この記事は2008年9月に書いたものです。
私のブログは原則として漫画感想ブログです。
ドラマ感想ブログではありません。
銭ゲバのドラマは全然観ていません。
この記事を書いた時に2009年にドラマ化されるということも全く知りませんでした。
ドラマを観てここに来て下さる方がたくさんいらっしゃいますが、これは純粋に漫画のみの感想でして、漫画のラストも少し書いてます。(ドラマのラストが漫画と同じかどうかは知りません。)
ネタバレが嫌いな方はどうぞ読まないで下さいませ。
(2009年2月19日)
(週刊少年サンデー 1970~1971年掲載)
これね、たぶんリアルタイムで読んでいた筈なんです。
問題作だってことで注目されてたことも知ってるんです。
・・・が、内容はほとんど覚えてなかったんです。
たぶん、当時はあんまり好きじゃなかったんでしょう。
これって、少年漫画というよりは青年漫画ですよ。
小学生ぐらいの子供がこれ読んでどこまで深く理解出来るか・・・難しいですよね。
掲載されたのは1970年。
1970年というと、そうです、「大阪万博」の年なんです。
大阪万博は<明るく希望に満ちた未来世界>っていうイメージだけど、これは正反対。
暗くて絶望的な世界です。
あの時代って、明るい部分と暗い部分が絶妙にブレンドされた世界だったような気がします。
光が強ければ強いほど闇は濃くなるっていう感じでしょうか。
「20世紀少年」(浦沢直樹)でケンヂたちが憧れた<大阪万博>。
だけど・・・
その頃高度成長期で浮かれていた人々の谷間で喘いでいた人々もいた。
ま、そんなことはたぶん1970年当時のほとんどの小学生は考えずに万博に憧れ、行けない子供も雑誌などでその情報を眼を輝かせて読み漁っていたんじゃないかな。
あの不思議な暗さはある年齢以上にならなければちょっとわからないかもしれない。
少なくとも、当時の私はわかってなかったような気がする。
・・・で、「銭ゲバ」なんだけど、
大人になって読み返すと、異様なまでの迫力に打ちのめされてしまいました。
「アシュラ」もそうなんだけど、
ジョージ秋山の絵は美しいとかデッサン力が特別スゴイってわけでもないのだけど、
とにかく、読者にぐいぐいと迫ってくる迫力がスゴイ。
例えば、幻冬舎文庫版の下巻191ページからの
蒲郡風太郎と大学伸一郎の会話中に風太郎を殺しに来る男の描写。
12ページも使って動と静の緊迫のシーンを見事に表現している。
222ページからの風太郎が窮地に追い込まれ、波の荒い岸壁に立って考え込むシーンも
波の「ドドドドドドドド」
という擬音の描写が見事に風太郎の心の不安を表し、読者にまで風太郎の心臓の鼓動を体感させるようなタッチだ。
貧乏ゆえに母を亡くした少年が、<金=幸せ>だと思い込み、金のためなら手段を選ばない人間になる。
だが金を手に入れ、権力も手に入れ、若く美しい女も手に入れたが、結局は自殺という道を選ぶ風太郎。
幸せは金では買えない・・・というのがテーマといえばテーマなんだろうけど、
ラストがね、なんとなくもやもやしてしまう。
新聞社から「人間の幸福について」というテーマで原稿を依頼され、
いろんなことが頭に浮かび、挙句に自殺してしまう風太郎。
いつも私だけが正しかった
この世に真実があったとしたら
それは私だ
私が死ぬのは悪しき者どもから私の心を守るためだ
私は死ぬ
私の勝ちだ
私は人生に勝った
風太郎が最期に書き残した言葉・・・これは小学生ぐらいには理解出来ないと思うんだけどね、
当時は大学生が漫画を読むって話題になってた頃だから、大学生向けのメッセージだったのかなあ?
いずれにせよ、この言葉・・・さてどう解釈すればよいのやら。。。
当時、作者は27歳。
いろんな想いを抱えてこれを描いてたのではないかと思う。
同じ時期に「アシュラ」も描いてるしね。
今、作者はかつて自分が描いた「銭ゲバ」をどう思っているだろうか?
