あとだしなしよ

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ふるさとの歌

2006年11月01日 | 日本映画
ふるさとの歌(50分・無声映画・モノクロ)

1925年、大正14年 文部省/日活
監督:溝口健二
出演者:木藤茂、木枡二郎、伊藤寿栄子、辻峯子
場所:フィルムセンター

主人公の青年は、生まれ育ったふるさとで馭者(ギョシャ…馬車の運転手)の仕事をしていた。頭は良く小学校では主席だったが、家の都合(貧乏)の為に進学を断念して馭者をして家計を助けている。そんなある日、『みやこ(都)』から進学した同級生達が帰って来た。電車内での彼らは騒ぎ放題。"じゃんけん、しっぺ"をしている。(私のガキの頃と変わんないや…)さらに、注意されると「ぼくらが騒ごうがどうしようが、ぼくらの自由だ!」なんてことを言う…昔も今もかわんないのねの馬鹿ガキ状態。田舎の駅に着いた彼らは馭者をしている彼を見つけて、ばかにする。「いくら小学校で主席でも馭者ぢゃな…ヘヘ」。彼は悔しくてたまらない…
彼の家、貧しい小作人の家。京都ナンバーの車が映っていたので、京都のどこかの田舎かと思える…大正時代の農家は江戸時代とあまり変わらないよう。農具も現代化されていない。特に女性の服装は江戸時代そのものに見える。彼は両親に進学したいともう一度告げるが、両親に優しく諭され元の仕事に戻って行く…
そんな彼を心配して、彼の友人(裕福な農家の息子)とその妹は、主人公とその妹をハイキングに誘う。そこである子供が誤って川に落ち、溺れる。主人公が果敢に川に飛び込み横泳ぎし、子供を救出する。助けたのは外国人の子供。彼の親は助けたお礼にと大金を差し出すが、彼は受け取らない。外国人はもろにブルジョワの服装をしている。
そして村では、例の悪ガキどもが田舎暮らしに飽き飽きして、パーティーをはじめる。都会で一儲けした成金趣味まるだしのマルブチメガネ君がリーダである。(ロイドメガネといふのか。)村の娘達を呼び集めて、マンドリンを伴奏にダンスに興じる彼ら…退廃が、デカタンスがのどな村に忍び寄る。遂に彼らに感化された娘が都(みやこ)に家出をしたり、村の集会をサボったりする事態まで発生する。
ある日、親友の妹と彼の妹も、彼らに誘われる。手に手を取り合ってワルツを踊る彼ら。女性陣はまんざらでもない感じ…しかーし、それを見た主人公は大激怒!彼らのパーティに殴り込みをかけ、男女の手をふりほどいて演説をするノダ!!

君たちはぬわんだ! 田舎にさういふものはゐらなひ!
君たちのやうに、みながみな都会に出てどうなるといふのだ!


悪ガキたちは神妙に聞いている…まさか…君たち…

農家がゐなくなってしまうではないくわ!
君たちはセンセヒの言葉を忘れたのくわ!
ものの豊かさより心の豊かさが大切ではないのくわ!!

参考:歴史的かなづかひ入門

成金メガネ君改心!(説得されちゃうのね…)悪ガキ達も改心!!
彼は再会した大金持ちの外人のからの進学への援助も断り、ふるさとで農家を継ぐ。一介の農民として汗を流し、農業を極めることを固く決意したのである。

完!


現存するもっとも古い溝口作品だそうで、この出来を見るとこれ以前の作品のレベルもすこぶる高そう。文部省が日活に作らせた映画なので、ストーリーはアレなんですが、でもお話もなかなか面白かった。溝口のカメラも、もうモダンな出来で飽きない。少し上から土間を写したシーンや、動いている馬車を運転している主人公を、動いている馬の上?から撮ったシーンなど、自由自在に見えました。主人公の役者がドーランの白塗りでクマみたいなメイクをしているのは、この時代の流行なのでしょうか。間に挿入されるセリフの画面デザインに楽譜が描いてあったりしたのですが、音符が小鳥だったりして可愛かったです。



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