あとだしなしよ

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BLUEBEARD - 青ひげ

2007年05月15日 | 
BLUEBEARD - 青ひげ by Kurt Vonnegut 1987

「アルジャーノンに花束を」をなかなか文庫化しなかった早川書房が1989年2月28日に初版発行した。翻訳者は朝倉久志さん。

ハードカバーの定価1700円であったのを現在の所有者であるわたしが、古本屋で400円で購入したのに読まず、部屋の隅っこに放置され、紙の一部があかんぼのうんち色に変色していたのを、「整理整頓しなきゃっ…」と本棚の整理を始めたところ、発見され読まれることになり、表紙が汚れているので、浜辺に流れてきたゴミをひとつひとつ集めてきてキレイに拭いてシャンデリアにしたスチュワート・ヘイガーの作品を見つめるふたりの日本女性の写真が印刷されているフリーマガジン「Smack!」のページを本のカバーにして、時にはわたしの昼寝のまくらとされ(青い空を見た!)読まれた本である。。そのフリーマガジン「Smack!」が伝えるには北京に本格的なライブハウス、「星光現場」- The Star Liveが出来たそうであるがこれは去年のことで、住所は北京市東城区和平里西街79号「糖果」三階でURLは、http://www.thestarlive.comである。今すぐクリック!セイコウゲンバにアクセス!その、どこをどうやって来るのか分からないパケットのロードのノロさを体感しよう!さらに、DANCEするならIDA渋谷校!と印刷されているのも記録しておこうか…フリーマガジン「Smack!」はおそらくオンエアーウエストだったSHIBUYA-Oでもらったフリーマガジンだったはずだが今は休刊したようだ。

* * *
さて、
本の装幀は、ご夫人が料理教師としてテレビなどに出演され、
またある時はシャンソン歌手でもある平野レミさんである和田誠さん。
表紙には、
本来はじゃがいもの格納庫として建てられたが、
カラベキアン(人名)のアトリエにして、
主人公カラベキアン(画家)の二度目の結婚相手である
アメリカ貴族婦人との出会いの場所であるじゃがいもの納屋と地面と、
白いオパール型のパレットが描かれている。
そのパレットには左から、
広葉樹の濃いはっぱ色、新緑のはっぱ色、
美しいビーチに漂う藻の色、
れもん色、砂漠の砂の色、群青色、
あかんぼのうんち色、
共産主義の色の
絵の具が載っている。
次は背表紙で、これは勲章。
これは主人公カラベキアン(アメリカ人)がもらったもの。
どんな手柄の勲章か…
主人公カラベキアン(アルメニア系二世)は美術家で第二次世界大戦で
戦地で色々な偽装工作をし、ドイツ軍を混乱させた手柄である。
勲章はどんなデザイン?
メダルは、
鷲か鷹かコンドルか分からないが
スズメではないと断定できる鳥が
股を開いて手は(羽か…)万歳をしているデザインだ。想像しろ!
主人公カラベキアン(名はラボー)は戦争で片目を亡くしている。
実戦の戦う前に、飛んできた爆弾の破片に当たったからだ。

裏表紙はカーボーイ・ブーツ。あと地面。
このカーボーイ・ブーツは主人公カラベキアン(初老)がこどものころ、
彼の父親が作ったものだ。
その時の様子は以下のように描かれている。
ところが、いまになって父は、まるでトランス状態にでもあるように、ごく簡単な道具を使って、すばらしく美しいカウボーイ・ブーツをこしらえ、それをドアからドアへうりあるきはじめたのだ。そのブーツの丈夫ではき心地がいいだけではなかった。男らしい足とふくらはぎを飾るため、まばゆいほどの装飾がくっついていた。平たくのばしたブリキ管や瓶の王冠からきりぬいた金銀の星や、鷹や、花や、跳ねまわる野生の馬が、きらきら輝いていた。

父親は、今から見ると前世紀である
二十世紀に幾度か発生した虐殺の
一番始めの事件であるトルコ人による
アルメニア人虐殺のなか、
村で生き残ったただひとりの青年だった。
彼はどうやって九死に一生を得たのか?
便所の中に逃げ込み、ふんにょうに身を沈め
虐殺の夜、彼以外に生きている人間は
ひとっこひとりいない村の静寂に耐えたのである。
こういう描写を描かせたら、
カート・ヴォネガットの右に出るものはいない。

母親もアルメニア人で、
彼女もたくさんの屍骸の中で死んだふりをして生き残った。
あたり一面にころがった、たくさんの死体。そして、いちばん近くには、十六、七の美しい娘の顔がある。彼女は男の死体の下敷きになっているが、まだ生きていて、自分の顔から十センチたらずしか離れていない、死んだ老婆の口の中をのぞきこんでいる。その歯のない口からは、ダイヤやエメラルドやルビーが下にこぼれている。

こういう描写を描かせたら、
カート・ヴォネガットの右に出るものはいない。

母親は老婆がこぼした宝石を拾い逃亡先で父親と出会い、
ペテン師に宝石の大部分をだまし取られながらも
アメリカに渡る。

* * *

『BLUEBEARD - 青ひげ』は、
彼らアルメニア系アメリカ人の息子の
架空の主人公カラベキアン(今は抜け殻のような平和な老人)の
一代記である。
おもしろかった。

声に出していいましょう。

『ヴォネガットさん、ありがとう』