がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

命を削る:治療の支え/下 追いつかぬ公的制度

2010年12月20日 | Weblog
2010年12月20日 17時57分11秒

毎日jp配信記事(URL http://mainichi.jp/life/health/news/20101209ddm001040059000c.html  )



「「1日7000円の薬で命をつないでいる。障害年金も却下された」(乳がんの60代女性)。「抗がん剤治療を勧められているが、経済的な問題で治療をするか迷っている」(食道がんの50代女性)。NPOが08年に開設した「がん電話情報センター」(東京都文京区)に寄せられる相談のうち、最近増えているのが経済的負担に関するものだ。

 血液がんの患者支援団体「血液情報広場・つばさ」理事長、橋本明子さん(59)は同センターで相談主任を務め、患者の切実な声に胸を痛める。「経済的な問題で治療をあきらめてほしくない。支援できないだろうか……」

 今年10月、橋本さんらは製薬企業の寄付などを基に慢性骨髄性白血病患者を支援する「つばさ支援基金」を設立。この病気は治療費の窓口負担が月10万円を超すこともあり、治療中断する患者が後を絶たない。月2万円の助成を求め問い合わせが殺到、10月だけで約160件に上った。

 国の高額療養費制度の負担軽減策が進まない中、民間基金は治療継続を支える柱の一つだ。一方、つばさ支援基金の規模では対象者は約100人まで。橋本さんは「支援を広げるためにも、より多くの基金への寄付を集めなければ」と語る。

    * 

 「恥ずかしいが、命の長さがお金で決まってしまう現実を理解していなかった」

 大手生命保険会社で営業の現場責任者を務める河野幸彦さん(47)は今年1月にがんで亡くなった北海道の金子明美さん(当時41歳)を取り上げた本を読みショックを受けた。金子さんは6年半に及ぶ闘病生活で治療費負担に苦しみ、自ら患者会を設立。亡くなるまで国などに経済的負担の軽減を訴え続けた。

 河野さんは金子さんの姿を社内で紹介し、「がんなどの診断後に支払われる保険金が、治療によっては500万円必要な場合もあるなどと、経済的な厳しさを顧客にしっかり伝えるよう職場で話すようになった」という。

 生命保険の特約やがん保険などは病気になった際の負担軽減手段として期待されるが、従来の保険は入院や手術への給付が中心で、治療実態とのギャップが大きくなっていた。生保各社は昨秋以降、入院や通院の回数を問わず抗がん剤治療に給付する保険など、新商品を登場させている。

    * 

 高齢化に伴い病気の治療期間が延びる一方、景気の低迷で国民の収入や雇用は不安定化している。国の高額療養費制度、障害年金など従来の制度だけでは、患者の真の支えにはならない時代だ。

 厚生労働省の研究班は今年度、がん患者の経済的負担に関する大規模調査を始めた。約3000人に医療費のほか、病気にかかわる全費用、発症前後の収入の変化などを聞く。主任研究者の濃沼信夫・東北大教授(医療管理学)は「国民皆保険制度で誰もが平等に医療を受けられるという前提があり、経済問題に光が当たってこなかった。安心して治療を続けるための策を国は早急に検討すべきだ」と話す。

 =◇=

 河内敏康、大場あいが担当しました。

==============

 体験やご意見、ご感想をお寄せください。〒100-8051毎日新聞科学環境部▽ファクス03・3215・3123▽電子メールtky.science@mainichi.co.jp   」


命を削る:治療の支え/中 遅かった障害年金支給

2010年12月20日 | Weblog
2010年12月20日 17時56分21秒

毎日jp配信記事(URL http://mainichi.jp/life/health/news/20101207ddm001040033000c.html  )



「「障害年金の受給が決まったとき、夫は本当に喜んでいた。治療を受けた病院が制度をもっと早く教えてくれていたら……」

 埼玉県内のパート社員の女性(45)は昨年10月、夫を胃がんで亡くした。治療費を支えるはずだった待望の障害年金の、最初の振り込み予定日の約10日前だった。

 障害年金は、老齢年金などと同じ公的年金制度の一つ。けがや病気によって仕事や日常生活に支障がある人が対象だ。だが、医療関係者にもあまり知られておらず、がんなどの患者の受給者は少ないとみられる。

 女性の夫は07年、43歳で胃がんが見つかり手術を受けた。翌年再発、夫は治療の副作用に苦しみながら仕事を続けていたが、保険適用による3割負担でも窓口の支払いが1回4万円近い時もあり、家計を圧迫していた。

