令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

赤人編(3)鶴鳴き渡る

2010年03月05日 | 赤人編
【掲載日:平成22年1月26日】

若の浦に 潮満ち来れば かたを無み 葦辺あしへをさして たづ鳴き渡る

【片男波海岸 遠景雑賀崎】

時代は  既に変わっていた
天皇おおきみが 現人神あらひとがみとされた 壬申じんしんの世
天武の大帝たいてい あとべられし持統帝
御前ごぜんでの 歌み儀式は 
山をめ 川を褒め 宮を褒める
これ  すなわち 
みかどそのものへの賛歌に他ならなかった
み儀式は 引き継がれ 
山川褒めは  為される 
重きは  景をほめるにあり 
みかどへのあがめ 色合いは薄い
行幸そのものも  君臣和しての遊覧
帝も  臣への 近づきを 旨とせられる

神亀元年冬十月 紀伊国きいのくにへの行幸みゆき 
一行は 玉津島頓宮とんぐう背後の山に登り 南に展開する 島々 潮の満ち干を 眺めていた 
澄んだ赤人の  歌声が 流れる

やすみしし わご大君おほきみの 常宮とこみやと 仕へまつれる 雑賀野さひかのゆ 背向そがひに見ゆる 沖つ島 
天皇おおきみの づうっと続く 宮処みやどこと みんな仕える 雑賀野さいかのの 向こうに見える 沖の島》 
清きなぎさに 風吹けば 白波さわき  潮れば 玉藻たまも刈りつつ 
神代より しかたふとき 玉津島山たまつしまやま

《そこの清らな  渚では 風が吹いたら 波立って 潮が引いたら 玉藻刈る
 神代からして 尊いで ほんまええとこ 玉津島山たまつしま
                         ―山部赤人―〔巻六・九一七〕 

沖つ島 荒磯ありその玉藻 潮干しほひ満ちて いかくりゆかば 思ほえむかも
《沖の島 荒磯ありその玉藻 満潮しお来たら 隠れてしまう 惜しいこっちゃで》
                         ―山部赤人―〔巻六・九一八〕 
若の浦に 潮満ち来れば かたを無み 葦辺あしへをさして たづ鳴き渡る
《潮満ちる 干潟うなる 若の浦 葦ある岸へ 鶴鳴き渡る》
                         ―山部赤人―〔巻六・九一九〕 

【権現山より「若の浦」を望む】

惜しみない賛辞が  広がっていく
〔違う  違うぞ 赤人
 これは われの歌ではない〕
 
赤人は  気付いていない
後世 絶賛を受ける 心になおな反歌の誕生を
人麻呂を 追随する懸命さが 目をおおっている





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