会(電事連)から発表されている。
 これはモデルプラントという架空の原発が理想的に運転されたときの、空想の発電コストを示した「夢と幻」の産物である。現実の原発のコストを何も反映していないし、何も示していない。実体とは無関係だから、見せかけの原発のコストが下がるように、好き勝手な、恣意的な設定で計算している。法定耐用年数が16年の原発も、15年の火力発電所も、40年間無傷のまま動かしたとして、コストを想像してしまった。
 その豊かな想像力の産物が「1kWh当たり原子力5.3円、石炭火力5.7円、LNG火力6.2円、石油火力10.7円、水力11.9円」という数字になって、霞が関や大手町を大手を振って独り歩きしている。



電力会社自身の見積もりと激しく乖離



 この数字がいかに現実と乖離しているかは、電力会社自身が原発の設置許可申請の時に、経産省の電源開発調整審議会(現・電源開発分科会)に提出した資料を見ればよくわかる。それによると、日本の主要な原発の1kWh当たりの発電原価見積もりは、「泊1号機17.9円、女川1号機16.98円、柏崎刈羽5号機19.71円、浜岡3号機18.7円、大飯3号機14.22円、玄海3号機14.7円」となっている。5.3円なんて原発はどこにも存在しない。
 比較的原価見積もりが高い原発を列挙したが、1kWh当たりのコストが10円を切っている原発が2つだけある。大飯4号機の8.91円と、玄海2号機の6.86円である。それを考慮しても、どこをどうやったら、日本の原発の発電原価が5.3円などと言えるのか。
 きっと原子力利権ムラの提灯持ちたちは、こう言うに違いない。「電調審への申請数字は、初年度の原価見込みか、16年の法定耐用年数運転を前提にしたもので、40年耐用のモデル試算は別物で、比較しても意味はない」と。
 それでは、現実の原発コストとは何の関係もないモデル試算を、何のためにはじき出したのか。その理由を経産省と電事連には聞きたい。原発は安いという架空のイメージを植え付けるだけでなく、本当は原発が他の電力に比べて圧倒的に高い「孤高」の電源であることを、ひた隠すためのプロパガンダではなかったのかと。
 2003年のモデル試算には、核燃料サイクルのコストは全く反映されていない。その後、さすがにまずいと思ったのか、経産省も核燃料サイクルやバックエンド(放射性廃棄物の処理・処分)の費用を、少しは組み入れた。しかし、高速増殖炉の開発・運転費用や、再処理を委託した英仏からの返還廃棄物の関連費用などは除外し、廃炉費用も極端に安く見積もっている。



じつは断トツで高い原子力の発電コスト



 モデル計算ではなく、公開されている電力会社の有価証券報告書から、これまでの原発の発電実績と費用をもとに、原発の発電原価を計算したのが、大島堅一・立命館大学教授である。現在の発電原価に1番近いと思われるその数字は、原子力8.64円、火力9.8円、水力7.08円で、原発は決して安くない。
 需要の変動に合わせた柔軟な負荷変動運転が苦手な原発は、需要の少ない夜間も目いっぱい発電する。それを昼に持ち越すために、夜間電力を使って水を下から上にくみ上げ、それを昼に落下させて電気を起こす「揚水発電」をしている。これはいわば原発専用のサブシステムだから、1kWh当たり40円とも50円ともいわれるそのバカ高いコストを原発の発電原価に組み入れ、さらに電源立地の名目で地元懐柔策に投入されている膨大な税金も反映させると、発電コストは原子力12.23円、火力9.9円、水力7.26円になり、原子力が断トツで高い電源となる。 
 経産省や電事連の「試算」という名の発表が、大本営発表よりたちが悪いのは、経済成長の担い手としての、メディアからの盲目的な信頼を利用して、真っ赤なウソではなく、それらしい信頼性の意匠を凝らしていることだ。まさか、幹部のほとんどが東大卒の役所と会社が、詐術に等しい数字をもてあそぶはずはないと思ってしまう。モデル試算を現実と取り違えるのは受け手の方が悪いという、巧妙な逃げも用意されている。