 女性が、がん患者も障害年金を受給できることを知ったのは患者会のブログ。昨年初め、社会保険労務士が作るNPO「障害年金支援ネットワーク」に相談し、必要な書類を準備するため、社会保険事務所(現・年金事務所)や市役所、病院に何度も足を運んだ。

 書類にはショックな内容もあった。「予後6カ月程度~1年未満」と余命が書かれた病院の診断書。治療の効果に関する一般的な話は主治医から何度も聞いていたが、夫に残された時間がそれほど短いとは信じられなかった。「年金を受給するため」と自分に言い聞かせた。すべての書類が受理されるまで約1カ月、年約80万円の支給決定通知が届くまで、さらに約3カ月かかった。最初の振り込みは、その3カ月後。夫の治療にはついに間に合わなかった。

    ◇

 障害年金は、国民年金などに加入し、保険料の納付状況、生活への支障の程度などの要件を満たせば支給される。がんや間質性肺炎など重い病気の患者も対象だ。日本年金機構や各共済組合が認定基準などに基づき、医学的な診断と、生活や仕事への影響などを総合的に判断して受給の可否を決める。だが医療関係者でも障害者手帳を持つ人だけが受給できると誤解している人も多い。請求用の診断書は記入の仕方が特殊で、「がんなどの患者が請求しやすくなるには、書類の改善が必要だ」と指摘する医師もいる。

 北海道小樽市の会社員の女性(39)は進行性大腸がんを患う夫のため、当時の社会保険事務所に通った。窓口担当者でも「がんだけでは受給できない」と手続きを知らない人がいた。3度目の相談でやっと必要な書類をもらい、08年末から年約190万円を受給できるようになった。

 夫は治療を続けることができたが、昨年7月に死亡。女性は「病院窓口での支払いが月30万円近い時もあり、受給できて本当に助かった。窓口に(がんなどのときの受給要件について)詳しい人が常時いてほしい」と訴える。

 障害年金支援ネットワークの藤井雅勝代表理事は「健康保険、雇用保険、年金など患者が経済的負担軽減のために使える制度はあるが、どれも複雑で、病院など一つの窓口で情報を得るのが困難になっている。病院や市町村役場の関係者に制度の存在だけでも知ってもらい、専門家や適切な窓口につなげる仕組みが必要だ」と話す。

==============

 体験やご意見、ご感想をお寄せください。〒100-8051毎日新聞科学環境部▽ファクス03・3215・3123▽電子メールtky.science@mainichi.co.jp 」


命を削る:治療の支え/上 がん発病で退職、降格

2010年12月20日 | Weblog
2010年12月20日 17時56分10秒

毎日jp配信記事(URL http://mainichi.jp/select/science/news/20101205ddm001040059000c.html  )



「1年前、自分がこんな状況に追い込まれるとは思いもしなかった。来年のことは想像もできない--。

 横浜市の女性(48)は今年10月、乳がんの発病をきっかけに10年以上勤めた通信関係の会社を退職した。「会社からクビに追い込まれたのではないかと思うと、本当に怒りを感じる。病気になり、高い治療費を抱え、職まで失うなんて……」

 今年1月、会社の健康診断で異常が見つかった。精密検査でがんと判明。女性は5月、抗がん剤治療や手術を受けるため、半年間の休職を会社に申し出ると、人事担当者から一枚の紙を渡された。「休職は1カ月。休職期間が終わって復帰できない場合は退職することに合意する」

 頭が真っ白になった。「治療費を考えると辞められない」。女性はサインを拒否。治療の副作用でしびれる脚を引きずりながら、満員電車に乗って出社を続けた。通院や副作用がつらい日は有給休暇を使ったが、やがて有休を使い果たし、欠勤がちになった。

 夏ごろ、会社が業績不振に陥ると、女性の席の内線電話が鳴った。リストラの通告だった。今度は拒否できず退職した。女性は、がん発覚前は月約45万円の収入があったが、月約20万円の失業保険に頼らざるを得ず、再就職しなければ無収入になる。もしがんが再発すれば、高額の抗がん剤治療を受けなければならないが、貯蓄もあまりない。

 女性は両親の住む長野県に戻ることを考えている。「景気も悪く、病気を抱えての再就職は厳しい。病気によって、余裕のない企業ではしっかり休職できず、就労者が簡単に切られる社会はおかしいと思うが……」。抗がん剤による脱毛を隠すカツラの毛先を見つめながら、つぶやいた。

