あとだしなしよ

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赤線地帯

2006年09月03日 | 日本映画
赤線地帯
1956年、昭和31年 大映
監督:溝口健二
出演:若尾文子、三益愛子、町田博子、京マチ子、木暮実千代

昭和31年頃の売春防止法公布前の吉原を描いた作品で、平安時代の「山椒大夫」の奴隷屋敷をカメラの前に蘇らせた溝口健二が、当時の吉原の売春パブ「夢の里」の世界をリアルに再現した感じがした。(進藤英太郎が店の主人…)格調高い京都島原の置屋を描いた「噂の女」とは大分異なり、敗戦と売春への世論からのバッシングを受け不景気な吉原は、生活苦がにじみ出てくる。しかし老女中の浦辺粂子さんが言うには「昔、女たちは大名のお妃みたいに着飾っていた」という場所だったらしい…妖艶で高貴な役柄が多かった木暮実千代さんのオバサンの演技は面白く、病弱な夫に飯を食わせてあげる小さなラーメン屋のシーンは、大監督溝口と名カメラマン宮川一夫がこんな貧相なシーンを撮るのか…と思わせるほどのわびしい、さみしい感じが伝わって来ました。でもラーメンはとっても美味そうです。
一人息子に見放され発狂してしまう未亡人の売春婦のゆめ子が、狂ってしまった時に歌う「満州娘」が印象的…彼女は青春時代に満鉄で結婚式を挙げたそうである…

あたしゃ 十六  満洲娘
春よ 三月  雪解けに
インチュホワが  咲いたなら
お嫁に行きます  隣村
ワンさん待ってて 頂戴よ

ドラや 太鼓に  送られながら
花のマーチョに  揺られてく
恥ずかしいやら  嬉しいやら
お嫁 に行く日の  夢ばかり
ワンさん待ってて  頂戴ネ


作詞:石松秋二 作曲:鈴木哲夫

大日本帝国的プロパガンダか、大財閥のコマーシャリズムが生んだ曲か…
逆に客たちから金を稼ぎまくる売れっ子No1の若尾文子さんのやすみは、儲けた金でお店を開く…しかし、京マチ子さんは「雨月物語」で演じた、中を浮いているかのような平安時代のお姫様とはまったく逆の、関西のあけっぴろげな娘さんを演じています…芸が広いというか…飾らないというか…度量の深さを感じました。
売春小屋の女たちを描くことにより、当時の社会状況が見えてくる感じがしました。

溝口健二監督の遺作となってしまった作品…


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