環境問題でも示された経産省のあざとい試算



 その典型的な事例が地球環境問題でもあった。2009年8月5日、経産省の総合資源エネルギー調査会需給部会に、経産省から1つの試算が示された。お得意の試算である。経産省の試算インフレなどともいわれている。
 中身は地球温暖化防止の基本計画によるCO2など温室効果ガスの排出抑制策と、家計の可処分所得や光熱費負担の関係を、はじき出したという触れ込みだった。当時の自公政権の掲げた排出抑制目標は、2020年までに2005年比で、15%削減というものだった。それに対し、民主党は1990年比で25%の削減を主張していた。
 試算は両者が家計にどれくらい影響を与えるかを計算している。間もなく解散総選挙という時に、政権を争う与野党の環境政策の優劣を、一役所が比較してみせるという、かなりあざとい技だった。
 この試算をマスメディアのほとんどはこう報じた。「15%削減なら可処分所得は年に4万4000円減り、光熱費が3万3000円増える。25%削減だと可処分所得は年に22万円減、光熱費は14万円増える」。記事を読んだりニュースを聞いたりした人は、25%なんて削減すれば、これから毎年36万円も負担が増えると受け取ったに違いない。自公政権への露骨な応援歌である。
 事実、「家計を傷めて何が温暖化対策だ」という反応があちこちで聞かれた。この試算、今年6月の原発停止と家計負担の試算と同じで、奇妙奇天烈な想定でつくられている。2009年から2020年まで毎年1%以上の経済成長が続くと、20年には現在より家計の可処分所得は90万円以上増える。排出削減策を講じると、25%削減でも可処分所得は70万円ほど増えるが、何も策を講じなかったときに比べれば増加分が22万円少ないという話である。12年後に予想される可処分所得の増加分が、少々目減りするという程度の話で、無意味といってもいい。
 そんな数字を有難がって、排出削減を嫌う経産省や経団連の目論見通り、来年から毎年、家計の所得が22万円ずつ減っていくと触れまわったマスメディアの罪は重い。今年6月の試算と共通するのは、無理して虚偽を積み重ねているので、発表した経産省が自分の首を絞めている部分があることだ。25%減という大胆な排出削減を行なっても、経済は成長し、可処分所得は増えると、アンチ温暖化の経産省が認めているのだ。



大臣は使いっ走りか



 当時の経産次官であり、エネルギー官僚として地域独占の過ちを糊塗し続けてきた望月晴文氏が今、内閣官房参与として官邸にいる。本当に日本のエネルギーとして原子力が不可欠なら、安全性や経済性で虚構や欺瞞を重ねるのではなく、正直に発電原価も、隠された費用も明らかにして、国民に問うべきだろう。
 電力料金は「総括原価方式」で決まる。電力会社が社員の給与まで含めてかかった費用全部(原価)と、それに一定(現在は約3%)の報酬(利益)を上乗せして、電力料金収入とするのだから、絶対もうかる左うちわの地域独占である。現在時点での原価を、できうる限り明らかにするのは、電気事業者と監督官庁の契約者に対する義務だろう。
 E=mc2という質量とエネルギーの関係を示したアインシュタインの方程式は美しく、文明をエネルギーのくびきから解放する可能性を秘めている。実はその技術的な可能性を奪っているのが、嘘や騙しや脅しで、人をたばかろうとする利権集団ではないか。血税も含めて巨費を投じた原発には、必要な安全策をしっかり施し、ちゃんと働いてもらうべきだと思う。老朽原発は廃炉にして、原発最優先の歪んだエネルギー政策から、徐々にフェードアウトを目指すべきだろう。それに関するシナリオは既にいくつも提案されており、経産省の原発固執路線よりはずっと現実的なものがある。
 それにしても、九州電力の佐賀県・玄海原発の再稼働で、海江田万里経産相は、国が安全を保証すると言ったそうだが、どうやって保証するのか。国が原子力の安全を保証するのは、行政庁の審査と原子力安全委員会の審査の「ダブルチェック」を受けた場合である。安全委が安全指針の見直しをすると言っている時期に、行政が指示した安全策も途中でしかない玄海原発の安全を、国が保証できるわけがない。それが日本の法制度なのだ。海江田さん、東電本社に日参しているうちに、すっかりムラの住人になってしまったようだ。大臣が役所や企業の使いっ走りをするのは、あまり見たくない。」



米倉経団連会長「がれき処理のスピード遅い」 被災地視察で

2011年07月19日 | Weblog
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110713/biz11071313080008-n1.htm



「米倉弘昌経団連会長は13日、宮城県仙台市を訪ね、東日本大震災後、初めて被災地を視察した。

 米倉会長は、「復旧復興に向けての取り組みや早期復興にどんなことが必要か話を聞きたい」と話し、仙台塩釜港の高砂コンテナターミナルや市内の住宅地、キリンビールの仙台工場を視察。「まず必要なのはがれき処理だ。これから気温が高くなって衛生上も具合が悪い」と指摘し、「阪神淡路大震災のときに比べ、(がれき)処理のスピードが遅い」と苦言を呈した。