    ◇

 「がんが再発して休みばかり取られたら、他の人に示しが付かないから降格だ」

 岐阜県の男性会社員(41)は5年前、右脇下の肉腫の手術を受け、約14カ月の休職を経て職場に復帰した。だが08年、新しい上司に思わぬ言葉を突きつけられた。反論は許されず、2階級降格の「ヒラ社員」になった。「復帰後、仕事の責任は果たしたつもり。それなのになぜ、とせつなかった」と、男性は唇をかんだ。

 男性は専業主婦の妻と子供2人の4人暮らし。入院前は約600万円あった年収が、今は約400万円まで減った。貯蓄も治療で使い切った。「がん患者でも働いて税金をきちんと納め、社会に貢献できる人はたくさんいる。企業や国は、もっと病気を抱える人のことを理解してほしい」

 一方、従業員約50人が働く食品卸会社「桜井謙二商店」(千葉県銚子市)の桜井公恵(きみえ)社長(43)は「従業員は会社の財産です」と断言する。同社では社員が病気などで通常通り働けなくなった場合、短時間労働を選ぶことができる。昨年、乳がんで10カ月間休職した従業員は復帰後の1カ月間、午前10時から2時間働く形で体調を整えた後、ほぼフルタイムでの職場復帰を果たした。桜井社長は「一生何もなく働ける人の方が珍しい。病気であっても会社の力になることを忘れてはいけない」と話す。

    ◇

 医療の進歩で治療費が高額化する一方、長期の治療が必要な働き盛りのがん患者らがリストラされたり、収入減を強いられるケースが相次いでいる。雇用や収入の不安定化は治療の継続を困難にする。国の高額療養費制度をはじめ、患者の経済的負担を軽減するための公的な支援が十分に機能しない中、治療を支える手だてを探った。

    ◇

 この連載は河内敏康、大場あいが担当します。」


24時間介護訴訟:介護時間削減は「違法」 障害者、市に勝訴--和歌山地裁判決

2010年12月20日 | Weblog
2010年12月20日 17時55分39秒

毎日jp配信記事(URL http://mainichi.jp/life/health/fukushi/  )



「介護サービスの利用時間を不当に減らされたとして、重度身体障害者の石田雅俊さん(42)=和歌山市黒田=が、利用時間決定の取り消しなどを同市に求めた訴訟で、和歌山地裁(高橋善久裁判長)は17日、決定を取り消した上で、時間を増やすよう市に義務付ける判決を言い渡した。石田さんが求めていた24時間介護は義務付けられなかった。

 原告側代理人によると、障害者自立支援法に基づき市町村が決める介護サービス時間について、拡大を義務付ける判決は初めて。

 首から下を動かせないなどの障害を持つ石田さんは、04年4月から1人暮らし。サービスは06年に月478時間だったが、1人暮らしに慣れたことなどを理由に、07~09年は377~407・5時間に減らされた。

 高橋裁判長は「介護が必要な事情に大きな変化があったとは考えられない」とし、市の決定を裁量権の逸脱で違法と認定。407・5時間だった09年を500・5~744時間の範囲にするなど、大幅に増やすよう命じた。

 石田さんは「判決を市に認めてもらいたいと願っている」と話した。大橋建一・和歌山市長は「判決の詳細を確認し対応を検討したい」とコメントした。【岡村崇】」


がん患者:治療外の出費、年55万円 交通費や宿泊費など

2010年12月20日 | Weblog
2010年12月20日 17時54分17秒

毎日jp配信記事( http://mainichi.jp/select/science/news/20101220k0000m040091000c.html  )



「がん患者の治療費以外にかかる出費は年間で平均約55万円に上ることが、NPO法人「がん患者団体支援機構」(浜中和子・理事長代行)などの調査で分かった。東京都内で19日開かれたがん患者大集会で発表した。治療時の交通費や宿泊費、治療以外の定期検査費などが主な原因という。

 調査は、がん患者や家族を対象に9月から3カ月間実施し、615人から回答(回収率約20%)があった。治療費以外の出費は、年間で平均約54万6000円。内訳は20万~50万円が4分の1を占め、100万円以上も2割近くあった。主な出費は、交通費・宿泊費や定期検査費以外にも、健康食品・サプリメントの購入費、外食費などが多かった。

