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『アマガミSS』×『ヨスガノソラ』のヒロイン並列構造の解法

2011年01月15日 | 思考の遊び(準備)
【ハーレムメイカー】



2010年10~12月期のアニメで『アマガミSS』と『ヨスガノソラ』がやっていたわけですが、この2作品のシリーズ構成…というか『構造』に注目しながら観ていました。
そうすると今回あまり想定していなかったんですが(いずれ、他の作品で観られるかも…?くらいの感覚はあった)“上崎裡沙”、“春日野穹”という、ちょっと興味を惹くヒロインが二人出て来ました。今回はその話をしようと思います。

『アマガミSS』は、クリスマスに失恋して恋に臆病になった少年・橘純一が、もう一度誰かに恋をする物語。『ヨスガノソラ』は、両親を亡くした双子の兄妹、春日野悠(はる)・穹(そら)が山奥の村落で新たな生活を始める。かつて暮らした事があるその村で、兄妹の様々な出会い、再会をする物語。…まあ、両作品とも基本構造は典型的なギャルゲー原作アニメです。(´・ω・`)

【『ヨスガノソラ』のCパートEDとかアニメ楽しく観ている】
http://blog.goo.ne.jp/ldtsugane/e/bb8c1143c5840f381aa4f8749858e1ff

■ヒロイン並列構造に関する走り書き

今回の『ヨスガノソラ』と『アマガミSS』をちょっとつなげて考えてようかと思っています。
【ヒロインの憂鬱】
http://blog.goo.ne.jp/ldtsugane/e/e363f24f8ccb53bdfc21bf86521451eb
(↑)ここらへんの記事で書いたように、僕は以前から「物語上の並列構造をどう処すか?」というポイントを視点にしてハーレム構造の作品を追ってきた所があります。本来、ゲーム上で“並列”が実現されている作品を、アニメ化(あるいはマンガ化)する時、どういうやり方で一本化を目指すか……ここらへんは、長くなるので切り上げますが、それぞれのヒロインに並列に人気がついて、それに応える形で他メディアへの移植があるワケだから、単純に任意のヒロインだけの物語を構築するというワケにもいかない。

…ではどうするか?という問題の中で、ここ何年か、いくつかの『面白い』答えになった物語を目撃して来たのですが、今回の『ヨスガノソラ』と『アマガミSS』は、かなり単純に、並列を並列のままに描く事に解答を求めている。「…じゃあ、どうしよう?」の中で真っ先に思いつく答えに帰ってきたようなものです。

以前からウォッチしている「ヒロイン並列構造の物語をどのように描くか?」というポイントの話なんですが、『アマガミSS』は2クール、『ヨスガノソラ』は1クールの中で、何話分かずつヒロインを主役として描く。終わったら次のヒロインを主役にして別の物語を編む……という手法を取りました。オムニバスというヤツですね。いや、知らない人だとこの手法の何に注目するのか分からないかと思いますが(汗)ヒロイン並列構造の描きとして一周した景観があります。そこが『面白い』。

ちょっと昔に遡ると、複数のヒロインが居ます~そして、それぞれのヒロインに一定のファンがついています~そういう作品をアニメ化(あるいはマンガ化)するとしたら、どうヒロインたちを描くか?最初に考えられたのは並列構造は並列のままにオムニバスで描く事でした。
それに対してそう離れてない時期のはずですが、敢えて一本の物語に絞り込む。複数ヒロインといってもタイトルとして“本命”に据えているヒロイン、一番人気のヒロインがいるワケで、この子一本に物語を絞る。他の子は登場させつつもメインストーリーの脇として置くという手法も取られました。……しかし、どちらもあまりパッとはしなかった。