 また、「苦しい状況におかれている被災者を考えると、国や自治体はもっとリーダーシップを発揮すべきだ」とも話した。

 米倉会長は、「経団連としては街づくりで復興に協力するほか、要請すべきことは国に要請していく」と決意を新たにしていた。」



4ヶ月以上経って、1回行ったぐらいで「政府に注文する」みたいな真似してもらいたくないよね。



震災9日後に、自分でトラック乗って福島に救援物資運んだエガちゃんの方がよっぽど立派。



「阪神淡路大震災のときに比べ、(がれき)処理のスピードが遅い」なんて言うけど、阪神淡路大震災では、津波もないし、原発事故もないし、比較は出来ないよね。



側溝にたまった汚泥を50cm片付けるだけでも1日かかるって言うんだから、そう簡単に復旧とはいかないよ。



自分が先頭に立って、住友化学の社員使って汚泥除去、がれき除去でもやったらいいんだよ。



自分も汚泥処理・がれき処理をしに行ったわけではないからあまり偉そうなことは言えないんだけど、米倉は、これまでの発言も考え合わせると、本当に岩手・宮城・福島の人達のことを考えているようには見えないんだよね。



政権批判したいがためだけに発言しているようで。そこが非常に不愉快。



年金運用、10年度は2999億円の赤字

2011年07月19日 | Weblog
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110706-OYT1T00861.htm



「公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は6日、2010年度の運用で2999億円の赤字が出たと発表した。

 単年度の赤字はリーマン・ショックの影響で約9・3兆円の巨額損失を出した08年度以来、2年ぶり。収益率はマイナス0・25%で、国内株式(1兆3342億円減)と外国債券(7167億円減)が低迷したのが主な要因とみられている。

 10年度末の運用資産額は、運用損失と年金給付のために取り崩した6兆4505億円などを合わせ、09年度末比6兆5254億円減の116兆3170億円だった。運用を開始した01年度から10年間の累積収益額は11兆3894億円となった。

 運用資産の構成割合は国内債券66・59%、国内株式11・53%、外国株式11・26%、外国債券8・11%――などとなっている。(2011年7月6日19時48分 読売新聞)」



こんな、GPIFの言い分をそまま載せるしか能がないのかと改めてガッカリする。特に、「運用を開始した01年度から10年間の累積収益額は11兆3894億円となった」の部分は、GPIFが存続する意義を強調するようで醜悪。



10年間で11兆3894億円の収益というが、運用なんかしないで150兆の金を全額国債の償還に充ててしまっていれば、その後の国債の利子負担分を免れられたし、GPIFの連中の人件費も、委託している信託銀行等への手数料も払わずに済んだ。それら全て合わせれば、11兆は遥かに越えるし、財政の健全性も高まる。



なぜそうしないのかは簡単で、GPIFの連中が巣食っているということはもちろん、財務省(大蔵省)からすると、国債が100兆単位で償還されて債務残高が減ってしまえば、消費税増税が出来なくなってしまう。そんな下衆な思惑から、賦課方式で、積立金なぞ1円も要らない我が国年金制度において巨額の積立金が積み上がることになる。



再三再四言っているが、現在の高齢者の方々に支給されている年金は税金と現役世代の保険料負担により賄われている。積立金なぞ全く必要ない。



年金積立金は、GPIF・財務省の掴み金。



くだらねえな、まったく。




年金積立金【ねんきんつみたてきん】 知恵蔵2011の解説




厚生年金と国民年金の保険料のうち年金の支払いに充てられた残りの部分で、積立金として積み立てられた資金のこと。その運用益を今後の年金給付に充てることで、将来世代の負担が過大にならないようにしている。以前は、全額が旧大蔵省の資金運用部に預託され統合運用されると同時に、年金福祉事業団がその一部を借り入れて市場運用していた。しかし2000年の財政投融資制度改革で、01年度に年金資金運用基金が設立され、厚生労働大臣が直接運用する仕組みになった。06年には年金積立金管理運用独立法人が創設され、法人の理事長が運用方針を決めることになった。積立金の総額は、05年度末で約150兆円。運用実績は8兆6811億円の黒字で過去最高。財政投融資資金預託分の運用実績1兆1500億円を合わせた総額は9兆8311億円だった。同独立法人の累積損益はプラス8兆4697億円で、財政状況は大きく好転した。社会保障審議会の年金資金運用分科会は03年3月、今後も株式と債権を組み合わせた分散投資が妥当との意見書を出した。財政投融資資金への預託金は08年度に全額償還される。
( 梶本章 朝日新聞記者 )





http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201107060091.html



GPIFの10年度運用利回りマイナス0.25%、国内株と外債が不振

2011年7月6日22時55分


「[東京 6日 ロイター] 公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は6日、2010年度の運用利回りがマイナス0.25%になったと発表した。
 09年度のプラス7.91%から大幅に悪化、2年ぶりにマイナスに転じた。国内株式の大幅下落や年間を通した円高に加え、外国債券の収益率悪化などが背景。

