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赤い殺意

2007年06月28日 | 日本映画
赤い殺意
1964年、昭和39年、日活
監督:今村昌平
出演:春川ますみ、西村晃、露口茂

舞台は冬の仙台。東京オリンピックの年だが、東北本線では蒸気機関車が走る。バサマ達の会話から、前時代的なノロイや風習などがまだ残っている田舎の物語だという印象が与えられる。「わだしって、どしてこんなフシアワセなんだろう」と言う主婦が主人公。この主婦はおそらく、もと寄生地主であったであろう比較的大きな家のおめかけ腹の娘で、幼い頃から本妻にいじめられていた。その本妻の息子におそらくムリヤリやられて子供ができたため籍も入れてもらえず一緒に暮らしている女である。で、この主婦がほっそりした薄幸美人タイプだと映画のタイトルどおりの悲劇とサスペンスになるのでしょうが、春川ますみさんはジャイ子的(ゴメンナサイ!)健康肉体美なので悲劇になりきらず、どこか抜けててユーモラスな今村重喜劇にぴったりとハマった気がする。キャスティングが大成功という感じでした。その主婦の家に包丁をもった強盗がしのびこんでドラマは始まる。その強盗犯の露口茂(太陽に吠えろのヤマさんの若き頃ですな…)さんは心臓にヤマイがある元ジャズトランぺッターで夢破れたまっくらな役で、彼女に対して強盗と強姦と暴行と恐喝と恫喝を行う。彼女を暴行しようとして、必死の抵抗をする彼女に、"アイロンを顔につけるぞ"と脅し、そのおびえた顔がアイロンに映ったシーンはとても印象的だった。以来彼女に情が移ったこの男はしつこく彼女につきまう。自分を主張できない春川さんは苦しみのあまり自殺未遂を何回も繰り返すという筋で話が進んで行く。そのなかでも、春川さんと強盗犯の汽車でのもみ合いのシーンは、まさに迫真の演技といった感じで良い場面だと思いました。また、春川さんが列車から暗闇の中に落とされて宙を舞いスクリーンのヤミに消えて行くシーンは、“2001年宇宙の旅”でHALの制御する宇宙艇に突き飛ばされて宇宙空間を舞うゲーリー・ロッグウッドのようで印象に残るシーンで、どうやって撮影したんだろうと思いました。メガネオンナの交通事故のシーンでは、監督のこの女への悪意…というより殺意が感じられ少し驚きましたが…強い女に成長するという物語だという話ですが、そうは強くなったとは思えませんでした。彼女の性格に合った、彼女なりの強さなのだろうか…東京の娘が自分のことを“アタイ”と言っていた。最近聞かなくなったけれどそうでもないのかな。

第38回(1964年度)キネマ旬報ベストテン 第四位



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