「うんと歩かされて立ちんぼをさせられましたよ。 足がすっかり疲れてしまいますね。 こんな旅行には出るんじゃないとも 思いましたけれどね、でも 美しい建物 や 立派な 部屋 や 家具 など見るのが魅力なものですから。 その他何でも。 そして勿論 素晴らしい絵 なんかもですね」 「それに、お庭 もでしょう」 アンシアが言った。 「お庭もお好きなんでしょう?」 「ええ、もう」 とミス・マープルが言った。 【A・クリスティー作「復讐の女神」】 |
太陽は顔を出しているものの、灼熱の太陽と言った感じではありません。
それでも昨日などは、ほんの申し訳程度にしか
啼いていたに過ぎない蝉が、今日はひとしきり。
啼けば啼いたで少々、うるさくも感じますが、
啼かなければ啼かないで妙に気になる・・。人間とは何とも勝手なものです。
さて暑い夏の午後は、古代詩よりも
背筋の凍りつく? ミステリーですね。
(写真は昨日のプリン。
見えにくかったので、もう1度)
久し振りの 「A・クリスティーの館」。
もう何度か引用文にも
登場していますね。
その本のタイトルは 「復讐の女神」。
それにしても・・。
暫くクリスティーものが続きましたので、
休止していた三島由紀夫の 「豊饒の海」 を・・
と言ったのは、つい先日の事。
しかしながら難解な三島文学には気分が乗らず、
ついつい慣れた? クリスティーを手にする始末です。
黄色い夏、特に暑い夏の午後はミステリーが殊の外似合う・・。
~なんて、勝手な理由をつけて逃れています。
そんなこんなで又々、ミス・マープルものですが、
どうやら本書(1971年作)が、マープルものとしては最後のようです。
ミステリーですから謎解きは勿論ですが、そのせいかどうか?
私のもう一つの興味である、編物、お茶、庭(植物)の描写の多かったこと!
それに今回は、ミス・マープルに莫大な遺産の贈与がありましたから、
上記のように彼女の大好きな事が出来ますものね。
話が逸れました。今回も犯人は五里霧中。怪しい者が浮かんでは消え・・。
でも犯人は1番、犯人らしくない人間(の筈・・)。
途中、頭の中をチラと掠(かす)めたものですが・・。
“まさか・・” と。でも、そのまさかが盲点だったのですね。
うっかりしていました。従って今回は外れ。
この処、犯人当て、連勝していたのに残念です。
事件の重要な鍵となるのは 「三姉妹」。
思えば、その事については結構述べていましたから、
迂闊(うかつ)と言えば、そうでした。それは、こんな風に。
「三人姉妹 。これが、私があの<旧領主邸>へ 入って行った時に私が感じた事、思った事、 独り言を言った事でした。(中略) 何か、この・・・・・三人姉妹・・・・・という言葉は、 頭の中に不吉なものを芽生えさせますね。 ロシヤ文学 の中の三人姉妹を連想させ、 マクベス の中のヒースの荒野の三魔女と 結びつきます。私の感じでは、 ここには悲しみの雰囲気がありました。 不幸の深刻な感じ、又恐怖の雰囲気も ありました。それに、様々の雰囲気が ごちゃごちゃにせめぎ合っていて、 何と言いますか、常態の雰囲気と言うより 言いようがない雰囲気もありました」 【A・クリスティー作「復讐の女神」】 |