 GPIFは11年3月末運用資産額116兆3170億円で、世界最大の年金基金。この資産額はカナダの実質国内総生産(GDP)を上回る規模。10年度の総合収益額(運用手数料控除前)はマイナス2999億円となり、09年度のプラス9兆1850億円からマイナスに転じた。自主運用を開始した01年度から10年度までの累積収益額は11兆3894億円。特別会計が保有する積立金も含めた年金積立金全体では、累積収益額は22兆6000億円。

 資産別の収益率は、国内債券(市場運用分)がプラス1.95%、外国株式がプラス2.18%と底堅かったが、国内株式はマイナス9.04%、外国債券がマイナス7.06%と不振で、全体の足を引っ張った。また円が対ドルで約11%、対ユーロで7%上昇したことも外貨建て資産の運用に響いた。

 3月11日に起きた東日本大震災については、「震災から3月末までに国内株式が下落したため、最終的な年度のパフォーマンスにもマイナス影響を及ぼした」(GPIFの大江雅弘審議役)という。

 <国内債と外国株を売却> 

 GPIFは、08年度までは財政融資資金預託金の償還に伴う新規マネーの流入があったことで市場では「買い手」の立場だったが、08年度に預託金償還が終わり、09年度からは「売り手」に転じている。発表資料によると、10年度は市場運用分の国内債券売却を4兆3685億円実施。また、初めて外国株式の売却も実施し、その額は4050億円となった。10年度の資金回収額は合計で7兆4117億円。

 会見した大江審議役は、外株の売却理由については「(資産を)売ることはGPIFのポートフォリオにも影響する可能性があるため、マーケットに影響しないよう静かに売っていくのが基本。その時々の状況を見ながら毎回判断している」と述べるにとどめた。

 今後の資産売却に関して、GPIFの三谷隆博理事長は6月、ロイターに対し、12年度の年金給付のための資産売却(キャッシュアウト)が「11年度並みになる見通し」を明らかにしていた。11年度については6兆4000億円程度の資金の取り崩しが計画されている。

 なお財投債を含めた運用資産の構成は、11年3月末で国内債券66.59%、国内株式11.53%、外国債券8.11%、外国株式11.26%、短期資産2.51%。

 「運用成績が低迷を続けている日本株の運用を見直さないのか」との問いに対して大江審議役は「われわれは長期的な観点から運用している。マーケット環境が大きく変わった場合はそういう見直しもあるが、今はそのように(環境が変わったとは)認識していない」と述べた。

 (ロイターニュース 岩崎成子 程近文 大林優香;編集 田中志保) 」



厳しい時代に生き残るには 経済アナリスト 森永卓郎

2011年07月19日 | Weblog
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20110628/275731/  



民主党「鈍カン政権」に任せると危険! 震災復興への寄付が足りないなら、金融資産課税を考えるべきだ



2011年 6月28日



「大震災復興支援のための寄付が着々と集まりつつある
 

 東日本大震災の復興支援のための寄付が着々と集まっている。

 日本赤十字社に集まった義援金の総額は5月24日現在で2066億円に達した。他の団体に集まったものを加えれば、3000億円を超えるだろうから、すでに阪神大震災のときに集まった総額を上回っている。

 震災向け寄付には大きく分けて3つの種類がある。

 1つは「義援金」と呼ばれるものだ。日本赤十字社や「赤い羽根募金」で有名な中央共同募金会が集める「義援金」がその代表例。新聞社やインターネットのポータルサイトなどで集めているお金も、その多くが義援金として日本赤十字社などに寄付される。

 義援金は被災者に対して直接お金を渡す。当面の配分基準として、住宅全壊・全焼・流失、死亡、行方不明者は35万円、原発避難指示・屋内退避指示圏域の世帯は35万円となっている。



震災でクローズアップされた「ふるさと納税」と「支援金」
 

 2つめは被災した県や市町村に寄付するやり方だ。いわゆる「ふるさと納税」の仕組みを活用するもので、寄付金は自治体が復興事業に使ったり、義援金として被災者に現金を直接渡したりする。総務省のウェブページで寄付を受け入れている自治体の一覧がある。