オムニバスに描かれた物語は、拡散的で一本に絞られた物語の盛り上がりが得られなかった。…この当時だとまだ「ヒロインを選ぶなら一人」という力場の縛りは強く、ヒロインたちが恋の成就まで辿りつくのに抑圧的だった事も原因だとは思います。(オムニバスでも複数の女の子に手を出しているように錯覚させるという感じかな?だからあまりハッキリした所まで踏み込まなかったりする)
また、一本軸で描かれた物語は、それメインにヒロインに置かれた娘の盛り上がりは相応にあるワケですが、他の序列下位のヒロインたちの物語はスポイルされてしまうんですね。必然的に。そうすると、先ほど言った、それぞれのヒロインについたファンたちの不満足が顕在化する「俺の好きなあの子の話は?」となると言うか。
まあ、他にも色々原因っぽい話はありますが、まだゲームとマンガ的『物語』の親和性はよくなかった時期だったって事も大きいでしょうね。

一本軸の物語の物語を編みつつ、かつ複数ヒロインのファンも満足させる……限られた尺で、この背反する命題を両立させるのはかなり困難だったはずなんですが、試行錯誤と切磋琢磨を繰り返す事でかなりの成果を上げるに至った…とそう思います。この路線では、アニメだと『kanon』、『CLANNAD』あたり。マンガでは『魔法先生ネギま!』あたりですかね。こういった所で、培われて行ったものを僕は『情報圧縮論』に、まとめて考えていたりします。

この“流れ”に対して『アマガミSS』なんかは、その作風が多少、古風な雰囲気を持っている事も相俟って、このヒロイン並列構造の描きの回帰的解答としてオムニバスが出現したように見えました。
しかし、引用記事の中でも書きましたが、既に「平行世界の先の物語」が描かれた~流行った~事もあって、時流的にはもう既に並列のものを別個のもの「それはそれ、あれはあれ」と分離して考えられなくなっている面があると。
【『ヨスガノソラ』のCパートEDとかアニメ楽しく観ている】
http://blog.goo.ne.jp/ldtsugane/e/bb8c1143c5840f381aa4f8749858e1ff

そうやって並行世界を作る事で(※『アマガミSS』が並行世界の物語がどうかは議論があると思いますが、観客は全部を観る以上、並行的にとらえてしまう…という点に着目します)『ヒロイン並列構造』を維持していますが、既におたくの物語界隈では「平行世界の先の物語」が描かれてきているわけで、“ここ”も、何らかの臨界に到ると見ています。

一方、『ヨスガノソラ』も形式はオムニバスと呼べるものなんですが、『アマガミSS』とは似て非なる解答を見せて来ている。
1~2話を“共通話”として観せ、そこからの分岐で様々なヒロインへのルートへ派生して行く様を『物語』上に載せている。並行世界をそのまま観せている…とも言えますが、これはむしろゲームの分岐を物語に載せていると評した方がいいもののように思われます。まあ興味深くはあるんですけど、“それだけ”の描きならさほどオムニバスとして大きな違いは生まれなかったでしょう。



しかし、両作品ともその(全体を通す)物語の最終段階で統合的なヒロインを出現させている。序列一位ヒロインじゃありません。統合的なヒロインです。今回の本題はここ。…メタ・ヒロインと呼びたくなっているが今日は止めておこう。(`・ω・´)(←)
『アマガミSS』では上崎裡沙、『ヨスガノソラ』は春日野穹がこれに当たります。…ま、穹は一位ヒロインでもあるでしょうが、上崎裡沙さんを一位ヒロインに置くのは論を待たぬ…というワケにはいかないでしょう。
こういう統合的な描きって、どっちか片一方って事もあり得たと思うのですが、両方そうしているというのが何かを感じる所がありますね。実際、両作品とも非常に高い質を保っている作品で、オムニバスを並行世界として捉えるような見立ては、作り手には当然見えている事で、そこへのフォロー(言及)を目指すのもある種の必然だったかもとか思ったり。

