新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

1月17日 その2 野田元総理を想起させられた

2017-01-17 18:57:31 | コラム
知らないことは強い:

私はこのところ、トランプ次期大統領がその職務が必要とするだろう現実的な知識に欠けているのではないかと論じてきた。そして、未だにそうであるかどうかがハッキリとは解らない。その過程の中で、思い出したことがあった。

それは、民主党政権下でTPPに参加すべきか否かの議論が出た時のこと。自民党側から非常に難しい問題となりかねない「ISD条項に如何に対処するか」と、野田総理(当時)に質問した。その答弁が凄かった。それは「国内法で対応する」というものだった。それは基本的な国際条約についての理解と知識の欠落で、「国際条約の決め事はは国内法に優先する」を知らなかった為に出た答えだったので、マスコミにも冷笑された。

現在のトランプ氏のメキシコで製造される車には35%のボーダー・タックスをかけるであるとか、中国からの輸入品に45%の関税をかけるであるとか、日本に駐留する米軍の費用を我が国に全額負担させる等々の、選挙キャンペーン用乃至は国内の支持者を喜ばせる為だけのような発言が、あの時の野田総理の「国内法云々」と似ているような気がするのだ。失礼を顧みずに言えば「勉強不足では?」なのだ。

私はトランプ氏が未だに実情を知らないで主張するのか、何もかも承知で知らない顔で「これを言うことで失うものはない」的な強気な発言であるの判定は出来ないのが偽らざる所だ。確かにあの強気は「アメリカファースト」や”Make America great again”というスローガンの趣旨には合っている気はするが、その真実というか真意が何処にあるのか解らないのが怖いのだ。

私がアメリカ次期大統領トランプ氏の言動を疑う理由(ワケ)

2017-01-17 13:03:38 | コラム
私は経験からトランプ次期大統領を疑っているのだ:

私はアメリカ人の世界で暮らした経験から現実的に見て、次期大統領に疑問を呈しているのだと思ってご一読願えれば幸甚である。。

アメリカは私が1972年にアメリカの会社に転進する以前から製造業を放棄し始めたと見なしている。そして先ず繊維産業のような非耐久消費財製造等の業種は輸入品に任せてしまった。その背景には強硬な労組の為に高騰する一方の労務費と、如何ともしがたい低質な労働力があったと言って誤りではあるまい。自動車産業の世界市場での惨敗はその悪い例ではないか。結果的に非耐久消費財等を筆頭に中国等からの輸入品が大きなシェアーを占めるに至った。

私はその輸入品に市場を開放する状況を見て(知って)アメリカは懐が深くおおらかな国だなと感じていた。労働力の質の問題の背景には、我が国とは全く異なる職能別組合制であることと、一旦時間給制の組合員となった者がサラリー制の社員(会社側)に転じることがないという労働事情の違いがあったと言えるだろう。その組合側とは、トランプ氏支持に回った低層の白人や少数民族の世界だったとも言えるだろう。極端な表現をすれば、労働力の質の低さの大きな一因がここにあり、その点では1994年7月のカーラ・ヒルズ大使の指摘が当たっていたというのが、私の偽らざる経験を踏まえての実感である。

1990年代末期に中国で北京・上海・蘇州を回った際に、自ら中国で最高級のガイドと称した女性は高飛車なだった。彼女は我々に労働問題について「中国南部の雲南省等には若くて質の良い労働力が溢れるほどある。そのような内陸乃至は南部からは常に一定数の若い質の良い労働者がアメリカに出て行っては稼ぎ、その目的を達成すれば次の集団と交替する。このような労働力の供給源がある中国にアメリカが依存しているのだと知れ」と説教したのだった。即ち、アメリカは中国と不可分の関係にあると言って聞かせたのだと、満更嘘でもないだろうと思って聞いたほどの迫力があった。

米中の関係については、2010年、カリフォルニア州で銀行勤務から独立してファンドの運営を開始し大成功しているML氏と語り合った際にその実態や如何にと尋ねてみた。彼は言葉少なに「アメリカ経済は中国との間の貿易が順調である間は安定している。その意味では現在は安心だ。同様に米中関係が安定している限る日本の経済も安定しているのだ」と指摘したのが印象的だった。私は彼が「相互依存」を言っていたかと解釈したのだ。

また、12年にYM氏とSM氏とロスアンジェルス郊外の広大な”Fashion District”という問屋街を歩き回る機会があった。そこに展開していた数多くの問屋で売られていたアパレル等々の雑貨が中心で、商品の99%は中国製だった。品質もそこそこだが何と言っても安いのだ。チャンとした木綿のTシャツが4枚で$10~15という具合だ。非常に興味深い街で幾ら歩き回っても興味は尽きなかった。

中で、アメリカ製品も置いていたと見えたアメリカ人の店主に商品は中国製かと確認すると、自嘲的に店先の全商品を大きな身振りで指さして「あー、そうだよ。これもMade in Chinaで、あれもMade in Chinaだ。何から何まで中国製だ」と大きな声で答えてくれた。この店ではレイバンの形をした玩具のような中国製のサングラスは3点で$10という安さだった。因みに、この街で売り子として働いていたのは韓国人かヒスパニックで、中国系アメリカ人はほとんど見かけなかった。

これは中国がアメリカの市場を奪い取ったのではなく、アメリカの製造業者が自国内で自国の労働力で生産したのでは消費者の需要を満たすことが出来ないと認識して国外に生産拠点を移すか輸入に依存したのであって、アメリカ自身が市場を解放したのだと私は認識している。私はトランプ氏はそういう歴史というか経緯があったことをご承知か否かを疑いたくなるのだ。故に「何もかもご存じで言われているのだったならば問題は別だ」と思うのだ。

私にはトランプ氏の知識を疑うことは出来ても、真相というか実際に知らないのかどうかなのかを知る術もない。あるいはあの暴言はブラフかも知れないし、あるいはご承知の上で「これを言うことで何を失う危険性があるのか」と強気なのかも知れないと恐れるのだ。だがしかし、これまでの言動ではただただ疑わしいと思うので「疑わしい」と言っているのだ。それだけのことで、どなたかとも論じ合おうとも考えてはいない。ただ単に自分の思うところをご披露しているつもりなのだ。