 3つめは被災者を直接支援する事業にお金を出すものだ。「支援金」と呼ばれ、この分野の寄付金控除は4月の税法改正で大幅に拡充された。具体的には「指定寄付金」として財務省が指定した認定特定非営利活動法人(NPO法人)などへの寄付が対象となる。

 中央共同募金会も従前の義援金とは別に、ボランティア団体やNPOに行き渡る「支援金」を集めており、税が大幅に優遇される。

 今回の被災地支援の特徴は、通常の義援金のほかに「ふるさと納税」や「支援金」の利用が増えていることだ。



急激に増えたふるさと納税
 

 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県のふるさと納税の受付額は、3月だけで2009年度全体の40倍を超える約3300万円に達した。4月の申込件数は1千件を超え、金額は6千万円を超えているという。

 震災で親が亡くなったり行方不明になったりした震災孤児の支援で、ふるさと納税を活用するのは岩手県。4月1~28日の申込総額は2009年度実績の約45倍となる約2500万円になった。特に首都圏在住者からの申し込みが増えているという。震災孤児を支援したいとの申し込みも多数あることから、県は孤児向けにふるさと納税の受け皿となる特別基金を創設する。

 福島県も大震災発生後、3月だけで211件、1223万円を受け付けた。4月に入って件数はさらに増え続けており、6千万円を超えている。

 インターネットを使って手軽に申し込めるサービスが定着してきたことも、ふるさと納税の利用を後押ししている。

 ヤフーは運営サイトを通じてクレジットカードでふるさと納税ができるサービスを提供している。2010年の利用件数は約4500件だったが、2011年は1~4月で東日本大震災の被災地を中心に既に約2千件の利用がある。同社は「被災地を支援する身近な方法として広がっている」とみている。



ネットを通じた義援金集めが大きな成果をあげている
 

 今回の大震災ではネットを利用した義援金集めが大々的に行われ、大きな成果を挙げている。

 その中で「マッチングギフト」というキーワードが登場した。これは、個人からの寄付に対して、寄付金を受け付けた組織が一定の比率で上乗せするという寄付方式のこと。同額を上乗せするというケースが多いようだ。

 震災発生翌日の3月12日にソーシャルネットワーキングサービス「mixi」を運営するミクシィが同方式を使った義援金を募集し始めるなど、多くの企業がマッチングギフト方式による義援金集めを展開している。

 義援金を寄付する個人から見れば、自分の寄付金よりも多くのお金が寄付対象組織に届くことになって嬉しいだろうし、寄付を呼びかけた企業にとっても、マッチングギフト方式を採用したことでより多くの寄付金を集められれば大きな社会貢献になる。義援金集めにマッチングギフト方式を採用する企業は今後も増えそうだ。



震災後数日間で10億円以上も集めたヤフー
 

 インターネットで義援金を集めることのメリットは何といっても「速さ」と「手軽さ」である。いまや多くの人がインターネットで買い物をしているが、そうしたインターネットショッピングと同様の手軽さですぐに義援金を送ることができる。

 ヤフーが運営するポータルサイトのYahoo! JAPANでは、震災発生後1週間も経っていない3月17日の時点で、68万人を超えるユーザーから10億円以上の義援金が集まった。

 ネットを使った義援金募集では、ユニークな取り組みがいくつもある。

 例えば、義援金を直接寄付する代わりに、ブログで被災地を応援する記事やメッセージを書いたら、その報酬を義援金として寄付できるという取り組みだ。また、Twitterでメッセージをつぶやくだけで募金ができるというプロジェクトも登場している。

 ネットを使った義援金集めは、ストレートにお金を集める方法だけでなく、ちょっと変わった取り組みもアイデア次第で比較的容易に実現できる。多くの義援金は最終的に日本赤十字社や現地の災害対策本部に届くのだから、集める手段はいろいろあっていい。



寄付しやすい税制改革を
 

 東日本大震災を機に広がるこうした善意をどう育て、息の長い支援につなげていくか。 寄付をしやすくするための有力な手立ては、まず税制だ。

 個人がふるさと納税で自治体に寄付をしたりした場合は、そのうちの一定額を税金から直接差し引く「税額控除」が住民税に適用される。

 かたや、特定非営利法人(NPO法人)に支援金を寄付する場合は扱いが窮屈だ。震災関連の税制特例法では従来より控除を広げたが、期限や細かな条件が付く。対象の「認定NPO法人」は、全国約4万のNPO法人のうち200ほどしかない。

