新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

EBO=Employee Buyout

2008-03-12 08:31:09 | 200803

言うまでもないが、従業員による企業買収のことである。310日のNHKスペシャルでこの実例を特集していた。大いに見応えがあった。中国の企業に買収された日本屈指の太陽電池のメーカーが北九州の工場を閉鎖され、工場長以下が奮起して工場を買収して再起していく実態を特集した番組だった。<o:p></o:p>


印象的だったことが二つ。中国に買収されてしまった我が国の企業があり、しかも技術が世界的に認められていたこと。そこに、立ち上がってEBOを成し遂げた人たちがいたこと。その努力と成功の過程が素晴らしかった。<o:p></o:p>


私は寡聞にしてアメリカでもEBOの例を一つしか知らなかった。だが、そのアメリカの紙パルプ産業界ものとは全く質が違う苦労と努力には頭が下がる思いだった。アメリカでは生産設備も販売先もほとんどそのまま引き継いだ形のEBOであったと解釈していた。 <o:p></o:p>


特に印象的だったことがある。この工場には閉鎖された時点で100人いた従業員の60人が参加し、全員が拠出した資金の合計が2,500万円であったのに、会社設立に要する資金が30億円であった。その融資を受けるために、懸命に銀行を説得して成功したのも素晴らしかった。援助した銀行も褒めても良いだろう。<o:p></o:p>


私がここでこれを取り上げた理由はEBOを成し遂げたことを賞賛するためだけではない。僅か6ヶ月間閉鎖されていた間に世界の太陽電池の進歩が凄まじく、その新会社がそれを追っていくために全員の創意工夫で生産効率を高めたこと。そして技術を世界水準に高めていったことだった。私は此処に我が国の製造現場の質の高さが立派に見事に維持されている具体例を見て、非常に心強く感じた。矢張り、嘗てカーラ・ヒルズ大使が「初等教育の普及・充実」と「識字率の向上」の必要性を唱えたアメリカとの違いを見出した。されに敢えて言えば、団塊の世代が消えていくことで我が国の技術だけではなく、技量の持ち主が消えていく心配も無用とは言わないまでも、何とかしていくだけの次世代が育っている現実も見えたと感じた。<o:p></o:p>


たった一例で、ここまで楽観するのは甘すぎるかも知れない。だが、あのような精神力に支えられた技術があれば、我が国の将来を悲観するのは誤りだと思うのだ。<o:p></o:p>



コメントを投稿