上崎裡沙はエントリーされている6人のヒロインの物語が終わった後に出現するヒロインで、番外編的に、6人のヒロインたちの“フラグ”を全部へし折り、かつコンソートの橘さんのクリスマスの失恋の手引きもしていたという超人ぶりを発揮して、ある意味『アマガミSS』の物語構造を全部持って行って(包括)してしまうんですよねwこれはちょっとひっくり返った。(`・ω・´)
上崎裡沙というヒロインへの言及は、ルイさんがとても『面白い』考察を書いていますので、こっちを紹介しておきます。(↓)

【ひまわりのむく頃に:『アマガミSS』上崎裡沙の、偉大すぎるシンジツ】
http://rui-r.at.webry.info/201101/article_2.html

春日野穹は他の3人のヒロインたちの物語が終わった後の次回予告でこんな事を宣言します。(↓)
「今までの事は全部夢。悠の迷いが見せた夢、だから奈緒との事も、うたかたと消える。私の事だけ観てて悠。幸せにしてあげる…」

(第9話次回予告より)

全部夢……このヒロイン、オムニバスである事、並列構造にした事の意味を全部へし折りに来ています。(`・ω・´;)
まあ、メタな次回予告のセリフではあり、物語の支配力というよりは、この子の勝手な思い込みと取ることもできますが(そして実際にそうなのでしょうが)しかし、やはり彼女がそれを示している事は全体としての物語にもその意味を及ぼしているのもまた事実だと思います。
このセリフだけで統合的…というのは先走り過ぎじゃないか?という意見もあるかもしれません。…しかし、この『物語』は、実際にトリを務める穹の物語は『強い』のですよね。儚いが故に『強い』。かつ、この娘を出されると他のルートがこれの従格に観えてくる。少なくとも並列ヒロインに満遍なくストーリーを与えようという志向とは別の意図も感じたので、僕は統合的と考えました。
しかし、そう言いながら、その支配を舌出して逃れた乃木坂さんというヒロインもいて…いや、この人語り出すのは今は止めておきますけどw

まあ、なかなか興味ふかい二人のヒロインなんです。しかし、ちょっとここで一旦であれその意味に見解を出すのはやめて起きます。『面白い』ね、とだけしておきます。もう少しじっくり考えようかと。まあ、今はよく分からないって事なんですけどね(汗)

しかし、コンソートである『アマガミSS』の橘さん、『ヨスガノソラ』の悠は、今までペトロニウスさんなんかとしてきた『ハーレムメーカー』の、時が止まる~あるいは進む~と言った議論/力場から開放されたハーレムメーカーなんですよね。
なんでって、彼らは既にヒロインを一人だけ選び出しているからですね。それぞれの並行世界で。だから、男の子が一人、その男の子が好きな女の子多数という構造で、だれか一人を選ばなくては~唯一性の物語を編まなくては~という呪縛がかからなくなっている。

この並行世界観点から観えるハーレム構造を、仮に『縦ハーレム』と名付けるとして(`・ω・´)(←)どちらの作品にも、それを「逃がさん」とばかりに、統合的ヒロインが介入して来たのが、ちょっと『面白い』なと。
同時に、この統合的ヒロイン、パラレル俯瞰的/メタ的にコンソートを捕まえる代わりに、それぞれの並行世界のヒロインたちに直接の介入はしていないのですよね。これもすごい。並列構造をどう描くか?問題の解法を垣間見せてくれています。ここらへんの話は『神のみぞ知るセカイ』の分析にも関わってくる事が予想されます。

最近、ハーレムメイカーとか、情報圧縮論とか、メタキャラクターとか、バラバラに思考を進めていた事が有機的に絡みはじめて、ちょっと愉しいです。けっこう思考的に良い流れかもかな。(`・ω・´)


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1 コメント

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Unknown (チャッキー)
2011-01-25 00:55:07
オムニバス形式って巻によって売り上げが変動するもんなんですかね。
アニメが商売である以上、どんな形式で放送するか悩みそうだなあ。
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