あとだしなしよ

Japanese text only..
落書きブログです。
報道記事の全引用は元記事消去への対応です。m(__)m

我が戀は燃えぬ

2006年11月13日 | 日本映画
我が戀は燃えぬ
1949年 昭和24年 松竹京都
監督:溝口健二
出演:田中絹代、水戸光子、三宅邦子、菅井一郎、千田是也、東野英治郎、小澤栄太郎、松本克平、濱田寅彦、清水將夫、宇野重吉
場所:フィルムセンター 2006.11

明治時代の女性解放運動を志す岡山出身の女性、影山英子が主人公の歴史ものであった。物語は明治17年に始まり、まだ選挙も無く、人買いが親の同意で行われてるし、どこが近代国家ニッポンだんだよ…って感じでした。(四民平等とはいえ、天皇主権で政治の中心は貴族階級)この国初の政党である自由党が民衆である貧民達と結託し、各地で一揆が勃発した時代だったらしい。一揆のシーンも映像化され、蹶起する民衆の麻の布に毛筆での貧民の旗はカッコイイと思った…

オープニングは、岡山。旗を掲げた人々が東京の女性活動家を熱く迎えるシーン。この活動家の女性がバストアップになり主要人物なのかなと思ったら、お出迎えの女性が振り向き、田中絹代だったという出だし。。溝口オハコの船上シーンでの政治講演会が終ると、警察に囲まれて集会を解散させられる。田中は豪商の娘でインテリ。自由民権運動に参加している幼なじみの男(小沢栄太郎?)がいて、いつか東京へ行くことを思い抱いている…使用人の娘(水戸光子)が東京へ売られる。船着き場に人買いと娘。田中は活動家の男を見送りに来て彼女を見つける。娘を買い戻す為にお金を貰いに実家に戻るが、『ご奉公に行くことで、お金が入り親の生活は救われる。むしろ良いことなのだよ。』とかなんとか言われて拒まれる。…船着場に戻ったがもう船は出た後であった…

東京に出て来た彼女。スクリーンには松竹美術スタッフ入魂の明治の街並が映し出される。照明はまだランプ。田中は自由党の中心人物の男、重井憲太郎と知り合いになる。幼なじみの男は青春や権力へのの挫折ですっかり人が変わり、さらに政府側のスパイとなり自由党に潜入していた。重井にスパイを見破られた彼は復讐の言葉を吐き自由党を去って行く…
政府の弾圧が強くなる中、世相も乱れ各地で一揆が乱発。田中も重井のお供である村の集会に参加。"貧民"の旗を掲げ団結する彼ら。一揆とは言いかえれば市民革命のことか…彼らはすでに怒りの頂点に達して、直ぐにでも奴隷工場を襲撃する勢い!「暴力はいかん!」と言う重井に対し、「話して分る奴らじゃない!!」と村人。まず田中がその工場を偵察に出かけることになる…。
奴隷工場。売られて来た女工達が泣いている…女が縄で吊るされ、男が鞭でしばく…拷問だ!!床にもスマキにされた女が転がっている…ここは平安時代の山椒太夫の奴隷荘園か!?おびえた女達のなか「いい加減にしやがれ!」と男に突っかかる女が…それは岡山から売られて来た水戸光子であった。男に別室に連れ込まれた水戸は犯される…辛い経験は彼女を逞しく変えていた…ぶち切れた彼女はランプを倒し、工場に火を付ける。ざまーみやがれ!とケタケタ笑う彼女を偵察に来た田中が見つける。工場はパニック状態に。たちのぼる火炎の中、騒ぎに駆けつけた警察が踏み込む、、田中と水戸と重井は一揆の発起人として逮捕されてしまうのであった…
刑務所。「俺と寝れば、自由にしてやる」と持ちかられ応じる水戸だがそれも罠。水戸はさらに重罪に。「この私が自由主義の活動家だってよ!」とは水戸が吐く…犯罪者の生活は過酷だ…受刑者は奴隷作業をする。真上に近い位置からのカメラで奴隷作業が写される。鎖で足をつながれた二人は石を運ぶ。藁作りの顔まで隠す三角帽子で作業。奴隷だから顔など要らぬということか。フラフラになり鞭を打たれる二人…水戸の打ち明け話…岡山を出たあと、あの人買いの男に処女を奪われる。しかしそんなロクデナシの男に女は惚れてしまう。「だって私を初めて女にした男だよ…」…そんなムショ暮らしは数年続いたようだが、やがて恩赦にて解放。

解放された3人は自由党に戻る。出所祝いが終わり、取り巻きが消えた後は田中と重井の二人の時間…お固い田中も重井を許してしまい二人はムフフの関係に…時は大日本帝国憲法公布後の初めての選挙。田中は立候補した重井をサポート。ヤクザの嫌がらせやあの幼なじみの男の嫌がらせにも負けず当選を目指す。そんな中、ひょんなことから重井が水戸に手を出していたことが、田中に発覚!!詰め寄る田中に、すずしい顔で『ありゃー妾にするよ。君への愛とは別だよ…』と言う重井。しょせん男社会に生きる奴はこんなものか…と田中の理想がガラガラと崩れて行く…
重井は当選。この日本最初の選挙は『満25歳以上の男性で国税15円以上を納めている者に選挙ヲ権付スル』でそれは総人口の1%にすぎないブルジョアジー達の選挙であったそうだ…一般選挙の衆議院とは別の特権階級の貴族院もある。
重井の当選にも田中は失意し離党、ひとり古郷の岡山に帰る。最後のシーンは機関車の客室…立ちこめる蒸気機関車の煙の中、水戸が田中の前に現れる。田中を追って来たのだ。女にも学問が必要だと女学校を作る計画を水戸に話し、水戸も同意。田中は水戸を抱きながら古郷へ帰る列車の中で眠るのであった…



この映画の企画を松竹に持ち込んだのは溝口監督だったが、出来上がった脚本を見た時にはもう熱が冷めていて『こんなのは、木下か??(名前失念、スミマセン)にやらせろ』と言ったとの逸話が残っているそうです。民衆へ民主主義の宣伝もあったのかなとは思いながら、プロの職人監督の仕事を感じた。公開時の日本はGHQ統治下。武士や公家や軍族だった貴族階級も成金の財閥も占領地も解体。天皇陛下も人間宣言をさせられた日本。戦争にでも負けないとこんな改革は出来ませんよね…民主、人権、平和を唱った先進的な憲法を手に、待望の女性選挙権も獲得。マッカーサーにガキ扱いされたのも仕方ないか…と思いつつ、たゆまなく戦争を続けるあの国を横目に、なんだかんだ60年間も戦争をせずに今日に至る我が国なのであった。。。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