【掲載日:平成22年2月12日】
繩の浦ゆ 背向に見ゆる 沖つ島 漕ぎ廻る舟は 釣しすらしも
船は 内海を行く
人麻呂の 歌の数々
思い出し 反復し
詠いし 人麻呂の心を思う航海が続く
〔島が 舟が 釣り人が 見える〕
繩の浦ゆ 背向に見ゆる 沖つ島 漕ぎ廻る舟は 釣しすらしも
《縄の浦 その向こ見える 沖の島 漕いでる船は 釣りしてるらし》
―山部赤人―〔巻三・三五七〕
〔あの船 都へ戻るのであろうか〕
武庫の浦を 漕ぎ廻る小舟 粟島を 背向に見つつ 羨しき小舟
《武庫の浦 漕いでく小船 羨まし 淡路背にして 都へ行くよ》
―山部赤人―〔巻三・三五八〕
〔旅心 懐かし心〕
阿倍の島 鵜の住む礒に 寄する波 間なくこのころ 大和し思ほゆ
《阿倍島で 磯にしょっちゅう 波寄せる ひっきりなしに 大和が恋し》
―山部赤人―〔巻三・三五九〕
潮干なば 玉藻刈り蔵め 家の妹が 浜づと乞はば 何を示さむ
《潮干たら 綺麗な藻刈り 持ち帰ろ 家で待つ妻 土産は言たら》
―山部赤人―〔巻三・三六〇〕
〔陸路なら 泊まり先で こう云うことに 出くわしたやもしれぬ〕
秋風の 寒き朝明を 佐農の岡 越ゆらむ君に 衣貸さましを
《佐野の岡 越えてくあんたに 服貸そか 秋風寒い 夜明けやよって》
―山部赤人―〔巻三・三六一〕
〔名乗藻か 浜娘子に 詠いかけるも一興〕
みさごゐる 磯廻に生ふる 名乗藻の 名は告らしてよ 親は知るとも
《海草も 言うてるやんか 名告りやと あんたも名告り 親に露見ても》
―山部赤人―〔巻三・三六二〕
みさごゐる 荒磯に生ふる 名乗藻の よし名は告らせ 親は知るとも
《荒磯の なのりそみたい 名告ってや 親知ったかて かめへんやんか》
―山部赤人―〔巻三・三六三〕
〔昔は 意識の塊の末 歌が生まれた
今は かくも 冗談めかしに 気楽に詠える〕
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