工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

ハートの問題 三式戦闘機 飛燕

2020年08月08日 | 飛行機・飛行機の模型
 ダイムラーベンツDB601エンジンを積んだ戦闘機ですが、日本では三式戦闘機「飛燕」がこれに該当します。川崎航空機がライセンス生産したエンジンは「ハ40」と呼ばれていました。
 日本にとっては不慣れな水冷エンジンということもあり(日本の軍用機においてはほとんどが星型の空冷エンジンを使用していましたね)、完璧な状態に整備することが難しく、また、生産も思ったように進まず・・・というのはあちこちで語られているところですので、いまさら詳述の必要はないでしょう。ただ、第一線で働く現場の部隊にとっては厳しい状況であっても一機でも多く飛ばさなくてはいけなかったわけですから、相当なご苦労があったことと思います。
 飛燕のキットは各社から発売されており、1/72ではハセガワ、ファインモールド、アオシマ、タミヤとよりどりみどりです。私もハセガワのキットは何度か組みましたし、アオシマのキットも発売直後に買って組みました。今回はⅠ型丁をタミヤのキットで組んでみました。


 塗装はキットのオリジナルではありません。帝都防衛の任に就いていた244戦隊の板倉少尉機とされている機体にしました。後に小林戦隊長の予備機として使用されたとも伝えられています。244戦隊と言うと銀色の機体に濃緑色のまだら模様が有名なわけで、こちらはデカールで再現できるキットもございますが、同じタミヤの1/48スケールでこの塗装を再現したかったので、1/72では上面濃緑色、下面銀色の機体となりました。なお、胴体を前後に走る白帯ですが、塗装で再現したもので、実機を再現したイラストや別売りのデカールなどと比べると若干太くなっております。
 胴体下面の銀色ですが、面積が小さいこともあり、筆塗りにしてみました。

Mrカラーの銀色に白を15%程度混ぜたものを使い、ギラギラした感じを抑えました。配備されて時間が経過した飛燕の写真を見ますと、だいぶ銀色の輝きが鈍くなっているように見えます。塗料を薄く溶いた上で細筆で筆塗りしていきます。乾かしては塗り、乾かしては塗りを5回ほど繰り返しています。これは30年くらい前のモデルアートで銀色を筆塗りする作例が掲載されておりまして、その技法を参考にしています。
 タミヤ1/72のキットですが、同社の1/48をスケールダウンしたような素晴らしいものでして、Bf109の時にも書きましたが、飛行機のプラモデルに縁のない人でも入っていけるような、丁寧な設計と丁寧な説明書のキットという印象を持ちました。興味深かったのはピトー管で、通常なら翼と一体に成形されていたり、後で主翼前縁に空いた穴に差し込むといったものが多いと思いますが、このキットではピトー管と基部が成形されていて、主翼前縁に接合するようになっていました。ピトー管を接着しないと主翼前縁に切り欠きができてしまいますので、こうすることで必ず接着させるように、しかも製作途中で折れたりしないように作られているわけで、そのあたりはさすがタミヤという思いがしました。
 もともとは1/48のキットを先に買っておりまして、棚の肥やしになっているうちに1/72が出たから買ってしまったということで、これを機に1/48のキットも作ってみました。

 エンジンやコクピットの再現が細かく、1/72を作り慣れておりますとこれだけでお腹いっぱい、という満足感のあるキットでした。
コクピット周りがピンボケです。すみません。また、人形を乗せるためにシートベルトなどの造作は省略しています。


エンジンにしてもコクピットにしても完成後はほとんど見えなくなってしまいます。内部構造を見せるために透明な胴体パーツも用意されていますが、今回は透明ではなく通常のパーツで組んでいます。
 迷彩色については川崎系の濃緑色ですとオリーブ系の色味が強くなってしまうこと、また少年時代に見たイラストのイメージなどから青みが入っているイメージがあり、Mrカラー130番に124番を少量混ぜています。
 本土防空戦の機体を1/48で作る、というのを以前からテーマにしており、雷電、紫電改に次いで飛燕もできました。余談になりますが私の亡父は東京で生まれ育っており、16歳の夏に終戦を迎えています。空襲にも遭っており、日米両軍の機体をリアルタイムで見ているわけですが、飛燕より雷電の方が印象に残っているらしく、ずんぐりした機体が飛んでいるのを見上げて「日本もグラマン(F6Fなど、艦載機はメーカー名を取ってグラマンと呼ばれていました)の真似をしたのかな」と思ったそうです。もちろん、雷電はF6Fの真似ではないのですが、そんなことは当時の少年には知る由もなかったのです。
 飛燕については二型の実機が岐阜県の各務ヶ原で保存されています(筆者撮影)。

 
 さて、実機の話に戻りまして、飛燕とそのエンジンのハ40ですが、戦局が厳しくなる中で、エンジンの生産にも遅れが生じ、エンジンのない飛燕の機体が大量に発生する事態となりました。まさに「ハートの問題」となってしまったわけです。ここで空冷エンジンを搭載した戦闘機が誕生します。五式戦です。

 現場の評価も高かったと言われていますが、昭和20年に入って登場した機体ということで、いささか遅すぎた存在でした。キットはアオシマ1/72で、発売と同時に買って、組んだ記憶があります。最近のエアフィックスのキットを思わせるような、少々彫りが深いところが特徴ですが、組みやすく、いいキットです。
 飛燕との比較です。

 五式戦はイギリスで保存されています。平成21(2009)年にロンドンを訪れた際、ロンドン郊外のRAFミュージアムで展示されているのを見ました(現在は同博物館のコスフォード館で展示)。スピットファイアやハリケーンをはじめとした先の大戦の機体、アブロ・バルカンといった戦後のイギリスの機体などが目当てだったこともあり、あまり予備知識を持たずに訪れまして「航空史のマイルストーン」という展示室に五式戦を見つけたときはたいそう驚きました。
  
 さて、ここまで3回に分けて同じエンジンを積む飛行機の話を書いてまいりました。それぞれお国柄が出たり、塗装もそれぞれ違っていて興味深い、と言いたいところですが「海軍の『アツタ』エンジンのことはどうしたんだ、お前は事あるごとに日本海軍の血を引くと言っているが無視するつもりか」という声がどこかから聞こえてきました。今回は「戦闘機」ということで掲載しませんでしたが、艦上爆撃機「彗星」のキットも買っておりますので、いずれご紹介したいと思います。
 
 
 
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ハートの問題 マッキMC.... | トップ | 猛暑の夏に飛行艇の話 »
最新の画像もっと見る