あとだしなしよ

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女の園

2006年01月04日 | 木下恵介
女の園

1954年 昭和29年、松竹
監督 木下恵介
出演者 高峰三枝子, 高峰秀子, 岸恵子, 久我美子

昭和29年あたりの京都の女子大学の学生vs大学側の闘争を描く。これ以前にも京都大学で警官ともみあうなどの事件も有ったらしい。この段階では後の学生運動とは異なり政治色は薄くまだ学園ドラマの感もある。

あらすじ

主な舞台は女子寮。高峰三枝子さんが厳格な寮母。高峰秀子さんは少し勉強についていけない女学生、岸恵子さんは普通の娘さん、久我美子さんは財閥の娘、あと今一人女学生のリーダー的な人物が登場するが女優さんの名前は解りませんでした。秀子さんは銀行に勤めたあと事情があって大学に入っている。ブランクの為勉強が遅れ気味。彼女には愛し合っている恋人が東京にいるが手紙を検閲されるなどの妨害あり。親の進める相手を拒んで、その理由付けで大学に通わせて貰っている所もある。恵子さんはまあ普通の学生さんで、おきがるに恋愛をしたりする役。美子さんは財閥の娘で、親が学校に寄付をしたりしているので、優遇されている。頭でっかちだが一生懸命である。彼女から『戦争の後でもうまくやって、家は結構儲けたのよ』とか、ラストの近くで、『当時の再軍備の為には平和運動は邪魔。平和運動は良い悪いは別にして、潰しにかかるのよ。』などの財閥令嬢の視点の重要な台詞がある。戦前戦後共通でアカは差別の対象のよう。財閥令嬢ゆえに皆から認められない面もある。

色々あって、ついに寮則の改善を求め学生と学校は全面対決となるのだが、それで数人が停学などの処分になる。恋や闘争、勉強や親からの仕打ちに神経をすり減らせてノイローゼ気味の秀子さんは終に自殺をしてしまい、学生たちはいっそう盛り上がる。

*

全編シリアスで、前半は学園ドラマ、途中から高峰秀子、田村高廣主演の恋愛映画になる。姫路城と蒸気機関車からハンカチを振り合う別れのシーンは見入ってしまう。
高峰三枝子さんの寮母は、若い頃に不倫した経験もあるが彼女からは『普通に人を好きになっただけ』とゆう主張もある。悪役の感じでは無く、一人身ゆえの規則を守る職業女性をまっとうしているだけの感もあるが女学生に対しサディステックな感じもある。横溝正史 や江戸川乱歩に出てきそうな女人である。彼女は亡くなった秀子さんと恋人の悲劇的な再開に泣き出し、久我美子さんに『ウソ泣き!』と一方的に攻められてしまうのですが、それも酷な感じがした。これも木下監督ならではの視点の置き方ゆえ感じられたのだと思います。

キネマ旬報1954年度 第2位(1位は同じ木下監督の「二十四の瞳」)