これらの作品を生み出したからこそ「浮浪雲」が出来たのではないか・・・そんなことをふと思った私です。
私のブログは原則として漫画感想ブログです。
ドラマ感想ブログではありません。
銭ゲバのドラマは全然観ていません。
この記事を書いた時に2009年にドラマ化されるということも全く知りませんでした。
ドラマを観てここに来て下さる方がたくさんいらっしゃいますが、これは純粋に漫画のみの感想でして、漫画のラストも少し書いてます。(ドラマのラストが漫画と同じかどうかは知りません。)
ネタバレが嫌いな方はどうぞ読まないで下さいませ。
(2009年2月19日)
(週刊少年サンデー 1970~1971年掲載)
これね、たぶんリアルタイムで読んでいた筈なんです。
問題作だってことで注目されてたことも知ってるんです。
・・・が、内容はほとんど覚えてなかったんです。
たぶん、当時はあんまり好きじゃなかったんでしょう。
これって、少年漫画というよりは青年漫画ですよ。
小学生ぐらいの子供がこれ読んでどこまで深く理解出来るか・・・難しいですよね。
掲載されたのは1970年。
1970年というと、そうです、「大阪万博」の年なんです。
大阪万博は<明るく希望に満ちた未来世界>っていうイメージだけど、これは正反対。
暗くて絶望的な世界です。
あの時代って、明るい部分と暗い部分が絶妙にブレンドされた世界だったような気がします。
光が強ければ強いほど闇は濃くなるっていう感じでしょうか。
「20世紀少年」(浦沢直樹)でケンヂたちが憧れた<大阪万博>。
だけど・・・
その頃高度成長期で浮かれていた人々の谷間で喘いでいた人々もいた。
ま、そんなことはたぶん1970年当時のほとんどの小学生は考えずに万博に憧れ、行けない子供も雑誌などでその情報を眼を輝かせて読み漁っていたんじゃないかな。
あの不思議な暗さはある年齢以上にならなければちょっとわからないかもしれない。
少なくとも、当時の私はわかってなかったような気がする。
・・・で、「銭ゲバ」なんだけど、
大人になって読み返すと、異様なまでの迫力に打ちのめされてしまいました。
「アシュラ」もそうなんだけど、
ジョージ秋山の絵は美しいとかデッサン力が特別スゴイってわけでもないのだけど、
とにかく、読者にぐいぐいと迫ってくる迫力がスゴイ。
例えば、幻冬舎文庫版の下巻191ページからの
蒲郡風太郎と大学伸一郎の会話中に風太郎を殺しに来る男の描写。
12ページも使って動と静の緊迫のシーンを見事に表現している。
222ページからの風太郎が窮地に追い込まれ、波の荒い岸壁に立って考え込むシーンも
波の「ドドドドドドドド」
という擬音の描写が見事に風太郎の心の不安を表し、読者にまで風太郎の心臓の鼓動を体感させるようなタッチだ。
貧乏ゆえに母を亡くした少年が、<金=幸せ>だと思い込み、金のためなら手段を選ばない人間になる。
だが金を手に入れ、権力も手に入れ、若く美しい女も手に入れたが、結局は自殺という道を選ぶ風太郎。
幸せは金では買えない・・・というのがテーマといえばテーマなんだろうけど、
ラストがね、なんとなくもやもやしてしまう。
新聞社から「人間の幸福について」というテーマで原稿を依頼され、
いろんなことが頭に浮かび、挙句に自殺してしまう風太郎。
いつも私だけが正しかった
この世に真実があったとしたら
それは私だ
私が死ぬのは悪しき者どもから私の心を守るためだ
私は死ぬ
私の勝ちだ
私は人生に勝った
風太郎が最期に書き残した言葉・・・これは小学生ぐらいには理解出来ないと思うんだけどね、
当時は大学生が漫画を読むって話題になってた頃だから、大学生向けのメッセージだったのかなあ?
いずれにせよ、この言葉・・・さてどう解釈すればよいのやら。。。
当時、作者は27歳。
いろんな想いを抱えてこれを描いてたのではないかと思う。
同じ時期に「アシュラ」も描いてるしね。
今、作者はかつて自分が描いた「銭ゲバ」をどう思っているだろうか?
これらの作品を生み出したからこそ「浮浪雲」が出来たのではないか・・・そんなことをふと思った私です。
私もこのへんは小学校低学年の頃読み齧って印象深くて去年~今年「アシュラ」「銭ゲバ」「光る風」(山上たつひこ)と文庫を買ってしまいました。
ジョージ秋山さんの描写力、凄いですよね、、、すべて丸ペンで描いていると聞いた事があります、それも独特の画面に関係しているのかもしれないです。
蒲郡風太郎は顔の左右で表情が違いますよね、左側の気弱そうな傷ついた幼い頃のままの少年の顔、左向きの横顔がときどき挿入される。切ないです。
同じ作者の「ほらふきドンドン」も好きでした。こんなに面白いものを描く同じ人が「アシュラ」や「銭ゲバ」など陰惨なものを描くことが不思議で作者名を覚えました。
仏教に傾倒しているのかな、そういう感動的な作品もあるらしい、読んだ事がないんですけど。「アシュラ」の中にもアシュラに説教するお坊さんが出てきますよね。
「ほらふきドンドン」のドンドンは黒人の坊主だったと覚えてるんですが(顔が黒かったから)、今考えるとなぜそうした設定にしたのかと興味深いです。
「告白」も読みたい~~~
ああ、あのタッチは丸ペンでしたか。
丸ペンだけで描く人って結構個性的な人に多いような気がします。
あの表情、ホント切ないです。
怒ってる様な泣いているような・・・ああいう表情でなければ風太郎の心情は表現出来ないんだと思います。
「ほらふきドンドン」結構好きでした。それが「アシュラ」なんていうのを描いてるのって驚きでしたけど、今、考えると、どちらも<ジョージ秋山>テイストどっぷりなんですよね。
あの坊主、顔が黒いのが不思議だったけど、どうしてああいう設定にしたのでしょう??何か深い意味があったのかもしれませんね。
仏教的な雰囲気もあるし、「博愛の人」とかになると哲学的な感じもしました。最近では「聖書」の漫画を描いてるらしいですね。
私も「告白」読んでみたいです~~!
今度是非読んでみます。
いつもながらありがとうございます!m(_ _)m
この作品、暗いし、ちょっと読みにくい印象があるかもしれないけど、内容が深くてやっぱり名作と言えるものだと思います。
是非、読んで下さいませ。
そして感想など書いて下さるととっても嬉しいです。
子供の頃とかの話は印象に残ってます。貧乏でいじめられたんだよね。最後は全然覚えていませんでした。自殺しちゃうんだ。今読んだら感想が全く違うマンガになりそうですね。
PTAなどが騒いだから有名になったけど、作品自体が読者の子供たちに人気があったのかどうか、今考えると疑問ですね。
>今読んだら感想が全く違うマンガに・・・
そうなると思います。
これは子供と大人では受け取り方がかなり違ってくると思います。
私もどういう風なドラマになるのか楽しみです。
そこが気になる!