新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

続・カタカナ語を斬る

2021-02-09 08:20:09 | コラム
しつこいと言われても何でも続ける:

キャプテンシー:

週刊誌だったかに文藝春秋社の「ナンバー」誌のラグビーの名キャプテンの特集の広告が載っていた。それを見て「何だ、文藝春秋社の知性というか、英語の力はこの程度か」と嘆き、且つ嘲笑いたくなった。それは「主将としての統率力と指導力」を平然として「キャプテンシー」としていたことだった。「英和でも英々辞書でも見てから記事にしろよ」なのだ。キャプテンシーを英語で綴れば“captaincy”であって「主将としての地位」の意味である。この言葉の誤用も何処かの解説者が最初に使ったものが、何時の間にか一般的になってしまったのだ。

正しくは“captainship”だと思っている。だが、不思議なことにOxfordには載っていないが、ジーニアス英和には採用されている。これでは説明不十分だと思うので、他の例を挙げれば“leadership”があるし、チャンとOxfordにも載っている。だが、“leadercy”なんていう言葉はないと言えばご理解願えるか。要するに「勝手に言葉を作ってカタカナ語にするな」ということだ。後難を恐れずに言えば、テレビ局が解説者に使いたがる昔の名選手たちは「我が国の好い加減な英語教育の犠牲者であり、知らぬ間に恥をかいている」のである。

この手の奇妙な造語は数知れないほどあるが、幾つか例を挙げておくと「リピーター」(repeaterとでも綴るのか)がある。「同じ店を繰り返して訪れる」という意味で使われているので困るが、英語では「連発式拳銃」という意味がOxfordには載っている。「アホか」と言うしかない造語であり、遍く使われている。これを正しい英語にしようと思えばclauseにするしかない。「頻繁にその店を訪れる定期的なお客様」を英語で言って見よということだ。簡単に言えば、“a regular customer”辺りに落ち着くかと思う。

「プライベート・ブランド」も如何にも英語っぽいが造語だ。しかもPB等という略語まで作られている始末だ。英語では“private label”である。「フライイング」というのがある。これはトラック種目や水泳で合図の前に走り出すとか飛び込むことを指しているが、英語では“false start”である。これは難しい言葉が出てくるので、製造業者が使用者の英語力を考慮して勝手なカタカナ語を作ってのだと曲解することにした。因みに「フォールス・スタート」はフットボールの用語でもあり、攻撃側が先に動いてしまう反則を指している。

“in”と“out”、”up“と”down“の誤用:
カタカナ語ではこれらの単語を恰も動詞のように使っている。本当の英語では絶対と言って良いほど「このように使うことはない」のである。直ぐに思いついた例に「12球団が一斉にキャンプイン」というのがある。思うに「キャンプ地に入った」と言いたいので、inを恰も動詞のように使ったのだろう。おかしな事だが、これを英語でどうのように表現するかを考えたことがない。

「ゴールイン」も矢張りinが動詞のように使われている。マラソンやスキーの距離の種目のゴールラインには“FINISH”と出ているし、完走者には“finisher”という単語がOxfordにも載っている。他にも自動車の競技で「ピットイン」というのがあるが、アメリカで教えられた表現は“pit stop”だった。当たり前のことで、inは動詞ではないのだから。

一方、アップとダウンでは「イメージアップとダウン」の両方がある。「レベルアップ」は多くの運動選手たちが当たり前のように使っている。即ち、upもdownも動詞のように平然として使われてしまっている。困ったことだ。プログレッシブ和英には「レベルアップ」だったかが“to improve the level”のようにupをimproveに置き換えてあった。尤もだと思う。製造業者は我が国の英語教育ではimprove等は難しくて使い切れないと配慮したのだろう。もしもそうだったら余計なお世話だ。

私は日本の会社勤務の頃には労働組合とは縁がなかったので「ベア」と何のことか全く解らなかった。それが「ベースアップ」と解説されて、一層理解できなくなった。何度か聞き直してアップがどうやら英語で言う“raise”のことらしいと見当が付いた。英語では昇給することを屡々この単語で表すのだ。即ち、“pay raise”のように。言いたいことを言って置けば「矢張り単語重視のような教え方をするから、このような出鱈目なカタカナ語の濫用になる」のである。「英語教師よ、反省せよ」で終わる。



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