令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

人麻呂編(10)大和島見ゆ

2009年08月07日 | 人麻呂編
【掲載日:平成21年8月18日】

天離あまざかる ひな長道ながぢゆ 恋ひれば
            明石のより 大和島やまとしま見ゆ

慶野けいの松原、淡路島西岸】


長門をた 人麻呂の公務たび
大宰府への 副次報告を終え 
の津からの船は 難波なにわの津を目指していた
時化しけの怖さはあるが 沿岸伝いの船旅は
陸路の難渋なんじゅうを思えば 安全 この上ない
久方ぶりの 大和の地 
はやる心の 人麻呂 

(まだ 見えぬのか 大和は)
稲日野いなびのも 行きぎかてに 思へれば 心こほしき 可古かこしま
《退屈な 印南野いなみのつづく おお見えた 加古の港や 待ってたんやで》
                         ―柿本人麻呂―(巻三・二五三)
(淡路島 大きくなってきた おお 賑やか 賑やか)
飼飯けひの海の にはくあらし 刈薦かりこもの みだづ見ゆ 海人あまの釣船
飼飯けひうみは いだみたいや つり船が いっぱい出てきた こら大漁や》 
                         ―柿本人麻呂―(巻三・二五六)
(うわぁ 大和や 大和や)
天離あまざかる ひな長道ながぢゆ 恋ひれば 明石のより 大和島やまとしま見ゆ
《長い道 恋し恋しと 明石来た 海峡かいきょう向こうに 大和の山や》
                         ―柿本人麻呂―(巻三・二五五)

小躍こおどりしたい気持ち
それとは 裏腹うらはら
人麻呂の胸に 苦いしるが わだかまる

(このまま 地方の官吏かんりで終わるのか
 あの ほまれは 夢だったのか
 天武帝に召され「大王おおきみは 神にしあれば」と  うたったのは わしだ
 持統帝の覚えは 目出たかった 
 吉野行幸みゆき「山川も依りてつかふる」は絶賛を得た
 皇子達への き歌の数々
 宮めの 寿ことほぎ歌・・・
 あれは 真のわしであったのであろうか 
 時移り 世は変わり 宮廷一の歌人 柿本人麻呂は どこへ行ったのじゃ 
 友もいない ぶん不相応な扱いを受けた わしに 誰も寄りはしなかった
 もう 大和はわしの住むところではないのだ) 

石見いわみは い あそこは 人が住んでいる
 依羅娘子よさみのおとめが待っている・・・)

人麻呂の目に 大和島山が にじ





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