令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

赤人編(9)辛荷の島に

2010年02月12日 | 赤人編
【掲載日:平成22年2月16日】

たま刈る 辛荷からにの島に 島廻しまみする にしもあれや 家おもはざらむ

【唐荷島三島 遠景家島 室津賀茂明神より】



韓泊からどまりを出た船 
次の停泊地 室津むろつへと向かう
沖合い  家島群島の島影
行く手に 三っつの唐荷島からにじま
地ノ唐荷  中ノ唐荷 沖の唐荷
暗礁多い  陸寄りを避け 
船は 地と中のあいだを進む
夕日に染まる西空  
振り返る 大和島嶺しまねは はるか 霞の彼方

あぢさはふ いもれて 敷栲しきたへの まくらかず 
桜皮かにはき 作れる舟に 真楫まかじき わがれば
 
《お前の顔も  見られへん 安らか眠りも 出けん旅
 桜の皮を 張った船 梶いっぱいに 漕いできた》 
淡路あわじの 野島のしまも過ぎ 印南都麻いなみつま 辛荷からにの島の 島のゆ 吾家わぎへを見れば 
青山の 其処そことも見えず 白雲も 千重ちへになり
 
《淡路の島の 野島過ぎ 印南都麻島いなみつましま 後にして 唐荷の島の 間から 家のあるほう 見たけども
 山つらなって 分かれへん 雲重なって 見えやせん》
むる 浦のことごと 行きかくる 島の崎々 くまも置かず 思ひぞわが来る 旅の長み
《漕ぎまわり行く 浦々や 通りすぎてく 島々で お前のことを 思い出す 旅の日数ひかずが なごなったんで》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四二〕 
たま刈る 辛荷からにの島に 島廻しまみする にしもあれや 家おもはざらむ
辛荷島からにしま エサ捕る海鵜うみう 島めぐる 呑気でええな わし家恋し》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四三〕 
がくり わがれば ともしかも  大和やまとへのぼる 熊野くまのふね
《島伝い 船で来たなら 熊野くまのぶね 大和行くんや うらやましいで》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四四〕 
風吹けば 浪か立たむと 伺候さもらひに 都太つだ細江ほそえに うらがく
《風が出て  浪立ってくる 風待ちに 細江の浦で 船足止めや》
                         ―山部赤人―〔巻六・九四五〕 

赤人の歌に  景が 同化していく 
心は おおやけしがらみから 自由となり
わたくしの執着からも 解きはなたれていく
さながら  景と遊ぶかの歌心





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