 治療法や薬の種類を変更・断念した経験があるかとの質問(複数回答)には、12%が「治療や薬をあきらめたことがある」、9%が「希望の治療や薬以外で治療したことがある」と答えた。

 一方、治療しながら仕事を続ける上で困った点を聞いたところ、「治療のための休暇が取れない」が37件と最も多かった。また、仕事を辞めた患者に理由を尋ねると、「治療との両立が難しい」が42件と最多で、がん患者の厳しい就労実態を訴える声もあった。【河内敏康】」


看護師不足:年10万人離職の悪循環 採用追いつかず

2010年12月20日 | Weblog
2010年12月20日 17時53分56秒

毎日jp配信記事(URL http://mainichi.jp/select/science/news/20101220k0000m040097000c.html  )



「高齢化が進み、医療が高度かつ複雑になる中、顕在化する看護師不足。離職者が多いことが大きな原因で、結婚・出産や勤務の過酷さを理由に職場を去る女性看護師が相次ぎ、採用が追いつかないのが実情だ。背景には、女性の社会進出が進んでいなかった時代と同様、キャリアを積んでも昇給幅が小さいなど、結婚による大量退職を前提とした構造があるとの指摘もある。【福永方人】



 ◇夜勤月9回以上 子育てと両立困難



 「夜勤を含むシフトをこなしながらの子育ては本当に大変」。3人の子を持つ群馬県立小児医療センターの看護師、白井桂子さん(49)は訴える。「3人とも小さかった時は心身共にきつく、子供に当たってしまうこともあり、毎日仕事を辞めようと思っていた」

 看護師約190人の同センターでは、離職者が07、08年度はいずれも15人、09年度は5人。20代後半~30代前半の女性が結婚や出産などを機に離職するケースが多いが、産休・育休から復帰した後に辞める人もいるという。

 白井さんが勤務する新生児集中治療室(NICU)の看護師は、準夜勤(午後4時半~午前1時15分)と深夜勤(午前0時半~9時15分)が月に計9~12回。日勤(午前8時半~午後5時15分)に続いて深夜勤というパターンが、多い時で月5回ある。この場合、勤務と勤務の間のわずかな時間に帰宅し、食事や家事、子供を寝かせるなどすると、仮眠はほとんど取れない。

 白井さんは「子供に早くご飯を食べ、宿題をやるようせかすことが多かったので、小学校の担任から『お宅の子は落ち着きがない』と言われたことがある」と苦笑いする。

 夜勤免除や短時間勤務などの制度もあるが、「人手が不足しているため同僚に迷惑がかかると思い、申請する人はほとんどいない」(白井さん)。夜勤ができないと、最悪の場合は退職せざるを得ないのが実情という。



 ◇毎年5万人資格取得 離職者は10万人



 日本看護協会や厚生労働省によると、全国で毎年約5万人が新たに看護師や助産師など看護職員の資格を得ているが、約10万人が離職する。育児終了後などに復職する人も多いため実働人員は年々増加し、09年には約3万6000人増えて約143万人になった。だが、医療の高度化や高齢化などに伴う需要の増加には追いついていない。04年には、看護職員の資格を持つ人の3分の1にあたる約65万人が就業していなかったとの推計もある。

 離職の理由は、結婚や出産だけでなく、勤務時間の長さや残業の多さを挙げる看護師も目立つ。残業時間(08年)は、シフト勤務者の過労死の公務災害が認定された判例の基準である月50時間以上の人が8%近くに上り、夜勤回数は月9回以上が半数を占める。若手の看護師からは「こんなに寝られない仕事だとは思わなかった」との声も聞かれる。



 ◇給与への不満5割超 キャリア積んでも待遇改善せず



 看護師の給与は、年齢を重ねてもあまり上がらない仕組みになっている。人事院の調査(09年)によると、看護師の平均月給は夜勤手当があることから、20代のうちは約30万円で薬剤師や臨床検査技師など他の医療職より高いが、30代以降は徐々に抜かれていく。看護師は56歳以上でも40万円に届かない。

 東京都内の大学病院の女性看護師(31)は「看護師はやりがいのある仕事だが、感染症にかかるリスクや、医療事故で訴えられるかもしれない不安を抱えながら働いているのに、待遇が良くないのは納得いかない」と憤る。日本看護協会の調査(09年)では、給与の低さを不満に感じる看護職員が5割超に上り、そのうち約6割はそれが原因で離職を考えたことがあるという。同協会の小川忍常任理事は「キャリアを積んでも待遇面で報われないという、女性の社会進出が進まない時代のような構造が大量離職の一因」と指摘する。

