新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

英語の言葉遣い

2018-01-21 10:45:33 | コラム
トランプ氏の言葉遣いの中には真似して貰いたくないものがある:

これは2016年の10月17日に未だトランプ氏が共和党の候補者だった頃に発表したものである。今回はこれにある程度加筆訂正して行こうと考えた次第。

ドナルド・トランプ氏の言葉遣いは少し品格に欠けていると思う時がある。この点を週刊新潮の10月20日号で「スラング」として採り上げていたが、一寸異論がある。あの記事が例に挙げていた一昔前の彼の言動の例には、確かにスラング(slang)に分類しても良い言葉もあった。だが、以前に「言葉の分類」で指摘したように、“slang”とは「隠語」や「符牒」を言うのであって、必ずしも品格を問われるような性質ではないのだ。一流会社の社員でも使っている程度だ。

英語を学んでおられる方々に彼の言葉遣いの中で真似て欲しくない例を挙げておけば、トランプ氏が使う”I’m gonna ~.”であるとか”You wanna ~.”という言い方をしている辺りだ。これは原型では”I am going to ~.”と”You want to ~.”である。このような原型でキチンと話せない段階にある時にこういう省略した形の表現を真似することを私は勧めないのだ。即ち、そんな言い方をすると全体の流れの中では「木に竹を接ぐ」ような形になって不自然だし、バランスが悪くなるからだ。

しかしながら、この辺りが英語、就中会話の勉強で難しいことである。即ち、「現在では大統領である方が使っている表現だから、私も使うのは良いだろう」と考える人は出てくるものだ。現に、私が 「Me, too. はお薦めしない表現だ」と言ったところ、それを聞かれた文科省の官僚だった方が「ライシャワー大使だって私的な会話で使っておられた。構わないのでは」と、突っ込んでこられた経験がある。

私の主張は「正確な言い方が身に付いて、アメリカ人たちの中に入って私的な会話を楽しむ次元まで上達されたら話は違うが、勉強の段階では避けたい言い方である」という点だ。なお、Me, too, がいけないのは当然で、meは代名詞の目的格であって、主語に立てるべきではないからだ。堅いことを言えば、これは文法の問題であり、あるアッパーミドルの家庭では「駄目」とハッキリ言われた。。

私が使うなと言うのは適切な日本語の訳がない“swearword”(「汚い言葉」とでも言うか)のことであろう。少なくとも公衆の面前や公式の場で使うような言葉ではない。この点も何度も指摘してきたことで、我が国では“slang”と“swearword”が混同されており、その識別が出来ていないと思う。また、“swearword”等はとても学校教育で教えられる代物ではないので、スラングと区別せよと言われても、我が国の学校教育で育った方々には出来る業ではない。

だが、swearword等はアメリカの映画でも音声が原語のテレビドラマでも、これでもかと言うほど乱発されているので、比較的耳には馴染んでいるので「これぞ格好が良い英語」と誤認されるのである。とんでもない誤解だ。現にカタカナ語には「「オーマイガー」などというのが出現している。思うに“Oh, my God!”なのだろうが、これぞ汚い言葉の範疇に入るので、「英会話」などで気楽に使ってはならない。品性と知性を問われるだろう。

トランプ氏の品格に欠けた言葉遣いは、一昨日のYM氏との語り合いの場でも話題になった。それは、トランプ氏は少なくともアメリカ有数の私立大学でIvy Leagueの一角を占めるUniversity of Pennsylvaniaの出身で、言わばエリートの一人のはずである。それにしては、余りにも酷いと言わざるを得ないのだ。彼も私も知る限りのビジネスマンや大学教授等には、彼と同様な言葉を公衆の面前で使う人はいなかったと思うから言うのだ。ヒラリー・クリントン女史の言葉遣いには既に触れたのでここでは敢えて採り上げない。

要するに「如何なる種類の英語を目指すのか」なのだが、どれがどの階層のものかを識別できるようになるのはそう簡単ではない。社員が上司を選べないように、英語を学びたい者が正しく格調の高い英語を教えてくれる人を選ぶこともまたほぼ不可能に近いだろう。私は偶々運が良かっただけだと自覚している。こういう事は何も英語だけに限られたことではない。国語、即ち日本語でも正しく教えていないと、現在のように乱れてしまうのだから。「お里が知れない」ようにならないによく気を付けることだ。