 ただ、ここにきてにわかに国会で改革が動き出した。認定NPO法人になる手続きや条件を緩和するNPO法改正案が衆院を通過し、近く成立の運びだ。認定法人へのどんな寄付でも税額控除で優遇する新制度も実現する見通しという。

 寄付をする市民のなかには、自分が評価する団体に直接お金を渡したいと考える人も多いだろう。震災後の日本は、NPOが新しい力として役割を増す。それを大きく育てるためにも、新しい仕組みをうまく使って善意を社会化、組織化したい。

 しかし、一番の問題は、日本赤十字社などを含めて、義援金などの寄付金には、税額控除は適用されず、所得控除しか適用ないということだ。しかも、その年の総所得金額の40%までという限度額がある。これでは、高所得層の義援金に制約がかかってしまう。少なくとも、所得控除の限度額は撤廃すべきだろう。



個人の寄付はまだ少ない
 

 震災で生まれた連帯の輪は広がりつつあるが、それでも復興のために十分な金額だとはとても言えない。東日本大震災の被害額は、16兆円から25兆円と推計されており、それと比べると義援金総額は二ケタも小さいからだ。

 もちろん、大きな寄付をした人はたくさんいる。最も有名になったのは、100億円を寄付したソフトバンクの孫正義社長だろう。売名であろうが、何であろうが、私は義援金を出した人の方が、出さない人よりずっと偉いと思う。

 孫社長は大金持ちだから出せるんだという意見もあるが、実はこの金額は資産額を考慮しても大きいのだ。6800億円と言われる孫社長の個人資産のなかで、義援金の100億円は、1.5%を占めている。一方、これまでの義援金総額が、日本全体の個人金融資産1400兆円に占める割合は、わずか0.2%に過ぎないのだ。



寄付大国アメリカとはいまだに雲泥の差
 

 もちろん、海外、特にアメリカでは、普段から日本より高水準の寄付が行われている。

 例えば、ハーバード大学には寄付金を蓄積して作った2兆8000億円もの基金がある。ハーバード大学では、この基金から得られた収益で世界最高水準の教育や研究を行っているのだ。日本の大学が、なかなかハーバード大学に勝てないひとつの理由は、この圧倒的な財政力の差なのだ。

 これだけ大きな基金が作れるのは、アメリカに寄付文化が根付いているためだ。アメリカの年間の寄付総額は2000億ドルと言われる。個人金融資産に対する寄付総額の比率は0.44%だから、1400兆円の個人金融資産を持つ日本人がアメリカ人と同じような行動を取ったとしたら、年間の寄付額は6兆2000億円に達する。

 しかも、0.44%というのは、平時の話だから、東日本大震災のような国難のときには、もっと大きな寄付があってもよい。日本人全員が、孫正義氏と同じように金融資産の1.5%の義援金を出したら、21兆円が集まることになる。復興資金の大部分が、義援金で賄えてしまうのだ。



金持ちの金融資産に課税せよ
 

 問題は、日本の金持ちがケチだということだ。孫社長のような篤志家はまれで、金持ちは自発的に大きな寄付をしない。

 だったら、ここは震災復興を大義にして、個人金融資産に一律1.5%の税金をかけたらどうだろう。消費税と違って経済弱者を痛めつけないし、景気への影響も限定的だろう。課税対象の大部分が、金持ちの持つ遊休資金になるからだ。

 政府は、復興財源を所得税、法人税の引き上げに求めるようだが、私は金融資産課税のほうがずっとよいと思う。

 なお、こうした文章を書くと必ず「おまえは寄付したのか?」という質問が出るので、あらかじめ書いておこう。東日本大震災に私が出した義援金は、個人金融資産に対する比率で、アメリカの0.44%よりはずっと大きいが、孫社長の1.5%には届いていない。私はその程度の人間だ。 」


「隣は詐欺師」--ついに来た「すぐそばに詐欺師」の時代

2011年07月19日 | Weblog
2011年07月06日 17時33分12秒

URL http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20110621/275005/  



作家 夏原武
2011年 6月23日



「痩せる」「元気になる」「アトピーやガンが治る」でカモが入れ食い。――健康食品詐欺の背景に、「3種の悪党」あり。



「健康食品・サプリの陰に「悪党」がてんこ盛り
 

 この世に怪しげなものはたくさんある。

 代表的なのは霊感を謳い文句にする宗教、そしてマジックのような効能を謳う健康食品やサプリメントの類だ。最近ではこれにまるで科学的根拠のないホメオパシーまで加わって、やっかい極まる状態になっている。

