新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

1月20日 その2 少しだけ本音を言えば

2017-01-20 16:30:48 | コラム
文科省の高級官僚の天下りの案件に思う:

「天下り」となっている表現が面白いと思っている。始めから官僚が上位で民間が下位にあるという位置づけになっているところが凄いと思う。先ほど何処かのテレビ局で「優れた官僚がその能力を活かそうとしての転職を禁じるのは如何なものか」と、良いことを言っているようで寧ろ陳腐な議論を展開していた。私は法律の規制を別にして考えれば、好きなようにさせても良いのではと思っているが、我が国の文化と歴史がそれを急に認めるとは思えない。

少しだけ本音で言えば「何もそう厳しいことを決めないで、アメリカのように労働市場に流動性を持たせて、力がある者でやる気がある者は好きなように政界、民間の企業、教育界、スポーツ界(但し経営者か監督者として)芸能界でも何処でも行かせれば良いじゃないか。流動性があっても良いのでは」と感じることがある。

自らの頭脳か才能を活かして一生懸命に勉強して一流の国立大学に入り、難しい試験を経て高級官僚になった者がその職歴というか経歴を活かして民間か別の世界に転じて更に高給を取ることに対して、何処かで誰かが嫉妬を覚えて「天下りはいけない。良くない」と批判して、そうなれなかった者たちが同調したのかなと思う時がある。これも日本の文化であろうか。

アメリカの仕組みというか文化を礼賛する気が無くも無いが、管理職には大学教授から転身してきた者も当たり前のようにいたが、別段天下りとは非難されなかった。ラッケルスハウス氏のようにニクソン大統領を追い詰めてFBIの職を追われてW社の法務担当上級副社長に転進したかと思えば、そこから環境庁長官としてワシントンDCに復帰した例もある。W社からもリタイヤー後に大学教授に天下り?した上級副社長もいた。

現に、トランプ新大統領の新閣僚にはゴールドマンサックスや、大手石油会社の経営者がその能力を活かすべく起用され、トランプ氏は最高のIQを集めたと豪語していたではないか。アメリカのように政界でもビジネスの世界でも何時何処から、上からか横からか知らないが、責任ある地位と言うか管理職にある日突然見知らぬ者が飛び込んでくる。そして、そういう人たちは前日までにその地位で如何に働いてみせるかの準備を整えてあったかのように就任の弁を語り、即刻部下を叱咤激励するのだ。下から積み重ねた経験と知識の蓄積を誇った偉い人を見た記憶はほとんどない。

こういうアメリカ式と我が国のように出自に関係なく、努力をして勉強をして経験を積み、豊富な知識を持てば段階を経て昇進して最終的に最高の地位で力を発揮させる仕組みの何れが優れているかなどを論じても無意味だろう。何度も論じたが、アメリカでは良家の子弟に産まれた者が圧倒的に有利なことは間違いないという差別が厳然としてあるのだ。その格差がある不公平さがアメリカの文化なのだ。

要するに身を立て名を挙げられるか否かは「その文化に如何に適応していく能力があるかないか」の問題だと思う。私は我が国の文化の方が遙かに公平で所謂民主的な社会制度だと思っている。現に、私自身はその我が国の優しい文化には不適応で、何とかアメリカ流の中で生き長らえただけかとの思いに耽っている。


ドナルド・トランプ新大統領の就任の日に

2017-01-20 09:35:34 | コラム
矢張り“unpredictable”か:

私はトランプ次期大統領について嘗ての同僚の一人のL氏とずっと意見交換を続けてきた。彼が「トランプが共和党の候補に正式に指名されたら“disaster”だ」と指摘したとは既に述べた。また古森義久氏が“ unpredictable”と形容したことも知らせた。お断りするまでもないが、W社は明らかに共和党寄りの企業だったし、L氏もトランプ氏の支持層ではないアメリカの層に属するごく普通の穏健なインテリの一人だ。

