新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

1月27日 その2 トランプ大統領は何もかもご承知で日本叩きに出る気か?

2017-01-27 17:39:55 | コラム
トランプ大統領をう違うの記:

私は繰り返して申し上げているように「トランプ大統領はもしかして国際政治・経済の事情に精通されておらず(極端に言えば何も知らず)直感だけで言っているのか、または何もかも全てご承知の上で“アメリカファースト”を基調において妄言を繰り返し吐いていたのかの何れかだと思っております。結論めいたことを言えば、前者に限りなく近いとすら思う時があるほどハチャメチャです。私の昔の同僚の一人も「何もご存じではないのでは」説に同調していました。

特に、ビジネスマンで不動産業者だったと言いますが、私が知る限りのアメリカの一流のビジネスマンの範疇には入らないと見なしております。特に自動車産業界、就中日本車がアメリカ製の自動車を不当に輸入していないなどと言うに至っては、40~50年も前の議論で、到底相手にしていられる性質ではありません。アメリカの自動車が自国内でも売れず輸出市場も失ったのは、UAWに代表される質が低く高価な労働力の為であって、懸命に努力をして品質を高めコストを合理化し、アメリカの排ガス基準に合わせた車を作った日本のメーカーに敗れただけのことです。それを知らないのだったら何をか況んやです。

もしも、トランプ大統領が何も自動車産業界だけではなく、アメリカのあらゆる主な産業界(紙パや石油化学のような装置産業を除く)が労務費の高騰と低技術に耐えかねて空洞化に走ったことをご存じでないかお忘れだとすれば、それは余りにも無茶苦茶です。その空洞化の為にアメリカ市場、特に西海岸では非耐久消費財の果てに至るまで(中国を主体に)輸入依存になったので、不動産業界の英雄がそこまでの事情(背景)を知らなくても、不思議ではないかも知れません。

とは申せ、トランプ大統領時代が出現した以上、我が国でもその態勢に合わせて順応していく方法を可及的速やかに見出す必要があるでしょう。私はトランプ氏がTPPのような多国間との制度と、バイラテラルというか二国間主義を採ろうとする理由か根拠などは解りませんが、二国間の方が色々な手法で相手を圧倒出来ると思い込んでいるのだろうと疑います。自分で文化が異なる外国との取引を経験していない方が、TPPと「バイ」との優劣、有利か不利かをどうやって判断か判定出来たのか不思議です。側近か娘婿にでも教えられたのか?

だからこそ、私は「無知は力なり」ではないのかと、トランプ大統領を疑っているのです。大統領ともなれば、何でも恣意的に事を運べると思い込んでおられるからこそ、あれほど自信たっぷりに大統領令に署名されるのでしょう。私はあの様子を見て「もしかすると、石原慎太郎君のように気が小さいことを自覚され、それを見破られまいとして、その性格の裏を誇張して出している人物か」とすら思う時があります。私が知り得たアメリカのビジネスマンにはない型の人です。

しかし、既に色々と申し上げた通りで、これから先にトランプ大統領がどう出てこられるかは“unpredictable”であり、如何なることになるか、如何なる手を打ってこられるかを注視している以外ありますまい。要するに、こちらからは先手は打てないのです。それは彼が常に「先手必勝」で出て来るからです。それも彼の手法だったりして。


Jobを補足説明すれば

2017-01-27 07:55:27 | コラム
肝腎な点の補っておけば:

アメリカ人はどのようにして転進してくるのか:
アメリカの製造業で会社側(サラリー制)の社員またはマネージャーは先ずほとんどが中途入社であり即戦力として他社から勧誘したか引き抜いてきたか、ヘッドハンティングで入社させたか、紹介者を介したか、社内で欠員の公募に応じたか、他業界で腕を磨いて評判となって勧誘されたか、4年制大学在学中からかビジネススクールに在学中からその会社のその事業部を目指して本部長宛に履歴書を送ってあった等々の中から選抜されて面接を受けて採用されたかという形で、自分から公募の行列に並んで受験したなどという話を聞いたとはなかった。大体からして、そういう公募はしない。

因みに、私がリタイヤーまでお世話になったW社の東京事務所のマネージャーたちはほとんどが他社からそのjob(=職か任務)に勧誘されて転進してきた者たちだった。会社が募集してもいなかったし、彼らが志願して入社を希望した訳ではなかった。必要に応じて充当していたのだ。アメリカの本社でも同様でマネージャー級は皆他社から移ってきた腕利きで、そしてまた外部に良い条件の仕事があれば移っていく。

労働組合は会社側とは別個の存在で法律で保護されたものであるし、組合員となる為にはその資格である「ユニオンカード」を保持していなければならぬと聞いた。しかし、会社側とは別個の存在の存在である以上、私にはこれ以上の組合員の募集であるとか、採用のことについては知識はないし、知り得る機会もなかった。この「別個の存在」という辺りが、我が国の社内の組合との大きな違いである。職能別組合であることを忘れてはならない。

日米間には就職と就社の違いがある:
この点は日米間の企業社会の典型的な文化の違いである。我が国で新卒の大学生や高校生が目指すのは「就職」と言われているが、現実は「就社」であって、希望した会社に採用されることである。その目指した会社のどの事業部のどの職に就くかは内定を得た時か入社式の時点では決定しないだろうし、応募者が「御社のこの事業部にご採用願いたいです」と言って願い出る性質ではないと思う。

アメリカではどうなっているのかを、私の1976年の経験談を例にとって解説してみよう。私はその時アメリカでは“Food & Dairy Expo”と称していた展示会場のW社のブースに立っていた。そこに現れた大学生と名乗った若者が「この会社のこの事業部に採用されたいのだが、履歴書を誰宛に送れば良いのか」と尋ねてきた。何のことかサッパリ意味が分からず呆然としているところに、他の部員が現れて副社長兼事業本部長の氏名を告げて助けてくれた。そこまででも未だ意味不明だった。

そこで、彼(後に出世街道をひた走って副社長兼事業本部長にまで昇進した、我が生涯の最高の上司の若き日のことだった)が教えてくれたことは「我が国では就職希望者はそれぞれ目指す会社の特定の仕事を予め決めておき、如何にしたらそこで採用されるかを目指して学び努力するものだ。そして、採用の権限を持つ者に履歴書を送っておけば、もしも欠員が生じた時か、事業を拡張する際にその履歴書の束の中からこれと思う有望な者に声をかけることもあるのだ。故に、履歴書を送っておくことが第一歩となるのだと知れ」だった。未だアメリカの企業の文化を知らない頃だったので、大袈裟に言えば驚愕だった。

確認しておけば、その学生はWeyerhaeuserという会社に採用されることを目指していたのではなく、酪農業界や飲料向けの液体容器用の材料を製造・加工している事業部で働きたかったということだったのだ。この最初からやりたい“job”即ち仕事というか職を決めて採用されることを目指すのがアメリカの制度というか文化なのである。かく申す私もWeyerhaeuserという会社に転進したのだったが、その中の当時は“Consumer Packaging”と称していた事業部に勧誘される機会があり、東京駐在員のjobに当て嵌められたのだった。

こういう形で入社すれば、その事業部内での異動はあっても、他社と同様な存在である他の事業部への転進は先ずあり得ないと思っていて誤りではないだろう。私はこの辺りを捉えて「就職」と「就社」の違いがあると言っているのだ。これまでの解説では以上のように細部まで言っておかなかったので、一部で誤解を生じた気配があったので、敢えて追加した次第。