 一方、新人の大量採用は、若手の教育を担う中堅看護師の負担を増大させる。そのことでかえって離職者が増加したり、教育がおろそかになるという悪循環も生んでいる。

 さらに、少子化で看護師の成り手は減少傾向にある。厚労省の検討会の推計では、看護職員の実働人員の年間増加数は、25年には09年より約1万2000人も少ない約2万4000人になると予想される。白井さんは「養成数を増やす対策は限界に来ている。離職に歯止めをかけるのが最優先」と強調する。

 看護師の増加や待遇改善を実現するには、病院の経営状態や管理者の意識によるところも大きい。小川常任理事は「看護師を増やした病院は増収となるよう診療報酬を改定し、夜勤手当の増額を連動して実施するなど、国と病院管理者が連携して離職防止策を進めるべきだ。看護師ら医療現場のスタッフが安心して働ける環境づくりこそが、患者の安全を守ることにつながる」と訴えている。」


昨日の記事の続き

2010年12月20日 | Weblog
2010年12月20日 12時42分46秒

読売は、諫早湾開門判決に関して、社説で「今後、排水門を常時開放した場合に不測の事態が起きる可能性は否定できまい。」とも書いている。



ホントに馬鹿なんだなと思う。



「不測の事態」というのは、文字通り、予測できない事態を言う。予測できないのだから、考慮に入れようがない。考慮に入れられるなら、それは「不測の事態」とは言わない。



裁判所も政府も、予測可能な範囲で対策を考え、実行するしかない。不測の事態は、起こってから対応するしかない。

不測の事態の可能性を否定できなければ、判決を下せない、政府が行動を起こせない、となれば、一切の行為が否定される。そんな、馬鹿な、無内容なことを堂々と社説で述べている。馬鹿という言葉以外見当たらない。



こういう馬鹿な言説が、毎日毎日何百万部も日本中にばら撒かれているかと思うとぞっとする。




不測の事態が起きる可能性を否定できない行為を批判するのなら、自社の大口スポンサーである自動車メーカーに死亡事故の起こる可能性を絶無にするまで車を売るなとでも言ってみたらどうか。




読売は、「可能性」という言葉を使うのを社内規定で禁止した方がいいのではないか。


12月16日付 編集手帳

2010年12月20日 | Weblog
2010年12月19日 23時56分56秒

URL http://www.yomiuri.co.jp/editorial/column1/news/20101215-OYT1T01154.htm



「鏡に映る像は、左右が逆でも、上下は逆にならない。科学オンチを暴露するようで疑問を口にしたことはなかったが、いつぞや物理学者、朝永振一郎氏の文章を読んで安心した覚えがある◆随筆集『鳥獣戯画』(みすず書房)によれば、博士が理化学研究所にお勤めの頃、鏡の左右上下が職場の話題になり、〈ひるめしのあと、研究室の連中が甲論乙バクいろいろ珍説明が出た〉という。鏡とは科学者にとっても不思議な物であるらしい◆“内閣カー”を運転する「仮免許」を卒業し、めでたく「本免許」を取得したという菅首相は、もしかすると、鏡に映った道路に車を走らせているのかも知れない◆尖閣事件をめぐる中国人船長の釈放や映像流出など、政治の出る幕には官僚の陰に隠れている。そうかと思うと、官僚に開門の影響を十分に検討させるべき国営諫早湾干拓事業(長崎県)のような、まだ出る幕でない場面で政治が出てくる。右かと思えば左、左かと思えば右、見ていて危なっかしくてならない◆国民の目に映る菅内閣の像が、いずれスッテンコロリン、上下まで逆になってしまわないか心配である。(2010年12月16日01時36分 読売新聞)」



どんな利害関係があるのか知らないが、読売は開門に反対のようである。同日付の社説でも『「諫早」上告断念 見切り発車の開門では困る(12月16日付・読売社説)』と書いて(全文は最下段に掲載)、開門に反対している。どういう根拠があって言っているのかさっぱりわからない。



編集手帳内では「官僚に開門の影響を十分に検討させるべき」などと一人よがりの主張をしているが、根拠がさっぱりわからない。



読売の一面や社説に文章を書く人間だから当然知っているのだと思うが、国が被告になった訴訟では、国側代理人として、法務省にいる法曹資格者が出てくる。その人間に、今回の訴訟で言えば、農林水産省や国土交通省の役人が訴訟保佐人としてついて、万全の態勢で訴訟に臨む。