 健康食品というのは米国で言うダイエタリー・サプリメント系の奴。アメリカでは医薬品が高価なため、サプリメントを利用する人が多く、消費量は莫大。日本でも近年サプリメントを摂取する人が増加していて、巨大な市場を形成している。

 効果があるかどうかは別に、「毒でない」限り、摂取して悪いわけではない。しかし、よく背景を調べないと危険なのもたしか。

 つまりはっきり書けば、この手の商売に関わる会社や人間には、悪い奴が見え隠れすることがけっこうあるからだ。

 たとえばバナバ茶という健康茶では、すでに詐欺(及び組織犯罪処罰法)で懲役18年の判決を受けた大神源太率いるジーオーグループがあった。朝のワイドショーの生CMにも登場し、派手に展開していたが、実態はなんのことはないマルチ商法に過ぎなかった。

 筆者の後輩にも「塗るだけでバストが大きくなるクリーム」を扱っていた奴がいる。部屋に行くと段ボールが山積みになっていたが、むろんインチキ商品で、マルチであった。さんざ説得したのだが「これをやっている人は夢を叶えている、俺も叶える」の一点張りであきれたことを覚えている。



ダイエット関連はインチキ商品の山
 

 この手のインチキ商品でロングセラーかつベストセラーといえば、とにもかくにも「ダイエット関連商品」になる。

 この分野には大手製薬メーカーまで参戦しているわけだが、そのこと自体、インチキ商品を売りさばく悪党どもの権威付けに使われている始末だ。

 実際、直接的に体重を減らす効果があるわけではなく、おおむねどの商品にも「適切な食事や適度な運動と併用することで効果が出る」と但し書きがついている。食事制限して運動すればサプリなど飲まなくても痩せる。つまり早い話、普通に生活していても同じことという「欺瞞そのもの」だ。

 エビデンスのある医薬品もある。たとえば肥満治療用の食欲抑制剤。これはとても危険なもので、個人輸入で利用して死者が出ている。筋肉増強剤や成長ホルモンも同じことで、治療目的で医師が処方する以外での使用は論外である。

 なぜ悪党どもがイカサマサプリに群がるかだが、もちろん原価が安いものを高額で売れるからだ。くれぐれもダマされないようにしたい。



サプリを売る「3種の悪党」
 

 こうした「インチキサプリ」、最近では手法がますます複雑化している。大きく分けると、カルト商法・バイブル商法・セミナー商法の三つに分かれている。 

 カルト商法というのは、「科学的根拠がありそうな」論を展開するのが特徴。もちろん科学的にはでたらめ。

 新たな発見から画期的な論理が生まれたとか、タキオンやら素粒子やらといった、一般になじみのない言葉を多用する。外国の雑誌に掲載されたと誌面を見せることもあるが、それは科学雑誌ではなく、しかも掲載といっても広告だったりするからタチが悪い。

 ただしなにしろカルトだから、カモが信じてしまうと、親や友人といった第三者が翻意させるのが難しい。

 バイブル商法は、日本で特によく見られる手口。広告にまでこの手法が使われているのが特徴。

 簡単に言うと、自分が売りたい健康食品などが「いかに効果があるか」デタラメを書きまくった著書を発行し、その著書をバイブル(聖書)として宣伝に使うというもの。

 活字信仰は根強く、「出版で信用度が高くなる」ところを狙っている。



「本の宣伝」を言い訳に「○○でガンが直る」と宣伝しまくる悪党
 

 健康食品の広告には、薬事法や広告規制に引っかからないためか、「○○でガンがみるみる小さくなる」などと書いていても、「これは書籍の広告です」「DVDの広告です」といった断りを入れていることも多い。

 その背景にあるのが、「○○健康法」「○○でガンが治った」「○○ダイエット」といった類の、大手出版社までもが恥知らずにも出し続けている「トンデモ本」であることは間違いない。

 カモにならないためには、大手であっても売れることが第一という現状、また出版担当の編集者に科学的・医学的知識があるとは限らないという現実を背景に、トンデモ本を出しているという事実を忘れないことだ。

 最後のセミナー商法だが、人を集め、そこで徹底的に洗脳してしまう。早い話、マルチ商法の手口だ。

 最初から「健康食品販売」とは言わず、まったく別のタイトルでセミナーを開くことも多いので、参加してから気づくことになる。洗脳は長時間拘束し、同じことを繰り返すという催眠状態を生み出すようなものだから、耐性のない人だところっと騙されてしまうことになる。

