2人ともマナーが良く育ちの良さを思わせ、 優雅であった。 ミス・マープルが若い頃には、 今でこそ廃れた言葉になっている “レディ” と 言われるような2人であった。 そして又、“落ちぶれたレディ” という 言葉もあった事を思い出した。 父親が彼女にこう言っていた ―― 「いいかねジェーン、落ちぶれたんじゃない んだ。 困っている淑女 と言うんだよ」 【A・クリスティー 「復讐の女神」】 |
久し振りに真珠色の空で明けました。
従って気温もそれ程上がらず、一時の猛暑状態からは抜け出しています。
そう言えば、こんな気候、台風以来ずっとですものね。
でも随分、助かっています。
さて今日は再び 『A・クリスティーの館』 です。
【先日】 の続き、「復讐の女神」 です。
この 「復讐の女神」 は、ミス・マープルものとしては最後で、
いつにも増して推理以外の(例えば植物、インテリア、お茶風景など)
描写にも興味を引かれる事が多い・・とは、先日も触れた通りです。
その事も然(さ)る事ながら、(キーポイントは「三姉妹」ですが)
肝心の推理でも重要な部分が抜け落ちておりました。
これこそ、クリスティーの真骨頂ですね。
ある植物から死体の隠し場所を推理するのですから。
その植物も馴染みの 「ポリゴナム」、別名 「姫蔓蕎麦(ヒメツルソバ)」
ですから何をか言わんと言った処でしょう。
尤も、私の知っているのはピンクだけですが、白もあるのですね。
それは美しく香りも良いのだそうです。
でも、あの可憐な花が、こんな曰(いわ)くのある花だったなんて。
芝生の小道の本道の外れに、 小さな丘がありました。 元温室だったのが崩れ落ちて出来た 小さな丘でした。 (中略) その上にある種の蔦葛が植えてありました。 これは良く知られている葛で、 庭にある汚ない小屋などに這わせ絡ませて、 隠すために使われるものなのです。 ポリゴナム という名の葛です。 灌木の中でも最も育ちの早いものの一つで、 これが茂りはびこると、何でも飲み込み、 殺し、枯らしてどかしてくれます。 どんなものの上にも茂ります。 ある意味で、怖い植物と言えましょう。 綺麗な白い花を付けて、なかなか見事です。 まだ咲き始めておりませんでしたが、 もうすぐ咲きそうでした。 【A・クリスティー「復讐の女神」】 |
そうそう今日の引用文。
「淑女の薔薇」 とは、我家の薔薇のネーミングですが、こんな 「淑女」 もあるのですね。
今日のタイトル、面白いので何の意味もありませんが、そのまま頂いてしまいました。
前回の “趣味” 云々もそうですが、
こんな風に、この小説にはそこかしこに言葉の妙味が溢れています。
そして取り出したのは又々、クリスティー。
でも短編です。三島由紀夫も今度こそ、読まなければね。
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