令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

赤人編(4)千鳥しば鳴く

2010年03月02日 | 赤人編
【掲載日:平成22年1月29日】

ぬばたまの けぬれば 久木ひさきふる 清き川原に 千鳥しば鳴く

【喜佐谷からの象山の眺め】



「わかったぞ」 
突拍子とっぴょうしもない声が 上がる
「そうじゃ  そうだったのか なるほど」
紀伊国行幸みゆきの 献上歌を反芻はんすうする 赤人
おのがものとする歌は 如何にすれば・・・
己が心を 素直にうたうには・・・
道を探っていた赤人に  歌が教えている
〔出来てるではないか
 長歌を受けつつ 反歌の心 別を見て
 隠されていたのだ  己が心が・・・〕
人麻呂の重圧が  遠のいて行く

神亀じんき二年〔725〕夏五月
吉野離宮 
山川を背に 赤人は うた
その声は  自信にみなぎり 
川のとどろきを打ち消すかに響く
やすみしし わご大君おほきみの たからす 吉野の宮は たたなづく 青垣隠あおかきごもり 
なみの 清き河内かふちそ 春べは 花咲きををり 秋されば 霧立ち渡る 
 
天皇おおきみが おおさめなさる 吉野宮 かさなる山に 囲まれて 水の清らな 川淵かわふち
 春には花が 咲きあふれ 秋に川霧 立ちこめる》
その山の  いやますますに この川の 絶ゆること無く 
ももしきの 大宮人は 常にかよはむ

《山益々に 繁るに 川滔々とうとうと 絶えんに 大宮人ひとはずうっと かよてくる》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二三〕 
み吉野の 象山きさやまの 木末こぬれには ここだも さわく 鳥の声かも
《吉野山 象山きさやま木立ち こずえさき 鳥がいっぱい さえずる朝や》
                       ―山部赤人―〔巻六・九二四〕 
ぬばたまの けぬれば 久木ひさきふる 清き川原に 千鳥しば鳴く
よる更けた 久木えてる 川原かわはらで 千鳥鳴き声 しきりと響く》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二五〕 
長歌と繋がりのない反歌 
虚を突かれたかの  沈黙
やがて  
みかどの 大きなうなづきを見て
どっと湧く歓声 
爽やかな余韻よいんが広がる
その反歌は 儀礼にのっとった長歌を離れ 
別の美をうたいあげていた

辞を低くし 謙虚をにじませる 赤人




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