ウォームアップが終わったらちょっと難しいのをやりたい。なのにヨメは今度はあっちの5.10をやりたいと言い出す。黙ってるとずっと低グレードばかりやりかねない。折角ここまで来たのに意味が分からない。しかも難しいのやればそれなりに出来るんだから勿体ない。
ここでよく会う知り合いに 「 5.12だの5.13登る時に別途5百円取られるってんなら分かるけどタダなのに何故登らないんだろうねぇ 」と言うと 「 そうだそうだ、しかも今日は空いてるのにねぇ 」と盛り上がった。その人は俺より4つか5つ年上の女性なんだけど、ウォームアップ後に5.10やってるところなんて見たことない。だからって難しいのをスイスイってわけでもない。何時も限界近くを全力って感じ。
登りたい時に登れるのが良かった
徒然草 第百五十段の現代語訳
これから芸を身につけようとする人が、「下手くそなうちは、人に見られたら恥だ。人知れず猛特訓して上達してから芸を披露するのが格好良い」などと、よく勘違いしがちだ。こんな事を言う人が芸を身につけた例しは何一つとしてない。
まだ芸がヘッポコなうちからベテランに交ざって、バカにされたり笑い者になっても苦にすることなく、平常心で頑張っていれば才能や素質などいらない。芸の道を踏み外すことも無く、我流にもならず、時を経て、上手いのか知らないが要領だけよく、訓練をナメている者を超えて達人になるだろう。人間性も向上し、努力が報われ、無双のマイスターの称号が与えられるまでに至るわけだ。
人間国宝も、最初は下手クソだとなじられ、ボロクソなまでに屈辱を味わった。しかし、その人が芸の教えを正しく学び、尊重し、自分勝手にならなかったからこそ、重要無形文化財として称えられ、万人の師匠となった。どんな世界も同じである。