 悪党どもは、カモの言い訳など先刻承知。「金がない」だの「親に相談する」だの言っても、全部反論が返ってきてカモを追い込んでいく。



悪党繁栄を導く「でたらめテレビ番組」
 

 こうした状況を支えているもうひとつの要因が「テレビである」ことは、よく指摘されている。

 そもそも、たったひとつの食品で健康になるといった紹介がどれほど危険なものであるかは、専門家からたびたび指摘されていることだ。毎度毎度、ココアや納豆が売り切れるといったバカ騒ぎを起こしても恥じないのにはあきれる。

 たしかに現代は昔と食生活が変わっているため、栄養素の摂取も変化してきている。鉄のフライパンを使わない家庭も多いだろう。

 不足した栄養素をサプリメントから摂取するというのは、わからなくはない。

 だが、サプリメントで「すべてカバーできる」というのは、愚かな考え。飲むだけで健康になれるという錯覚からか、万能意識まで生まれているのが危険。こうした志向を近年の健康ブームが後押しし、結果的には詐欺師が喜ぶ展開になっている。

 実際の悪党の声を聞いてみた。



「とにかく大げさなほうが売れる」と悪党談
 

 「できるだけ劇的な変化が出るとやったほうが売れる。後は権威付けが肝心で、特に海外の研究機関だの大学だのってついていると、それだけで違う。信じてくれたなら、後は販売側に回ってもらえば、新規のカモを連れてきてくれる。簡単にマルチができる」(元健康商品系マルチ幹部)

 彼が手掛けているインチキ商品は、コンプレックス商法と美容・健康をまぜこぜにしているのが特徴だそうだ。痩せる・きれいになる・元気になるの三つがキーワードだという。

 彼は主に女性をターゲットにしており、これら健康商品詐欺で大儲けをしてきたというが、最近では男性向けも増やしているそうだ。

 「男に売るのは、毛髪と下半身向けだよ」(同)

 ミノキシジルの登場で、男性型脱毛に対する科学的治療ができるようになった。だが、インチキ系はもっと大胆。

 なにしろ「すぐにフサフサする」とか「これでシャンプーするだけで毛が太くなり、産毛が出てくる」などと煽ってくる。

 そして下半身。これも、実はバイアグラなどのED治療薬の登場を利用しているのだ。もちろんED治療のほうは科学的効果が実証されている。

 詐欺のほうは違う。なにが違うかというと、「大きくなる」効果を謳っている。



「コンプレックス商法」で、カモが入れ食い
 

 もちろん外科手法以外で大きくなるはずもなく、クリームにメンソールを混ぜて刺激を与えているだけ、といった粗雑な商品も多い。コンプレックスでカモを釣るわけだ。

 健康食品関連では摘発されたケースも多く、逮捕者も多数出ている。マルチ商法であることから捕まることもあれば、出資法違反もある。さらには薬事法違反も目立つ。

 中でも「ガンが治る」の類は実に多く、アガリクスやらクロレラやら、枚挙にいとまがないほどだ。

 これら病気につけ込むのはもっとも悪質な詐欺であり、アトピーもその代表のひとつ。医師の真面目な治療を拒否し、ホメオパシーや偽薬に走ってしまう人も珍しくなく、症状を悪化させているケースも多い。

 と、ここまで書くと、中には「いや、私には効いた、治った」という人もいるだろう。もちろんそういう例があっても不思議ではない。それはプラシーボ効果という奴で、人間の自然治癒力が働いたに過ぎないのである。



プラシーボで知人におせっかいの「愚」
 

 問題なのは、単なるプラシーボであるにもかかわらず「私は治ったからあなたもこれにするといい」といった親切に見える悪質なお節介が発生することだ。

 真面目に食や健康を考えるのなら、真面目な知識を得なくてはいけない。たとえば、高橋久仁子の「フードファディズム―メディアに惑わされない食生活」(中央法規出版)などの良書もある(この方の著者は他にも役に立つものが多い)。バイブル商法の著者が書いたような「○○でうんぬん」といったくだらない本を読む暇があるのなら、こうした正しい知識を得るべし。

 代替療法は論外としても、サプリメントの場合には「真っ当な成分であること」、そして「劇的効果を謳っていない」ものでなくては意味がない。

 コラーゲンやヒアルロン酸など、いくら肌に塗りたくっても決して真皮層にまでしみこむことのない成分が、あたかも浸透するかのような宣伝をしていたら、それは嘘だと見抜くだけの眼力を持とうではないか。

 誤った食や健康の知識は、最終的にあなたの健康を破壊し、詐欺師を喜ばせるだけなのだ。」