令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

赤人編(2)秋津の小野の

2010年03月09日 | 赤人編
【掲載日:平成22年1月21日】

やすみしし わご大君おほきみは み吉野の 秋津あきづ小野をのの 野のには・・・


神亀じんき元年〔724〕春三月
聖武のみかどが 立たれ 初めての行幸みゆき
吉野 秋津野あきつのの狩である

赤人は  宮廷歌人の一角に その座を占めていた
柿本人麻呂  
宮廷歌人としてのその名 
雲突く峯の如くに そびえている
〔ほとばしる魂が 
 人麻呂殿の歌には あふれている
 けいが眼前に迫りくる 対句ついくの勢い
 重厚さ 神々こうごうしさ
 人麻呂殿が 名を成した 寿ことほぎ長歌の数々
 陶酔の長歌を受け  反歌締めの 見事さ〕
後を踏襲つぐは自分だと 赤人は 自負していた
〔少しでも  近づかねば ならぬ
 切磋琢磨せっさたくまが 求められよう
 目指すは  第一人者
 それには 更なる へりくだりが・・・〕

みかどのおめし 赤人はうた
やすみしし わご大君おほきみは み吉野の 秋津あきづ小野をのの 
野のには 跡見とみすゑ置きて み山には 射目いめ立て渡し
 
天皇おおきみは 吉野秋津あきづの 野に出られ 足跡追人おいを 野に置いて 待ち伏せ弓を 山に置き》
朝猟あさかりに 鹿猪ししおこし 夕狩ゆふかりに 鳥み立て 馬めて 御猟みかりそ立たす 春の茂野しげの
《朝は獣を  追いたてて 夕べは鳥を 飛び立たせ 狩りをなされる 春の野原で》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二六〕 
あしひきの 山にも野にも 御猟人みかりびと 得物矢さつや手挟たばさみ 散動さわきたり見ゆ
《山や野に 弓矢を持った 狩り人が あちこちって 働いとるぞ》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二七〕 
居並ぶ官人 歌人うたびとの仲間から
称賛の言葉が あふれ出る
みかども 満足の様子
ほっとする赤人の胸に  影がさす
〔わしの歌は  形だけの真似に過ぎない
 人麻呂殿のは  身も心も 歌そのもの〕
〔それに 人麻呂殿がうたったあと 
 座は静まり  ややあっての称賛嵐と聞く
 しかるに  いまは 形通りの賛辞があり
 やがて  座は 雑語の場と変わる〕
〔人麻呂殿を  高嶺とすれば
 わしはまだ ふもとを歩くにすぎない〕

そこには  自負しつつも 
自らの才を良しとしない  赤人がいた



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