そのようにして長い時間と費用をかけて争った結果が国側敗訴、高裁の開門命令判決である。(付言すれば、一審でも開門が命じられている。)さらに検討する必要がどこにあるのか。



菅総理が「高裁判断は非常に重い」と言っているように、法治国家である以上、行政府の長たる内閣総理大臣が高等裁判所の開門命令に従うのはあまりに当然である。それを批判がましく言うのはお門違いも甚だしい。読売は裁判所の判断を何と考えているのか。



読売新聞社がどう考えるのかなど、法治国家における裁判所の命令に比べれば塵も同然である。どうでもいい。




社説では「事業を実施する農林水産省は現在、開門の適否を判断する環境影響評価を進めており、訴訟では上告を求めていた。それを押し切っての判断である。政治主導に名を借りた見切り発車とならないだろうか。」とも書いている。これまた考え違いも甚だしい。行政府内部において、内閣総理大臣の判断が優先されるのは当たり前である。内閣総理大臣の判断より農林水産省の役人の判断が上回るなどということはあってはならない。

読売が民主党内閣を、菅内閣を嫌いなことは重々承知しているが、味噌も糞も一緒にしたような社説や編集手帳は、百害あって一利なしである。



社説ではさらに「今後、開門反対派の長崎県や農業者側の反発はますます強まるだろう。地元の同意を得ずに開門を強行するわけにはいくまい。」とも書いている。これまたおかしな話である。



繰り返しになるが、原告と被告である国が、それぞれの主張をぶつけあって、出された結論が開門命令である。地元の同意がなければ開門できないとなれば、裁判所の判断はなんだったのかということになる。それなら裁判所など廃止してすべて話し合いで皆の同意が取れるまで話し合いを続けたらいいではないか。そんなことが現実に可能か?よく考えろ、読売!と言いたい。




URL http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20101215-OYT1T01126.htm


「長崎県の国営諫早湾干拓事業を巡り、潮受け堤防の排水門を5年間開放するよう国に命じた福岡高裁判決について、菅首相が最高裁への上告を断念する方針を示した。
 判決は確定し、門は2012年度にも開放される見通しだ。

 地元を二分する対立が続いてきた問題に一定の方向性を示したものだが、開門の影響を十分検討したうえでの決断だったか、疑問が残ると言わざるをえない。

 首相は野党時代から諫早湾干拓事業の見直しを主張し、上告断念についても「私なりの知見を持っている。開門で海をきれいにしていこうという訴訟での高裁判断は非常に重い」と説明した。

 しかし、事業を実施する農林水産省は現在、開門の適否を判断する環境影響評価を進めており、訴訟では上告を求めていた。それを押し切っての判断である。政治主導に名を借りた見切り発車とならないだろうか。

 1989年に着工した諫早湾干拓は、有明海の一角を占める諫早湾を全長7キロの堤防で閉め切り、内側に干拓地と調整池を整備する事業で、08年に完成した。

 事業を巡っては早くから漁業者と農業者、周辺自治体、その選出議員らがそれぞれの利害を主張し、迷走を続けた経緯がある。

 完成後、焦点となったのが排水門の開放問題だ。湾を堤防で閉め切った影響で漁獲量が減少したとする漁業者は開門を強く求めた。一方、干拓地の農業者は開門すれば堤防内に海水が流入し、営農できなくなると反対してきた。

 高裁判決は、堤防の閉め切りと漁業被害の因果関係を認め、門を開けても農業や防災への影響は限定的との見解を示した。

 だが今後、排水門を常時開放した場合に不測の事態が起きる可能性は否定できまい。

 調整池の汚泥などが堤防外に流出して周辺海域の水質が悪化し、漁業への悪影響はないか。洪水や高潮が発生した際の防災対策は万全か。農業用水として使う新たな水源確保はどうする――といった点である。

 高裁判決は国に準備期間として3年間の猶予を与えた。政府は想定される様々な状況を点検し、開門の時期や方法などを慎重に検討しなければならない。

 今後、開門反対派の長崎県や農業者側の反発はますます強まるだろう。地元の同意を得ずに開門を強行するわけにはいくまい。首相は地元関係者との調整や説得についても責任を持つ必要がある。

(2010年12月16日01時36分 読売新聞)」