田中眞紀子(シンガー・ソング・ライター)

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大阪の旅 その2

2011-03-30 02:32:40 | Weblog
<独パン大阪編>

21日、昼近くまで熟睡。
前日良く歩いて良くしゃべったからなぁ。
普通の私の3日分の活動量だったかなぁ。

1時30分より、大阪のピアノスタジオに入る。
ショパンの幻想即興曲などが音漏れして流れる中、声出し開始。
まぁったく声が出ない~~!
あんだけ寝たのに~~!
ホテルでこんなに爆睡できるなんて、滅多ないのに~~!

まぁ、しゃあないので、1時間半、頑張って身体から声を掘っくり出す。
最後の方には何とか出て来た。
部屋を出たら、小学生くらいの男の子とお母さんに、物凄い奇異の目で見られた。
「テロリスト~」って歌ってたので…



そのままクラブウォーターへ。
入口の外に、ギョロ目の井上卓がギターを抱えてしゃがんでいた。
久々の魔王さんとご挨拶である。
店に入ると、チバ君がリハをしていた。
震災でいとこさんを亡くされていて、胸が痛んだが、ステージを全うする強い意識がリハでも感じられて、その話はライブが終わるまでしなかった。話した時も間抜けな事しか言えなかったけど。
夜士朗と、なんともいえない嬉しい気持ちで、言葉少なく挨拶。
大阪のピアノシンガーmiccoさん、アイネシャンゼリゼさんと出会う。
マスターのマツケンさん、シングルマザーのブッキング担当アーウェイさん、また来ちゃいました!
なんだろう、この幸せ感は♪



アイネシャンゼリゼ

若い女の子らしい伸びやかな声と、いやにキレの良いアコギが心地よい。
なんていうか、素直にこっちも頑張ろうやって気になる、真っ直ぐパワーで押して来る。
打ち上げで色々話したけど、若いがしっかり意識を持っていて、力強い未来を彼女に見たな。


夜士朗

以前より、大人になったなと思った。
打ち上げでは夜士朗談義で一しきり盛り上がったな(笑)。その‘大人になった’の善し悪しについて。
ぶっ飛ばし感の強かった印象だが、私は重心が低くなった感があって良くなったなと思ったけど。
なにしろ私が‘大人’になっちゃったのでね。そういう方が好き。
でも、もっともっと腹をくくって、厚顔無恥的な威力が欲しいのも確か。
頑張って、厚顔無恥な大人にならなきゃ!(笑)


田中眞紀子

MCでも言ったが、敢えて東京の緊張感を持ち込む事で闘ってみた。
大阪も名古屋も中心に据えたのは「水を抜かねばならない」。
2月のワンマンで復活させた曲だけど、こんな形で歌うことになるとは、その時は思いもしなかった、1999年の東海村JCOの事故を綴った曲。
それから東北に対する思いとして、「断章~呼ぶ子と口笛」(石川啄木の詩)。独りよがりなのはわかっているが、それしか思いつかなかった。
「朱になれ」もキツいが、悲しみを背負った希望を込めて歌うしかなかった。
ミスもしたし自分としては不出来だったけど、声と言うより身体は鳴っていた気がする。


井上卓

実はこちらも、以前より大人になったなと思ったのだ。
夜士朗にしても井上さんにしても、観るのは4~5年ぶり。何かしら変わっていて当然だろう。
前の晩に金城さんと話したのと同じ事を歌っていたので、金城さんに聴いてもらって良かったな。
色んな世界で、色んな立場で、考えを同じくしている人がいる。
子供に対する真摯な眼差しを歌っていて、魔王の威力はそのままに、この人はなんて優しいんだろうと感動する。
みんなで頑張ろうより、目の前の一つを大事にすべきじゃないか、と。
打ち上げで話した時、以前より輪郭をはっきりさせたライブをやりたいと思っていて、今、過渡期なんだと言っていた。



micco

魔王の後に、絶妙の存在感。
ピアノが好きで好きで大好きなのね。古いピアノを整備する会社で働いてるそうです。
大阪人のぶっ壊れ方って、安心してぶっ壊れてて、だから安心してそれを見ていられる。
放っといたらいつまでも弾いていそうなピアノに向かう姿勢と、ファンタジックでありながら真をついた歌。
さぞかし田中眞紀子と対照的であったろうし、井上卓の熱き爆音をあっさり覆す不思議パワー。
こういう人は、関東圏にはいないなぁ。


チバ大三

miccoちゃんに触発されたのか、顔芸炸裂!
よしひで朗と井上卓が、腹を抱えて笑っている。
井上さんが「俺もこんな顔して歌ってるんかな」と言うので、「いや彼は顔芸に掛けてるし!」と答えておいた。
miccoちゃんに続いて爆笑爆笑のステージ。なんかこんなにチバ君のステージを素直に大笑いして見たのは、初めてな気がするな。
それでいて、何度も胸がつまる一瞬があり、どんなハードな曲も、ギターも歌も丁寧に発していて良く届き、ここのところ私が見たチバ君のステージの中では出色の出来。

というか、こんな時、悲しいかな、みんな良いライブをするんだ。
もちろん自分のは分からないけどね。
常に何かを深く考え、感じ、吟味し、表出させることを生業とする表現者の悲しい性。
皆が圧倒的な集中力でステージは進行し、夜士朗の絶妙な出演者の配置もあって、素晴らしいイベントになったと思う。
例えこの独パン1本の為に新幹線に乗ったとしても、全く後悔しなかっただろう。



後で東京組の間で話していたのは、大阪文化の幹の太さ。このしっかりした幹を基盤に、のびのびと枝を伸ばしている。だからこそのパワーがみなぎる。
東京は一人一人が1本で立ってるから、こういう大阪のパワーは感じられないし線の細さを否めないが、そこで頑張ったヤツは自分の1本の木をぶっとくしているという側面もある。
そんな風に文化は違えど、私は今、アイネちゃん以外の面々のような年代の‘実り’を感じている。
この実りを何らかの形で結集させて、若いアイネちゃん達に繋いで行けたらと思う。

次の日本の姿を、せめてこの夜は夢見たいと思った。