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夜の女たち

2006年11月12日 | 日本映画
夜の女たち
1948年、昭和23年、松竹
監督:溝口健二
出演:田中絹代、高杉早苗、角田富江、藤井貢
場所:フィルムセンター

 終戦後3年の大阪を舞台にした映画。ロケシーンも多かったようで、まだガレキが残るスラムみたいな街並が見られる。幸せな結婚をし子供にも恵まれた普通の女性が、戦争、敗戦、混乱の後にパンスケ(街娼)にまで落ち、その中で人間性を失ったような生活を続けて行く様が描かれていた。松竹ホームドラマから滑り落ちていく女達。娼婦の収容所や無法地帯の女達の描写などが生々しく描かれていた…

 空襲で焼けだされ、朝鮮に行っていた夫を無くし、貧困の為に子供も病死させてしまった女(田中絹代)。それとは知らずアヘンの売人に囲われていた彼女は、実の妹と男との関係を見て、ヤケクソになり夜の街に立つ女になる決心をする…パンスケになってしまった彼女は以前と別人。シマのアネゴみたいな存在になっていた。彼女は怒鳴る。『世の中の男という男と寝て、病気をうつしまくって、そいつの鼻を落として、日本中をXXXな男にして、世の中をメチャクチャにしてやる!』

 その実の妹(高杉早苗)。終戦を外地(朝鮮)で迎えた彼女は引き上げ時にひどい目に会ったと語る。帰国後は日本でダンサーに。姉の男と関係を持ってしまった彼女は彼の子を宿す。男にはあっさり下ろせと言われる。彼女は出産を望むが、早産とバイドクの為に流産してしまう。

 死んだ夫の妹(角田富江)。まだ若く素直な少女だった彼女も悲惨な道へ。華やかなダンサーの義姉にあこがれ、家の有り金を掴んで家出する。大阪駅で声をかけられた男に連れ込まれ、酒を無理矢理飲まされ金を奪われ強姦される。さらに男の仲間のチンピラ女達に身ぐるみ剥がれ、大阪の街に放り出される…

 よく“戦後の混乱”と一言で片付けられているがこういった実態もあったのか…ラストシーンで同業者の女達にリンチを受けながら田中絹代は観客席に向かって叫ぶ。『もう、私のような女を出すな!二度と私たちのような不幸な女を出すな!…」闇に消える声…戦争の地獄を経てもまだ苦しみは終わらない。
 乙女の純潔を訴える女が出て来たのだが、娼婦達の彼女に対する圧倒的な罵声が印象的。田中絹代が映画の鬼と化すのはこのあたりからなのだろうか…アバズレのパンスケのアネゴで、収容所から塀を乗り越え有刺鉄線をかき分け脱走したりします。溝口監督が題材にしてきた、伝統的な花街や遊郭などとテーマは同じなのだろうが、バイオレンスでした。効果音で汽車の音(踏切)の演出があったことを、見た後に知りました…

第22回(1948年度)キネマ旬報ベストテン 第3位




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