田中眞紀子(シンガー・ソング・ライター)

ピアノの弾き語りで活躍する田中眞紀子のブログサイト。ホームページはブックマークから。

変わる

2009-01-05 12:11:19 | Weblog
元旦の帰り道、電車の窓から、まるで、ウルトラマンのスペシウム光線を浴びるような朝日の攻撃に、吹き飛ばされそうになった。
眠かったのに眠れやしない。
健康な規則正しい毎日を送る為には、朝日を浴びるのがいいですよ、と、ラジオで医者が言っていたが、こんな朝日の浴び方は、果たして健康によいものか?
眠るに眠れず家の方まで来れば、目の覚める様に青い空に、目に染みるほど白い富士山。

生まれ変わるかな、私。

などと思うのだった。


自分だってその一人のくせに、「古参ばかりだな」と年越しライブのコメントに稲垣君が書いている通り、出演17組の内、新人さんは4組。
南さん、三上さん、ミチロウさんという大御所を除いた10組は、アピア15年生以上であろう。
そういうメンツを敢えて揃えたそうである。
多分、私を筆頭に、アピアで最も困った連中がステージに集っていた訳だ。
困った、どうしようもない面々。
だけど、このどうしようもない連中の、ちょっとばかしエライところわね。自分がどうしようもないっていうことから、決して目を反らしてないってことなんだ。
どうしようもなくダメな自分を放って、放ったものを否定されて、それでもそんな自分から目を反らさないて、この場に食らい付いてきた連中なんだ。
そこに、ママの眼差しがある。
新人さん以外の出演者に共通していたのは、ママの視線への意識。
亡くなってもまだ現存するママの意識。
それを知る我々が、それを体現して残し、新しい人達に、見ている人達に、伝えていかなきゃさ。
と、帰り際、小池さんと話した。
ママを語ったって、知らない人に伝わる訳がない。
伝えられるのは、私のライブという形でだけなのだ。

どんなダメなヤツでもさ、生きる価値があるのだ。
本気で生きて本気で伝えろ。
生きる価値をクリエイトするんだよ。

別に仲良くもしてなかった人もいるけど、そんなどうしようもない連中を、私は絶大に信用している。
仲間なんてスィートな関係じゃないけど、圧倒的に尊敬しているよ。

この日の私が選ぶベストパフォーマンスは、ダンスのサイトウカオリから小池真司へのステージ。
それを誉めてあげたら、ダンサー小池真司は、あれでいいのかい?とか言いながら、ママ仕込みだからね、と嬉しそうだった。
小池さんのステージは、いつもは凄い!と思うんだが、この日は熱い!って思った。
なんか凄く燃えていた。
この2つのステージに流れる時間は、非常に重く感じられたのだ。
重みは、カウントダウンのチバ君にも感じられたな。三上寛と石塚俊明のデュオに対し、全く遜色がなかった。
大物になってきたね、チバ君。
それをとても嬉しく思う。
それと同時に、こういう風に力を付けてきた連中が、もっと向上し花開ける場がないものかと思う。
遅いくらいだ。
このままでは絶対ダメだ。
そういう場をクリエイトする必要が絶対的に迫っている。今あるものに頼ってちゃいけないのだと、つくづく思う。
今年は、そういう何かを仕掛けたいと思ってるんだ。私に出来るのは小さなことだけど、案外仕掛けると、その後勝手に広がってったりするからさ。
その点は結構実績がある。(笑)

で、私はといえば、強くなっちゃったなと思ったね。ほんの何年か前なら、こんなポジションでのライブはとてもこなせなかっただろう。
8時間待って、朝4時のライブなんて。
出番前はそれなりにドキドキしていたが、本番でピアノの前に座った途端、ドスンと腹も座っちまってた。ほぼ平常心でライブを終える。昨年の30回近いステージ経験は伊達ではなかったってことだ。
強く図太くなったと思う一方、ドMの私は、その余裕感が非常に気に入らない。もっとガクガクアワアワしていないと、体感的に納得しない。そんな感覚が私にとってライブだったからね。
それが嫌で、もっと余裕が欲しくて、嫌ってほどライブをしてきたくせにね(笑)。
もう、この強さ図太さは、多分無くならないな。アワアワしてるのが私の唯一の可愛い気だって思ってたけど(笑)、そいつも失っちまったみたいだ。そして結果としてそのライブが、良いものであるとは限らない。
でももう、この私でやっていくしかないんだな。こういう自分をクリエイトしてきたんだから。
私が見て来た中でベストパフォーマンスだった坂井ライとの、ぶっつけのセッションも図々しくやってのけ、最後の最後まで気の休まる時のなかった年越しライブは終わった。


「エレベーター」という曲が自分で嫌なのは、この歌には一欠片の救いもないからだ。救いなき歌はこれまでもわりと作ってきたけど、「ニーズ」にしても「未明」にしても「米兵たちのイラク」にしても、それなりに救いになるシーンを一つくらい織り込んできた。
でも「エレベーター」には全くない。
だって、どこにも救いなんてないからだよ。
前にもこんな事を書いたっけね。
それでも、この曲を良いと言ってくれる人がいる。そう、何人かが声をかけてくれた。
それを救いに、身に付けてきた図太さを支えに、吐き気すら感じるこの曲を、しばらく歌っていくことにしよう。
多分現実は、もっと救いなき事態に陥っているのだ。
だけど、この日のMCでも言ったけど、こんな曲を5分で私に作らせるような出来事が、今年はどうか起こらないでと切に願う。
私はといえば、ピアノでも弾いて、何とかしていきますから。