私は私のトランプ論は「彼はこれまでにアメリカと世界で政治・経済・軍事・外交・安全保障等が如何なる形で進行中か、これまでに何が起きていたかをほとんど認識していないかまたは知らないのか、または何もかも承知の上で色々と物議を醸したような放言か暴言を吐いてきたのかの何れかに見える。だが、遺憾ながら実態は限りなく後者に近いように思えてならない」との点を中心にした。

更に、雇用の増加を強調されているが、その雇用の場であるアメリカの労働力の質と、労務費が強力な労組の前に屈服して高騰した為に、空洞化が発生したことをご承知だったのかとの問題点を、1994年7月のUSTR代表だったカーラ・ヒルズ大使の発言も引用して、疑問を呈してあった。また、オバマ政権はこの空洞化に危機感を抱き外国に流れた製造業にアメリカ回帰を促したが不発に終わった実態も書き添えた。

因みに、L氏はW社の技術陣にあって労働力の質の改善・向上に懸命に努力した主要メンバーだったし、製品の質を如何に世界一厳しい基準が設定されている我が国の市場の要求(受け入れ基準)を満たすべく奔走した技術サービスマネージャーだった人物。恐らく在職中に100回以上は来日して日本全国を走り回っていた(トランプ問題とは直接の関係はないことかも知れないが)極めて日本市場の実態に精通した現実的な日本通である。

その彼のドナルド・トランプ論の要旨をその“inauguration”(就任式)の日に合わせて紹介してみよう。言うまでもないことで、L氏がアメリカ市民を代表している訳でもなく薬やサプリメント類の広告にあるように、その意見はアメリカの一市民の感想でしかない。だが、ある程度以上にある一定以上の層にあるアメリカ人の思いを伝えたいると考えて採り上げた次第だ。

彼は先ず「君の見方には遺憾ながら賛成せざるを得ないし、ドナルド(とファーストネームで呼んでいる)は国際政治・経済等々の分野の入り組んだ複雑さを理解し認識しているとは見えないかの如きである。また、彼がアメリカの労働市場に内在している教育の程度の問題を何処まで認識出来ているかも疑問だ。我が国企業が求めているのは最早博士でも経営学修士でもなく、不足している訓練と教育が行き届いたブルーカラーである」と私の見方に同調した。彼はこの点を私の在職中から「問題点」として指摘していた。

次に指摘したことは「トランプ政権が現在のオバマ大統領が率いる民主党政権以上に優れた政策を打ち出して、本当に“Make America great again”を達成するか否かにも疑問があるが、このような悲観的な観測が誤りであって欲しいと真剣に願っている。私の周囲にはトランプ政権が如何なる成果を上げる得るのかと危惧する者が多い」だった。

彼は言葉を継いで「ドナルドは自己陶酔型で常に自分を中心に物事が回っていると考えており、自分ほど賢明な者はないと自負していると見ているようだと思う。この性格では就任後も目に見えるような変化を遂げないだろうし、他者からの進言を簡単には聞き入れないのでは」と悲観的だった。

更に彼はささやかな抵抗として「これまではそれほど支持しなかった者が大統領に選ばれてもその就任式のテレビ中継は必ず見守ったが、今回は見ない」とも言っていた。だが、「自分はそういう行動を採るのは決して楽しいことではないし、全米にこうした抵抗を示す人たちの比率がどれほど高まるかの予測は不可能だが」とも述べていた。

大体ここまでだが、これではかなり悲観的であると思える。だが、それは予めお断りしたように一アメリカ市民のトランプ論であり、アメリカの中産階級の意見の一部は表していると思ったので、紹介した次第だ。しかし、ここまででもトランプ氏を支持したのが、ブルーカラーと言うべきか何と表現すべきか知らないが、私が身を置いていたビジネスの世界の人たちではなかったことは感じ取れると思うのだ。