3月28日、津山でキハ52やキハ58、DE50-1などに出会った帰り、JR西日本・岡山駅で見た真っ黄色の117系。山陽地区で走っていることは知っていましたが、目の当たりにすると正直、ショックです。のっぺらぼうな塗装。私の知り合いの中には「末期色」と表現する人もいます。瀬戸内の夏の日差しを浴びたら、目が痛くなりそうな色ですね。先日の北陸での青色475系同様、まだもの珍しさが先に立ちますが、すでに山陽路では115系の同色も走っており、この色ばかりになると、見るのも嫌になりそうです。
先日の記事の繰り返しになりますが、JR西日本というところは、つくづく鉄道への愛情の薄い会社だ、と思えてなりません。29日に同社の運輸のOBとお話をする機会がありました。本社のかなりの地位で退職された方です。その方も、車両の保守、整備というものは、その車に対する愛着がなければできない、とおっしゃっていました。形式を問わず単純に一色にしてしまう発想に「それで愛着を持って点検したり整備したりできるのか」と。単に業務として機械的に与えられた仕事をこなす、というのならば保守・点検は作業としてはできるでしょう。
しかし、それはマニュアルに沿って手順通りのことをするだけ、ということになりはしないでしょうか。明治初期に近代警察の創設に全力を注ぎ、日本警察の父といわれる大警視・川路利良の言葉に「声無きに聞き 形無きに見る」というものがあります。鉄道車両のみならず航空機や自動車の安全運行を目的とした点検・保守はまさにこのような精神で取り組んでこそでしょう。それを支えるのは社員の車両や飛行機への愛着、仕事への情熱といったものではありませんか。
私はJR西日本の一線で働かれている社員の皆さんに鉄道や仕事への愛着、情熱がないとは思いません。ただ、このように車両を美しくもない(私からすれば醜い)塗装にするような扱いを会社がしていくと、社員の方々の愛着や情熱を削ぐ結果になっていかないかと危惧するのです。
先日来、大阪市営地下鉄鶴見緑地線で、ATSが故障した電車を運行させてポイントを破損するなどし、大幅なダイヤの乱れを生じさせた事故のことが新聞で報道されています。なんと電車には運転士、指導運転士が乗務し、運転指令には3人の指令員がいながらATS故障時の対応策に従わずに徐行すべき区間を通常速度で運転して「速度計もみなかった」というミス、ポイントが故障したことを告げる警報が指令室に鳴り響いたのに「いつもと違う音がしたなあ」というだけで、中身も確認せずに警報を切っただけのミスなど、30件もの問題行為が明らかになっています。
これなど、鉄道は巨大な装置産業であり、信号やダイヤに従って運行していたら問題がないという発想に染まりきっていたのではないかと考えます。もし、異常が発生したらどう対処するのかということを誰も真剣に考えておらず、漫然と「作業」を繰り替えしていた日常の結果ではないでしょうか。
と、ここまで書いていて、きょう3月31日の毎日新聞夕刊(大阪)を見たら、1面トップに「緊急停止装置外し運行 JR西、ずさん点検 福知山線など」と大きく掲載されています。運転士に何らかの異常が起きた際に緊急停止させる「EB装置」が機能しない電車を2編成運行させていたと言います。うち1編成は、非常制動や主回路切断、警笛吹鳴、防護無線発報などをワンタッチで同時に行う「TE装置」も外れていた、と記事にあります。
車両点検整備の際に装置を外したりスイッチが切ったまま戻さなかったりしていたとのことです。
よい仕事をするためには、繰り返しますが、愛情や情熱がないとできません。
ローカル線車両の単色化は、鉄道というものへの愛着の無さの象徴ではないでしょうか。JR西日本も企業ですので、コストカットに取り組むのは当然です。それに異論はありません。ただ、カットしてよい経費と節約にはなるけれど触ってはいけない経費というものがあります。勝手な創造ですけれども、単色化を考案した人は「ATSやブレーキなどではない。色を変えても運転にはなんら影響がないだろう」と思われたのかもしれません。
私はこれが年間20億円、いや2億円の節約につながるのなら、鉄道への愛着、情熱は他の手段で確保することを前提に容認できます。しかし、報道によると年間2000万円の節約といいます。JR西日本の規模からいえば、わずか2000万円。そのために失ってはならないものを失うことにならないのか、と心配します。
にほんブログ村